さて、世界獲りに向けた“第2章”のスタートを切ったとはいえ、世界の強豪がひしめくミドル級で、どのような形で再びチャンスはめぐってくるのだろうか。
ここで4団体のミドル級王座の動向をおさえておこう。まずWBAはエンダムが新“レギュラー”王者となり、スーパー王者にゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)が君臨する。WBAはエンダムに対して、村田との再戦を指令した。ゴロフキンは9月16日、保持するWBC、IBFを加えた3本のベルトをかけてメキシコのスター、サウル“カネロ”アルバレスと対戦する。
かつて村田が標的にしていたWBO王者のビリー・ジョー・サンダース(英)は暫定王者アブタンディル・クルツィゼ(ジョージア)との対戦が7月に決まっていたが、あろうことかクルツィゼがロシア組織犯罪グルーブの一斉検挙で逮捕されて試合は延期。防衛戦の見通しは今のところ立っていない。
本田会長は村田について「少なくとも年内には試合をさせたい」としているが、さまざまな事情があり、情勢は流動的だ。
すぐに世界再挑戦をしたいのであれば、WBAが指令を出してエンダムとのダイレクトリマッチということになる。だが、エンダム側の反応が鈍いことに加え、年内は国内の1万人規模の会場はどこも埋まっており、試合場を確保できないという事情も話を難しくしている。
本田会長によると、村田の共同プロモーターであるトップランク社のボブ・アラム氏から「村田にはぜひアメリカで試合をさせたい。エンダムとの再戦をアメリカでやってもいいではないか」という話をもらっているという。ただし、日本のテレビ局、スポンサーの事情を考えると、おいそれと「次はアメリカです」というわけにもいかないかもしれない。
エンダムとの再戦以外という選択肢も、今後の展開によっては現実味を帯びる。9月に行われるミドル級頂上対決、ゴロフキンとカネロの勝者に挑戦するという話も、相手さえOKなら望むところだ。
また、ゴロフキンが勝利した場合は、保持している王座をすべて返上して階級を上げるという話が以前からあり、こうなるとまったく別の形で世界ランキング上位につける村田の前に王座決定戦が転がり込んでくる可能性もある。
村田は記者会見で「いつの間にか自分の夢が小さくなっていた。今回の試合で世界的評価も少しは得られたと思うので、夢のような夢と思い描いていたものを、あらためて目指したいと思う」と語った。
「夢のような夢」とはラスベガスでのビッグマッチにほかならない。次の試合が世界再挑戦になるのか、ノンタイトル戦になるのか、試合会場が日本なのか海外なのかさえ今のところはっきりしないが、再び走り出した村田の視界には、スーパースターのゴロフキンやカネロが、今まで以上にくっきりと映っているはずだ。