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女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」東京オリンピック直前、興奮の今昔

芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.09 16:00 最終更新日:2021.07.09 16:00

女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」東京オリンピック直前、興奮の今昔

1964年の池袋駅東口前ロータリー(c)mole・春日文子/春日昌昭作品展より

 

 東京・千代田区にある日本カメラ博物館JCIIフォトサロンで、春日昌昭「東京・1964年」展という写真展が開催されています(8月1日まで)。写真家の春日昌昭氏(1943-1989)が東京を撮影したシリーズのなかから、1964年の東京オリンピック直前の各地の風景作品を見ることができます。

 

 1964年大会に向けて急激に変貌する東京の様子を目の当たりにして、下町で生まれ育った春日氏は憑かれたように町を歩きました。展覧会ではヴィンテージプリント12点を含むモノクロームで切り取られた池袋、上野、浅草、銀座、新橋、渋谷、新宿、北千住などの街角が映し出されています。当時は東京綜合写真専門学校の学生。在学中の1966年に準太陽賞を受賞しました。

 

 

「荒物屋やおでん屋の店先にオリンピックを祝う提灯が下がり、洗濯物と万国旗が一緒に揺れる街角など、日常のなかでの祝祭感が面白く、また、オリンピックとはまったく関係ないように行きかう人々や街の様子を捉えているところが春日さんらしいのではないかと思います」

 

 こう話すのは、企画・運営を担当する白山眞理さんです。
 

 1964年の東京はどんな町だったのでしょう。文化人類学者・斗鬼正一氏の論文『東京オリンピックと日本人のアイデンティティー:1964年東京大会と首都美化運動,マナーキャンペーン』によれば、オリンピック成功のため、インフラ整備から美化運動、マナーの向上まで、国民一丸となって突き進みました。   

 

 市川崑総監修の長編記録映画『東京オリンピック』の映像に、「ようこそ、たくさんのお客様。日本にこんなに外国人が集まるのは初めてのこと」という語りがあります。外国人に見られて恥ずかしくない、世界的なイベントを成功裏に収めて先進国の仲間入りをする、という強い決意だったのでしょうか。

 

 敗戦から20年を目前に、戦後復興を遂げ、高度経済成長期の真っただ中で開催された東洋初のオリンピック。整備事業も突貫工事でおこなわれました。

 

 新設された競技施設のうち、国立代々木競技場第一体育館、第二体育館の完成は10月10日の開幕直前の9月5日。日本武道館の開場は10月3日。外国人が宿泊できるような高級ホテル、ホテルニューオータニや東京プリンスホテルが開業したのは9月1日でした。

 

 空港や鉄道、首都高が整備され、都内の街路樹も飛躍的に増えました。東海道新幹線の東京〜新大阪間の開業は10月1日。さらには、関係なさそうな「住居表示法」まで、江戸から明治以来の伝統ある地名多数がわかりにくいからと改変、消滅させられたとか。

 

 東京はオリンピック一色。春日氏の写真に写る池袋や上野のモニュメントや、銀座の街頭にはためくオリンピック旗。昔ながらの煙草屋や洋品店の店先に掲げられた提灯から、町の人々の純粋な歓迎ムードが伝わります。一方、東南アジアの田舎町のようにも見える50数年前の東京は、オリンピックの勢いそのままに、近代的な都会に変わったことでしょう。

 

柴谷玲子さん

 

 ところで、記録映画『東京オリンピック』に、春日氏の作品と同じく、当時の日本人の気持ちを象徴するような少女の映像が残っています。

 

 開会式会場で、無邪気に青空を見上げるおかっぱ頭の少女の笑顔は、まさに日本の明るい未来を象徴するようでした。当時2歳8カ月の柴谷玲子さんです。2020年大会が決まった後、エネルギー企業のENEOSが、記録映画の彼女が映ったシーンを切り取ってCMを放送。東京オリンピックの実現までを扱ったNHK大河ドラマ「いだてん」のオープニング映像にも玲子さんが登場します。

 

 玲子さんは、お祖母様に連れられた競技場で、生まれて初めてかっぱえびせんを食べ、コーラを飲んだそうです。「ブルーインパルスが描いた空の五輪より、記憶に残っているのは、放たれて聖火に焼かれてしまった鳩でした」と笑います。お花がパッと咲いたような笑顔は、現在も変わりません。

 

 7月14日に聖火ランナーを務める玲子さんに今大会への思いを伺うと、「オリンピックは私にとって特別なものです。コロナ禍で公道を走ることが中止になりましたが、聖火ランナーとして走る姿を沿道で父に見てほしかったなぁ」と、残念そう。

 

 スポーツ一家で、お父上は前回の東京大会で体操の競技委員長。玲子さんは店舗デザインの仕事をしながら、義足のご主人と2人で「日本障がい者立位テニス協会」を設立し、「立位」のテニスという新しいパラスポーツをメジャーにするための活動をしています。

 

 91歳になるお父上と一緒に、人生2度目の東京オリンピックを一緒に見に行くことが夢だとも話していましたが、1都3県での無観客開催が決まり、どうなってしまうでしょう。

 

 コロナ禍での2020東京大会の開幕まで、あと2週間。池袋駅東口駅前を通っても、前回の祝典ムードがまったくないのは仕方ないかもしれませんが、残念です。

 

 こうして東京の今昔を記してきましたが、オリンピックはそもそも選手のものです。競技場では今回も歴史に残る感動が生まれることでしょう。頑張る選手が自分の力を十分発揮できますように。そして、こんな状況でも、オリンピックが終わるときには、「東京で開催してよかったね」という声が聞かれるように願ってやみません。

 

横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)

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