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女子アナ横井弘海の『エンタメ時間』迎賓館に見る明治日本人の誇り
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2020.12.25 06:00 最終更新日:2020.12.25 06:00
高校生の頃、東京・四谷にあったラジオ局「文化放送」でアルバイトをしていました。その行きかえりに、駅へ向かう横断歩道から赤坂方面を見るたび、遠くに広がる優雅な白い鉄の門と柵、その奥のネオ・バロック式の宮殿を、自分とはいかにも遠い世界ながら憧れをもって眺めていました。
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1909年(明治42年)、東宮御所として建設された迎賓館赤坂離宮は、明治以降の文化財として初の国宝です。花崗岩で外壁を覆った地下1階、地上2階建て、緑青の屋根が印象的なシンメトリー(左右対称)の本館。主庭の噴水と階段、鉄柵の正門と塀、東西衛舎が国宝に指定されています。
設計はジョサイア・コンドルに師事した片山東熊。関東大震災にも耐えた強固な基礎の上に、建築家、画家、工芸家など一流の専門家が集結し、国の総力をあげ、当時の価格で総工費510万円余をかけて完成させた日本を代表する建築物です。完成までに10年以上の歳月がかかっています。
戦後は国立国会図書館や法務庁の建物として利用されましたが、1974年(昭和49年)に改修を終え、外国の元首や首相などが滞在し、会談や晩餐会などが行われる迎賓館として生まれ変わりました。
■壁面の装飾はまさに日本的
最近、明治・大正・昭和初期のレトロな建物に注目が集まっています。「レトロ」の範疇にいれてよいのか疑問は残るものの、現代に残る名建築の筆頭は迎賓館でしょう。そんな迎賓館に先日生まれて初めて訪れました。
この迎賓館赤坂離宮は、海外からの賓客を迎える「接遇」に支障がない範囲で、2016年4月から一般公開されており、水曜日以外は見学可能です。
四ツ谷駅から徒歩7分。ユリノキの並木道に沿って歩き、学習院初等科の前にある西門から入場します。コロナの影響か人は少なく、荷物検査もサッと済みました。
通常、見学できるのは建物1階の玄関ホール、中央階段と2階の朝日の間、彩鸞の間、花鳥の間、羽衣の間、主庭と前庭です。和風別館の見学には予約が必要です。
設計者の片山は欧米各国に出張し、西洋建築の知識と技術を短い期間で習得しました。正門の意匠はヴェルサイユ宮殿の正門に、迎賓館の外観はウィーンの新王宮に、本館2階ベランダの列柱廊はルーブル宮殿の東面に似ており、また正面屋上の天球儀や建物両翼の端にある玄関上の庇(ひさし)はアメリカ風。これらを見事に構成した荘厳で美しい建物です。
■天球儀と霊鳥の飾り
ヨーロッパでヴェルサイユ宮殿などを見た方は、迎賓館は小さいなと思うかもしれません。しかし、そのスケールを数字で示すと、両翼を広げた本館の全幅は116メートル。前庭の広さは約1.1万平方メートルもあります。
テレビや新聞で、海外の賓客と天皇皇后両陛下がお話しされる様子を見ているせいか、どことなく既視感もありますが、目を凝らしてみると、テレビでは見えなかった見どころが随所に隠れています。
見た目はまったくの西洋建築にもかかわらず、レリーフやシャンデリアをはじめ、花鳥の間に残る七宝額などの装飾モチーフは日本そのもので、また繊細に美しく維持されています。文明開化と国威発揚を目指して建てられたこの宮殿のなかに、建設に携わったひとりひとりが日本人の誇りを埋め込んでいるように感じました。
■色彩豊かな装飾モチーフ
2つの庭も素敵です。外からは見ることのできない主庭には素晴らしい噴水がありました。
前庭に出た瞬間、背後から警備員さんに「アフタヌーンティーはどこですか?」と尋ねる女性の声が響きました。前庭にはキッチンカーが配置され、購入した軽食やドリンクを、整備された休憩スペースでいただくことができます。1日限定20セットのアフタヌーンティーは予約もできますが、昼には売り切れてしまうことが多いようです。
そうか。入場料300円を払えば、館内を見るでもなく、宮殿を我が庭のように歩きながら、疲れたらお茶をしたり、ゆったり過ごすこともできるのですね。
■休憩スペースも充実
迎賓館ではさまざまなイベントもおこなわれています。ゴールデンウィーク、9月と12月の夜間公開とライトアップは、昼とはまったく異なる雰囲気を味わえると大変人気です。
今年は12月24日と25日のみ17時から19時まで。25日には前庭で「ヴァイオリンとチェロの夕べ~Tres joyeux(トレ ジョワイユ)~(金原千恵子 × 笠原あやの)」が、16時から16時15分まで、17時30分から17時45分までの2回おこなわれます。ガーデンカフェではワインなどのアルコールやオードブルも販売するそうです。
今年は残念ながら、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、12月26日から1月11日まで一般公開は中止となりました。新年は1月14日から1月19日まで、少人数による本館および庭園のガイドツアーが実施される予定です。このツアーのときにしか公開されない部屋があるので、それまでにコロナが落ち着くことを祈りつつ、オンラインで予約を入れました。
正門前には観光案内の機能を備えた休憩所もあります。ゆったり席を配したカフェでは評判のプリンがあったり、ここでしか買えないお土産が置いてあったり、穴場スペースです。
都会の喧騒を離れ、贅沢な空間と時間を楽しめる迎賓館は何度でも行きたい場所です。1時間半もあればすべてを見学できますが、10時オープンの自由観覧が基本なので、早く行って、1日ゆっくり見学するのがおすすめです。
●迎賓館赤坂離宮ホームページ
https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/
(内部は撮影禁止。今回は特別の許可を得て撮影しています)
●横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)