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【数字は踊る】食料自給率の秘密

連載FLASH編集部
記事投稿日:2016.05.12 20:00 最終更新日:2016.05.13 23:44

【数字は踊る】食料自給率の秘密

写真:AFLO

 

●食料自給率が39%?

 

 農林水産省は8月に、2013年度の食料自給率が4年連続で39%になったことを発表した。39%!? これでは誰もが食料は大丈夫かと危機感を抱く。

 

 しかし、農林水産省はもうひとつ別の食料自給率も発表していて、こちらは65%である。39%と65%、いったいこの違 いはどこにあるのか?

 

  「39%」とは食料の消費カロリーをベースにした自給率であり、1日1人あたりの国産供給熱量(939kcal) / 1 日1人あたりの供給熱量(2424kcal)×100の値である。

 

 ところが、ここには問題がある。

 

 カロリーベースでは、国産でも輸入飼料で育てられた肉類は国産とみなさない。したがって肉類の自給率はわずか8%となるが、ただし肉類の生産量で自給率〔(国内生産量 / 国内消費仕向量)×100〕を出すと55%もある。

 

 同じように牛肉はカロリーベースの自給率では11%だが、生産量別では41%となり、鶏卵に至っては12%が95%にもなる。

 

 野菜も問題である。同年度の野菜の生産量の自給率は79%と高いが低カロリーのため、大量に食べてもカロリーベースの自給率にはあまり反映されない。

 

 また、カロリーベースの計算式の分母は、廃棄されるものまで含んだ供給熱量である。これを1人あたりの実際の摂取熱量に代えると、2012年度は1874kcal(厚生労働省調べ)で、仮にこれを計算式に当てはめるとカロリーベースでも自給率は約50%と高くなる。

 

 では「65%」とは? これは生産額をベースにしている。食料の国内生産額(9.9兆円) / 食料の国内消費仕向額(15.1兆円)×100の値である。39%に比べればはるかに高い。

 

 しかし、生産額ベースの自給率にも問題はある。国産品の価格が高く、消費量が少なくても自給率が上がるのだ。自給率を上げる努力をするのは当然だが、肝心なのは供給力の維持と強化ではないかという指摘も多い。

 

●相対的貧困率が16.1%って?

 

 2012年の日本の相対的貧困率が、過去最高の16.1%になったこ とが7月に厚生労働省より発表された。経済協力開発機構(OECD)によれば、「日本の貧困率はいまやOECDのなかで6番 めに高い」そうだ(対日審査報告2013年版概観)。

 

 しかし、先進諸国と比べて日本が急に貧しくなったというわけではない。相対的貧困とは、ある国や地域社会のなかで平均的な生活レベルより著しく低い人たちの状態を指し、それは国によって異なる。

 

 A国の相対的貧困の層が、B国では豊かな層の場合もあるだろう。

 

 相対的貧困率はOECDの基準を用いて、税金などを差し引いた 全世帯の可処分所得を、子供を含む国民1人あたりに換算して低い順に並べたとき、真ん中の人の額(中央値)の半分(貧困線)に満たない人の割合である。

 

 2012年の場合は中央値が244万円で、貧困線は122万円だった。この122 万円に満たない人の割合が、収入のない子供や専業主婦なども含めて16.1%ということだ。

 

 しかし、そういわれても貧困なのかどうかピンとこない。そもそも相対的貧困率は経済格差を示す指標であり、経済大国でも格差が大きければ高い率を示す。

 

 日本の場合は、高齢化が進み収入のない人が増える一方で、若年層の非正規雇用の数や独身世帯が増えていることなどから、格差が広がっている。

 

 2012年の1世帯あたりの平均所得額は537万2000円だった。しかし、この額以下の世帯の割合は60.8%にもなる。とりわけ母子世帯では95.9%、高齢者世帯では90.1%に達する。生活が「苦しい」と答えた世帯の割合も59.9%だった(以上厚生労働省調べ)。

 

 さて、この調査時に比べ消費税率が3%上がった。アベノミクスの3本の矢は、広がる格差の壁を本当に突き崩すことができるのか? 

 

(週刊FLASH 2014年10月21日号)

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