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女子アナ横井弘海の『エンタメ時間』新年はクラゲを眺めながら
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.08 16:00 最終更新日:2021.01.08 16:00
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、先行き不安な新年です。
こんな時期だからなのか、もともと根強い人気があるのか、今、クラゲが人気です。私もお正月はクラゲにはまっていました。中華料理の前菜に出るコリコリした食感のクラゲではなく、海に漂うクラゲです。眺めていると、なんとなく時間が過ぎ、不思議と心が落ち着きます。
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クラゲを漢字で書くと「母水」「海月」「水月」。英語では「medusa」とも言います。メデューサってギリシャ神話に出てくる髪の毛がヘビの女の怪獣ですね。それに比べて、日本のクラゲにあてられた漢字はなんとも優しいイメージです。
日本人とクラゲは長いつきあいで、西暦712年に編纂された『古事記』にもクラゲが登場します。世界のはじまりについて表した記述のなかで、世界が生まれたばかりでまだ地面の形もなかったころ、「クラゲ如す漂える」(クラゲのようにただよっていた)という表現があります。
でも、クラゲの生態はいまだに謎だらけ。
世界には3100種類もいて、不老不死と言われるベニクラゲもいれば、大発生して漁業に悪影響を及ぼすエチゼンクラゲもいます。すべて一緒には語れないでしょうが、水中でどう暮らしているのかすら、よくわかっていないそうです。
5億年前から形がほとんど変わらず、90%以上の水分とゼラチン質でできています。遊ぐ能力がなく、多くは水中を漂っています。脳はありません。だから、感情もないそうです。でも、体に神経が張りめぐらされているため、反射的に行動できるという、なんとも神秘的な生物です。
さて、東京・墨田区にある「東京スカイツリー」施設内の「すみだ水族館」では、そんなクラゲの知識も教えてくれます。あちこちの水族館がクラゲの展示を充実させていますが、すみだでも昨年クラゲ展示エリアが広がりました。「ラボ」ではミズクラゲなどの成育状況を間近で見学することができます。
飼育員の男性がエサの動物プランクトンを長いスポイドに取り、水槽の小さなクラゲ1匹1匹にやりながら説明していました。家での飼育も人気が高いカラージェリーフィッシュは直径2センチほどしかなく、体の色はほぼ透明でしたが、エサがきちんと胃袋に入ると、プランクトンの色のオレンジ色になるとか。成長すると体の色が変わるそうですが、変わってみないと何色になるのかわからないそうです。「なんだかわからない」というのはクラゲの魅力のキーワードかもしれません。
私はちょっと飼育員さんに聞いてみたいことがありました。
「知人が2匹のクラゲを買い、クーちゃんとゲーちゃんと名前をつけて可愛がっていたのですが、ある日、水槽から2匹ともいなくなってしまいました。なぜだかわからず悲しんでいるのですが……」
すると、「クラゲは自分でジャンプしません。意思はありませんから。クラゲの寿命はほぼ1年です。よほど大きなものでないかぎり死体は残りません。ぼろぼろとだんだんにはがれて、最後は水中で見えなくなってしまいます。亡くなってしまったのかな」という答え。はかないクラゲの一生を想いました。
でも、意思も感情もなくても、毎日、飼育しているうちに愛着がわくのがクラゲだとか。同館には水槽にガラスをはめず、上から俯瞰して観賞する長径7mの大水槽「ビッグシャーレ」も昨年のリニューアルで登場しました。そこに、すみだ水族館生まれの約500匹のミズクラゲがムーディな照明に照らされ、幻想的な空間を演出しています。
東京・池袋サンシャインシティの屋上にある「サンシャイン水族館」も、昨年7月、従来のクラゲエリアに2つの水槽を加えて「海月空感(くらげくうかん)」をオープンしました。特に、長さ約14mのアクリル水槽のなかに1500匹のミズクラゲが漂う「クラゲパノラマ」は、訪れた都内近郊の水族館のなかで、一番クラゲをドラマチックに見せているように感じました。
部屋の照明を落として、クラゲのみを浮かび上がらせる空間。巨大水槽の上下に置かれたミラー効果と大きな弧を描く水槽の形によって、自分がクラゲの海に包まれているような錯覚に陥ります。
ちなみに、海では波まかせのクラゲは、水槽に入れただけでは、だんだん底に沈んでしまうそうです。そこで数十本めぐらせた配管のバルブを調整しながら水流を作り、クラゲが水槽内で均等に漂うよう工夫しているそうです。
水槽の向かい側にソファがありました。4組のカップルはいつまで待っても立ち上がりそうにありませんでしたが、ゆったり腰をかけておしゃべりするにも最高の空間です。ふわふわ、ゆらゆら、優雅に漂うクラゲたち。そんなクラゲに癒されながら、なんだかわからない今日この頃をゆっくり過ごしましょうか。
●横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)