2月9日、女優の酒井美紀(42)が、「ミルキー」やケーキで知られる不二家の社外取締役に就任することが発表された。酒井は、1996年にテレビドラマ『白線流し』(フジテレビ系)で主演を務め一躍、人気を博した。2月8日発売の『週刊プレイボーイ』では、42歳にして初のグラビアに挑戦するなど、最近も世間を賑わせている。
今回の社外取締役就任の経緯について、不二家の広報担当者は本誌の取材に「酒井さんは主婦でもあるので、その立場も生かして、経営に助言をいただきたい」と話した。だが、この酒井の社外取締役就任に対して、ネット上では《主婦というだけで役員報酬がもらえるのか》《社内の女性がかわいそう》と批判的な声も上がっている。
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「大手企業で、女性芸能人の社外取締役就任がブームになっているんですよ」と語るのは経済ジャーナリストの松崎隆司氏(58)だ。
「東京証券取引所が、『2人以上の社外取締役を選任する』という条件を上場規程に加えたのが、2015年です。そして同年、経済キャスターの江連裕子さん(43)が、外食チェーン『グルメ杵屋』で女性初の社外取締役に就任しました。彼女の就任をきっかけに、ブームが始まったんです」
そもそも社外取締役は、外部の視点で企業経営のチェックをすることが期待され、経営者や弁護士、大学教授などが招へいされることが多い。だが昨今、とくに女性アナウンサーの起用が目立つという。
「2020年、SBIホールディングスの社外取締役として、元TBSの竹内香苗アナ(42)の就任が発表されました。しかも、竹内さんと入れ替わりに社外取締役を退任したのは、元NHKの久保純子アナ(49)。
ほかにも、元フジテレビの菊間千乃氏(48)はコーセーの社外取締役ですし、国谷裕子さん(64)は日本郵船、フリーキャスターの伊藤聡子さん(53)は十六銀行と積水樹脂の社外取締役を兼務。元NHKの福島敦子アナ(59)はヒューリック、カルビー、名古屋鉄道と3社で兼務するという華々しさです」(松崎氏)
より多くの女性が企業経営に参画するのは、喜ばしいこと――。しかしなぜ、企業は女性のなかでも、ことさら芸能人を求めるのだろうか。
「企業側は、女性の社外取締役を、企業の広告塔や広報のプロとして見ている傾向があります。それは、むしろ女性の役割の画一化です」
そう一刀両断するのは、国際政治学者の三浦瑠麗氏(40)だ。
「以前、企業に社外取締役の適任者を探して紹介する会社の方と話したことがありますが、今、『社外取締役に女性を』という声が多く、適任者は奪い合いの状態だそうです。企業は、女性を社外取締役に起用することで、男女共同参画の姿勢をアピールしたいのでしょう。
女性アナウンサーには社会的な常識があり、コミュニケーション能力も高いので歓迎されます。しかし、社外取締役が本来の役割を果たすには、一般常識や知名度だけではない知見や踏み込みが必要な場面があります。今後は、女性の経営者や幹部をしっかり育て、そこから起用していけるといいですね」
フェミニズムの大家で、社会学者の上野千鶴子氏(72)は、もっと辛らつだ。
「現状、女性役員といえば、多くが社外取締役です。しかしこれは、人数合わせと話題づくりを優先しているからです。『そもそも社内に、役員になれる女性の人材を育ててこなかったのか』と思います」
また松崎氏は、女性芸能人にすれば「安くすむ」というのも理由のひとつだと指摘する。
「たとえば外資系コンサルティング会社にいるような女性だと、報酬も1000万円ほど用意する必要がありますが、女子アナは300万円程度が相場です。値段も “わきまえた” 女性が重宝されるんです」
経済界が “森さん” のような考えの持ち主ばかりとは思いたくないが……。
(週刊FLASH 2021年3月1日号)