連載
【数字は踊る】金メダルの稼ぎ方
連載FLASH編集部
記事投稿日:2016.06.30 20:00 最終更新日:2016.06.30 20:00
●スポーツ大国を目指す
東京オリンピックが近づいてきた。競技場の建設や選手の育成などを考えると、けっして十分な時間があるわけではない。
1964年の東京大会では戦後の復興と経済成長、国際社会への 復帰が謳われた。今回は「おもてなし」以外に国として何を世界にアピールするのか?
スポーツの祭典としては、政府は世界第3位の金メダル数を目標に掲げた。一応の目安は30個前後になりそうだ。ちなみに前回の東京オリンピックでは金メダル16個、世界第3位の成績だった。
開催国にはスポーツ振興国としての威信がかかる。また、ひとつでも多くの金メダルを獲得することは国民の夢をかなえ、国威高揚にもつながる。
その典型的な例を、毎年各地で実施される国民体育大会(国体)に見ることができる。国体は各都道府県が、天皇杯(男 女総合成績第1位)と皇后杯(女子総合成績第1位)を本大会と冬季大会の総合成績で競うものだ。
ところが、1978年に長野県でおこなわれた第33回大会以来、2013年の東京大会まで36年間、2002年の高知県を除き、主催地が天皇・皇后両賜杯を手にしてきた。主催地のプライドの表われともとれる。同じことがオリンピックにもいえる。
政府は、2012年のロンドン大会での英国を目標にしているとのことだが、たしかに英国は自国開催のオリンピックに合わせてスポーツ振興を広め、みごとな結果を出した。同じように中国も2008年の自国開催で、スポーツ大国ぶりを世界に示した。
北京大会では、1996年のアトランタ大会より3大会続けて金メダル獲得数1位だった米国を抜いて中国が1位となった。また、ロンドン大会の英国の金メダル数は米国、中国に次いで3位だった。
●4競技で金メダルの87%
では、日本はどうか。
ロンドン大会ではメダルの総数がアテネ大会を上回り史上最多となったが、金メダルが9個も少なく、金メダル数の順位は世界11位と落ちた。
アテネとロンドンの金メダル数の差は何か? それは柔道の金メダル数が、8個から1個に7個も減ったことにある。そもそも柔道は日本の金メダルの稼ぎ頭だった。男子柔道がオリンピックの正式種目になったのは1964年の東京大会(女子は1992年のバルセロナ大会以降)からで、以後の獲得金メダル数は男女合わせて36個である。
東京大会以降の日本の金メダル総数は106個だから、柔道の金メダル数は全体の約34%におよぶ。つまり、金メダルの3個に1個は柔道がもたらしたものだ。もう少し細かく見てみよう。
過去の夏季オリンピック大会における日本の金メダル総数は 130個である。競技別の金メダル数は1位:柔道(36個)、2位: 体操(29個)、3位:レスリング(28個)、4位:競泳(20個)となっている。
5位以降になると、陸上の7個と一挙に減る。1位から4位までの合計は113個、全体の約87%を占める。これらの競技は男女で柔道14、レスリング・フリースタイル11、同・グレコローマンスタイル7、体操14、競泳34(ロンドン大会の実施例)と種目が多く、効率的に金メダルを狙える。
金メダル数に固執するならこれら4競技を集中強化すべきだが、それではスポーツの裾野は広がらないし、参加を意義とするオリンピックの精神が泣く。
(週刊FLASH 2015年3月3日号)