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【数字は踊る】ビールは旨いか、ほろ苦いか

連載 投稿日:2016.06.02 21:00FLASH編集部

【数字は踊る】ビールは旨いか、ほろ苦いか

写真:AFLO

 

●ビール類の税率改定へ

 

 ビール党にとっては喜ぶべきことか、悲しむべきことか。政府・与党がビール類にかかる酒税を見直す方針ということだ。

 

 ビール類とは何か? 「ビール」「発泡酒」「新ジャンル(第3のビール)」の3種類のことである。

 

 さらに「第3のビール」は、酒税法では麦芽、麦以外を主原料に使った「その他の醸造酒」と、従来の発泡酒に麦由来のスピリッツや蒸留酒などを加えた「リキュール」に分類される。

 

 ビール各社のヒット商品を例に挙げれば、「のどごし<生>」 や「ドラフトワン」などは「その他の醸造酒」で、「クリアアサヒ」や「金麦」などは「リキュール」に分類される。

 

 7月に発売された「極ZERO」は、昨年第3のビールとして発売されたが、製法を見直し、発泡酒として再発売した経緯がある。ビール類はそれぞれの種類によって税率が異なる。

 

 ビールの税率の高さが「発泡酒」を生み、やがて「第3のビール」を生み出した。

 

 大ざっぱにいえばビールの消費が減り、ビール各社は酒税の安い発泡酒をつくった。これがヒットすると酒税法が改正されて高くなった。

 

 そこで税率の低い第3のビールを開発。そして今回は、これまでの税率に不公平感があるから改正しようとなったのだ。

 

 350ミリリットル缶を例にとるとビールの酒税:77円、発泡酒:47円、新ジャンル:28円である。この酒税がそれぞれの小売価格に反映される。

 

 さらに消費税が加わるから、財布の中身と相談すれば値ごろ感のある「第3のビール」が売れるのは当たり前ともいえる。

 

 ビール大手5社がまとめた2013年のビール類の課税出荷量の統計によれば、ビール類の割合は、ビール:50.0%、発泡酒:13.5%、第3のビール:36.5%である。

 

 今回の税制見直し案では「発泡酒」と「第3のビール」を統合し、税額を段階的に同額にする意向だ。将来的には55円程度にするといわれている。一方で、ビールの税率は引き下げる予定ということだ。

 

●世界はビールを飲んでいる

 

 キリンビールが独自にまとめた世界主要国のビール消費量を見ていると、それぞれの国のビールの銘柄やラベルが浮かんでくる。

 

 1975年から統計をとり始めているそうだが、今年のレポートによると2012年の世界の総消費量は約1億8737万キロリットル(前年比1.0%増)で、27年連続の増加ということである。

 

 国別では中国が10年連続の1位で4420万キロリットル、2 位アメリカ:2418.6万キロリットル、3 位ブラジル:1280万キロリットル、4 位ロシア:1056万キロリットル、5 位ドイツ:863万キロリットルと続き、日本は7位:554.7万キロリットルである。

 

 国民1人あたりでは、チェコ共和国が1位で148.6リットル、次いでオーストリア:107.8リットル、ドイツ:106.1リットルと続く。チェコが1位とは意外だが、さすがにピルスナー(淡色でホップの苦味があり炭酸がきつい)を生んだ国だけのことはあるか。

 

 ちなみに日本のビールのほとんどがピルスナー・スタイルである。日本は40位で、年間の国民1 人あたりの消費量は43.5リットル。大瓶(633ミリリットル)に換算すると約69本。総人口ではなく、成人数にすると1人あたり約84本になる(2012 年の総人口は10 月1 日時点で1億2751万5000人、成人人口は1億491万7000人)。

 

 なお今年、発泡酒の税制を考える会が20歳から67歳の男女 1000人の飲用者を対象に調査したところ、「家庭で飲むことが多い」人が88%で、家庭で好んで飲まれる酒の種類では、ビールが断然1位だった。

 

 さて、世界の総消費量の1 億8737 万㎘は、東京ドームをジョッ キに見立てると約151 杯分に相当するが、ビールの大瓶に詰めて縦に積み重ねていくとどのくらいの高さになるのか。本数にすると約2960億本、大瓶の天地は290mmである。計算するとなん と8584万916kmになる。

 

 ぐんま天文台によれば、2016年には火星と地球との距離が7528万km になるときがあるそうだ。ビールを飲んで“Fly me to the Moon”ならぬMars、税金の話より少し夢があって楽しい。

 

(週刊FLASH 2014年12月2日号)

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