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【数字は踊る】そして誰もいなくなった

連載FLASH編集部
記事投稿日:2016.05.19 18:00 最終更新日:2016.05.19 18:00

【数字は踊る】そして誰もいなくなった

写真:AFLO

 

 ●驚きの空き家率

 

「秋深き隣は何をする人ぞ」は松尾芭蕉の有名な句だが、隣は人のいない空き家が増えている。2040年にはほぼ2軒に1軒が空き家になるという予測もあるようだ。

 

 にわかには信じがたいが、実際、すでにその兆候が現われている。

 

 総務省が7月に発表した2013年10月時点の全国の空き家数は820万戸で、総住宅数6063万戸に占める割合は13.5%と過去最高になった。これは平均すると全国の7~8 軒に1軒が空き家という計算になる。

 

 空き家率が最も高いのは山梨県でなんと22.01% にのぼる。東京への人口移動と別荘の多さが影響していると考えられるが、ここではすでに5 軒に1 軒が空き家となっている。

 

 次いで長野県:19.76%、和歌山県:18.07%、高知県:17.79%、徳島県:17.55%と続く。逆に低いのは宮城県:9.37%、沖縄県:10.36%となっている。

 

 では、一極集中化が問題となっている東京などの大都市はどうか。

 

 東京の空き家率は11.11%で全国43位と低いが、大都市だけに空き家の戸数では81万7200戸と断然の1位である。以下は大阪、神奈川と続くが、やはり大都市周辺に空き家の数が多い。

 

 東京の空き家の数は、世田谷区と大田区の全住宅戸数を合わせた数と変わらない(世田谷区:45万5220 戸、大田区:35万7800 戸、計81万3020戸 2008年総務省統計局調べ)。

 

●空き家はなぜ増える

 

 空き家が増えている理由は何か。総務省は人口減少と高齢化のほか、空き家を撤去した場合、土地にかかる固定資産税の軽減措置がなくなったため、撤去に踏み切れない事情もあるとしている。また家屋の解体費用も負担が大きい。

 

 しかし、それだけではない。新設住宅着工戸数が増えているのだ。国土交通省によれば、ここ4 年は連続プラスで、2013年度は前年比10.6%増の98万7254戸と26年ぶりの2桁増になった。

 

 つまり、新設住宅は増え、老朽家屋は放置される、ゆえに空き家は増えるのである。日本では中古住宅は敬遠されがちだが、魅力を感じさせるような仕組み、たとえば税金面での優遇措置などが充実していないのも一因となっている。

 

 ところで、人口減少にもかかわらず世帯数は増えている。これは核家族化に加え、一人暮らしの若者や高齢者が増えたことによるが、総世帯数は2019年をピークに減少すると見込まれている(国立社会保障・人口問題研究所)。

 

 冒頭に挙げた2040年にはほぼ2軒に1軒が空き家になるという予測は、野村総合研究所が5年ほど前に発表したもので、当時の住宅着工数が維持された場合、空き家率が43%であるとした。

 

 同研究所は、総務省が発表した7月の空き家率の発表をベースに、2018年と2023年の空き家率の予測をこの9月に発表している。世帯数の減少を考慮し、住宅の取り壊しなどや、部屋数などを減らすことが進まない場合、2018年の空き家率は16.9%となり、2023年は21.0%にまで増加するとしている。

 

 有識者らでつくる「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)によれば、人口減少により2040年には青森市や秋田市を含む896の市町村が消滅する可能性があるという。ほぼ日本の半分の市町村である。

 

 空き家どころの話ではないが、百人一首でお馴染みの秋の歌をもじれば、「さびしさに宿を立ち出でて眺むれば いづくもおなじ〝空き家〟の夕暮」となる日が来るのかも……。

 

(週刊FLASH 2014年11月4日号)

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