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村田諒太、指名挑戦者ブラントと2度目の防衛戦―PREVIEW
I'm Ready!FLASH編集部
記事投稿日:2018.10.11 12:45 最終更新日:2018.10.11 12:45
WBA世界ミドル級チャンピオンの村田諒太が20日(日本時間21日)、米ラスベガスのパークシアターで2度目の防衛戦を行う。混とんとするミドル級戦線で“トップ・オブ・トップ”を狙うための試金石となるのが今回のラスベガス遠征だ。挑戦者2位、ロブ・ブラント(米)との一戦を占ってみよう。
まずはミドル級戦線の現状をチェックしておきたい。このクラスは長らく3団体のベルトを保持したゲンナジー“GGG”ゴロフキン(カザフスタン)がトップに君臨し、元WBC王者で人気ではゴロフキンをしのぐサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)が肩を並べる状況だった。
両選手は昨年9月に対戦してドロー。これはゴロフキンが優勢と見られた試合だったものの、今年9月の再戦ではカネロが力を発揮してゴロフキンを下し、名実ともにナンバーワンとなった。
真の頂点を目指す村田は、この再戦にゴロフキンが勝った場合、WBAスーパー王座、WBC王座を保持するゴロフキンに挑戦するプランを温めていた。しかし、カネロの勝利で状況は一変。帝拳ジムの本田明彦会長は「ゴロフキンの評価は落ちていない」と依然としてGGGをターゲットから外していないが、カネロとゴロフキンの第3戦が行われる可能性があり、いまのところゴロフキン戦の見通しは立っていない。
ならばカネロはどうかといえば、人気のメキシカンは12月15日、1階級上のWBAスーパー・ミドル級王者、ロッキー・フィールディング(英)にニューヨークで挑戦すると発表。この先どうなるかはわからないが、いまのところその視界に村田は入っていないのだ。
米老舗ボクシング誌「リング」が発表している独自のランキング(2018年10月10日現在)で、ミドル級の1位はカネロ、2位はゴロフキンで、村田は6位となっている。ロンドン五輪金メダリストの村田は2013年にプロデビューしてから、アメリカで2試合しているが、いずれもアンダーカードでの出場で、強烈な印象は残していない。いまや世界チャンピオンという肩書きを持つとはいえ、まだまだその存在を本場では浸透しきれていないのだ。
このような状況で、村田にいま与えられたミッションは「アメリカでインパクトのある試合をすること」に尽きる。知名度を上げ、評価を上げることで、村田vs.カネロなど、有力選手と村田の対戦を、欧米のファンや関係者に見たいと思わせることが必要なのだ。
インパクトのある試合とは、ノックアウト勝利ないし、それに近い内容であることに疑いの余地はない。村田が初めてラスベガスでメインイベントを張る一戦は、最初からなかなか高いハードルが上げられていると言えるだろう。
対戦相手のブラントはアマチュアで102勝22敗の戦績を残し、2012年にプロデビュー。WBC米ミドル級王座、WBA北米ミドル級王座を獲得するなどキャリアを重ね、 プロでの戦績は23勝16KO1敗を残している。キャリア一番の大舞台が昨年10月、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)のS・ミドル級初戦で元L・ヘビー級世界王者ユルゲン・ブレーマー(ドイツ)に判定負けしたもの。これが唯一の敗北となっている。
村田はブラントについて「スピードがあって手数の多い選手」と評した。逆にいうとスピードと手数はまずまずだが、パワーとテクニックには、それほど目を見張るものはない。米国での評価を考えても、村田にとっては勝利以上に内容が問われる試合、ということになる。
村田はスパーリングで近い距離でのリターンのジャブやいくつかの角度の異なる右ストレート、左ボディ、左右のアッパーなどテーマを持って試行錯誤を繰り返した。「ジャブの当たる距離で戦いたい。当然、相手にとっても近い距離になるが、ガードの強さとタフネスさでは僕のほうが上だと思うので、相打ちでも打ち負けない」と話す。
パワーでアドバンテージを持つ村田はいつも通りガードを固めてプレッシャーをかけていくだろう。相手を下がらせることが出来れば磨きをかけているショートの右や、左フックが生きるだろう。ダメージを与え続けて中盤から終盤にノックアウト、という理想の展開が見えてくるのではないか。
村田はまだアメリカで実力に見合った評価を得ていないが、1試合で評価が大きく変わるのがプロボクシングというスポーツの特徴でもある。村田にとって今回のブラント戦は、振り返ってみるとターニングポイントになった、という重要な一戦になりそうだ。