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女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」東京のブルックリン「蔵前」で宝探しの街歩き
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.02 16:00 最終更新日:2021.07.02 23:26
最近、東京のブルックリンと呼ばれるようになった台東区の「蔵前」は、浅草の南に位置し、隅田川を境に墨田区に隣接しています。ここ数年、目を見張るほどお洒落な店が増え、週末には人気のショップやカフェに入店待ちの行列ができ、ガイドブックを片手に若い人たちが闊歩しています。
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蔵前の地名は、江戸時代に幕府の御米蔵があったことから。近代を振り返ると、1923年の関東大震災で被災した日本橋の人形職人が近隣の浅草橋周辺に移転し、一帯が玩具の問屋街として発展。バンダイ、エポック社など有名玩具会社が本社を構えています。また革や金具の問屋が多く、工房や小物の店、職人さんが集まる町としても知られています。
■人気の先駆けとなったNui.
蔵前人気を作った先駆けは、2012年にオープンしたバーラウンジを併設する旅行者向けのゲストハウス「Nui. HOSTEL & BAR ROUNGE」と言われます。Nui.のコンセプト「BEYOND ALL BORDERS.」(あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を。)は、いまでは町全体に広がっているようにも見えます。
Nui.を運営する株式会社Backpackers' Japan代表の藤城昌人さんにお話を伺いました。
「天井高のある開放的な空間を探すなかで、玩具会社の倉庫に出合いました。『かっこいい空間を作ろう!』という掛け声のもと、友人の空間デザイナーや大工さんたちと意見をぶつけ合って改装工事を進めました。ラウンジの中央に立つイシナラの木は北海道から持ってきました」
全面ガラス張りのラウンジは、周囲の目を引いています。コロナ前、7~8割は外国人のお客様だったというのも頷けます。
「こういうホステルは当時少なかったのですが、お客様とスタッフをフラットな関係にしたい、ここに帰ってきたらホッとする空間にしたかったのです。ラウンジには宿泊客もローカルの方も従業員も自然に集ってきます」
Nui.の目指すところと、肩肘をはらない、オープンな蔵前の下町気質は、よいケミストリーを生み、現在も町に活気を与えています。
■自分の未来に手紙を送る
蔵前には個性的なお店がたくさんできています。自分の未来に手紙が送れる「自由丁」という店が気になりました。宮崎・白玄堂のほうじ茶を飲みながら、用意されたレターセットを使って、未来へ宛てて手紙を書く。書き終えた手紙は自分で封をして、1年後に指定の住所に送られるそう。手紙を書く以外にも、趣味でも仕事でも思い思いの方法で過ごしてよいそうです。
「デジタル社会に疲れている人がいると思うのです。もっとひとりひとりが素直に生きられる世界を作りたい。自由丁は、素直な気持ちを味わう場所や商品を提供し、オーナーと私はポッドキャストで発信もします。ここは『未来に手紙を書く』という日常を思う非日常体験をしてもらえる実験室。蔵前とは空気感が合うのです。手仕事や手作り、日々を大切にしている、生活感があるけれどオシャレ、ゆっくり歩きながら好奇心を広げている人がいる感じがします」(山本夕紀店長)
それにしても、「何の店か?」と覗きにくる人の多い店です。
私は、実は親戚が近所に住んでいて、子供の頃は毎年6月、鳥越神社の大祭に行くたび、この町まで歩きました。そして、蔵前が注目されるようになってからですが、お気にいりの店を何軒も見つけています。
■体験型の店が多いのも蔵前の特徴
たとえば、週末は行列必至の「ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前」は、サンフランシスコ・ミッション地区発のBean to Bar専門店。蔵前の職人文化の伝統といまの町の雰囲気、そして、かつて倉庫だった建物が気に入り、日本の第1号店として精華公園前に出店したそうです。平日、2階のカフェで緑豊かな公園の景色を眺めながら、5種類のチョコレートと素材のマリアージュが絶品の、店内限定シェフズテイスティングがイチオシです。
精華公園の角にある「Coffee Wrights蔵前」には、頻繁に通っています。ロースタリーとカフェを併設した小さな店ですが、エチオピアやルワンダなど、その時々に変わる豆はどれも優しい味わい。こちらは三軒茶屋に次ぐ2店舗目に蔵前を選びました。コーヒーの理解が深まるワークショップなどを開催しているそうですが、そんな体験型の店が多いのも蔵前の特徴かもしれません。
ほかにも、なんとお洒落なお店の多いこと。自分だけのノートやインクをオーダーメイドで作れる文具店「カキモリ」、焼き菓子のレシピ本を出版している「菓子屋シノノメ」と2階の「喫茶半月」、レトロなウグイスビルに入った北欧のビンテージ食器と北欧雑貨を扱う「NORR LAND(ノールランド)」など枚挙にいとまがありません。
蔵前の街歩きは、まるで宝探しのようです。
■やはりケーキは老舗の「レモンパイ」
ところで。「昔からの店を忘れないで。新しい店もいいけれど、やっぱりケーキは『レモンパイ』でしょ」という親戚の言葉で、田原町駅に近い「洋菓子レモンパイ」に足を伸ばしました。
「蔵前の人気のおかげで、こちらにもお客様がやってくるようになりました」と語るのは、40年前にレモンパイを作った両親から店を受け継いだ洋子さん。ガラス越しに作っているのが見えるレモンパイもチョコレートケーキも相当な美味しさで、しかも変わらぬ手頃なお値段。ここに下町の老舗のプライドを感じます。
町はオシャレになっても、蔵前は気取りなく、いつまでも庶民の味方なのです。
●横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)