「ずっと住みたいなといつも見上げていたマンションがあって、それがここなんですけど(中略)ランボルギーニが余裕で買えるぐらい(入居の際の費用が)かかったんだよね」
トップYouTuberのヒカキン(32)は、自らのチャンネルに2019年にアップした動画で、自分が暮らすタワーマンション超高層階の部屋を紹介している。隣り合った3LDKの2部屋を借りており、間取りは合わせると6LLDDKKだ。
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メインチャンネルの「HikakinTV」は昨年に日本で初めて登録者数が1000万人を突破し、年収10億円超ともいわれるヒカキン。数百万円のロレックスを複数購入したり、年末ジャンボを100万円分購入するなどカネにものをいわせた動画も数多い。ITバブル長者のヒカキンは、当然住まいも桁違いなのだ。
だが、ある不動産業者は、この “赤坂の摩天楼” は、じつはちょっとしたいわくつきの物件なのだと声を潜める。
「ヒカキンの住む部屋の実質的な “大家” でもあり、このマンションで6部屋を事実上所有する人物が、不動産業界では超有名な人物なんですよ……」
登記情報を確認すると、この部屋を所有するのは港区に所在する企業のH社だ。不動産業者が続ける。
「この会社を率いているのは、昭和から平成にまたがるバブル時代に仕手集団『光進』を導いて “一日に1000億円を動かす” 乗っ取り屋として恐れられた小谷光浩氏(84)です」
1990年7月に当時の藤田観光の株価操作容疑で東京地検特捜部に逮捕された小谷氏は、1991年3月には蛇の目ミシン工業(当時)への恐喝容疑で再び逮捕された。最高裁まで争った後、2003年に懲役7年の実刑判決が確定。仕手戦を次々と仕掛け、大金を動かし続けた男は、時代を象徴する “闇のバブル紳士” として知られている。
同時代、麻布建物で不動産投資を繰り返し、“バブルの帝王”といわれた渡辺喜太郎氏(87)は語る。
「俺はさ、世のため人のためでやってたんだよ。でもあいつは、自分の儲けのためだけに動く本物のワルだよ。あいつにエラい目に遭わされたやつをたくさん知ってるよ」
そんな小谷氏がなぜ今、赤坂のタワマンを買い上げているのか。
「出所した2009年から数年間は、土木関連事業への投資をやっていたようです。当時はすっかり白くなった髪をオールバックになでつけ、髭をたくわえた姿で赤坂や銀座のクラブにも出向いていました。出所後に立ち上げた事業で得た資金で都内の物件を買い漁ったそうです」(経済ジャーナリストの松崎隆司氏)
小谷氏がこの “赤坂の摩天楼” に目をつけたのは、マンション完成直後の2018年。かつての “勝負師” は、ここでも武闘派の顔を見せていた。
というのも、耐震強度が偽装されていたとして問題になったKYB製免震オイルダンパーがこのマンションに使用されていることを知った小谷氏側は、マンションの建設会社を相手取って提訴したのだ。裁判はいまだ係争中で、小谷氏は原告側の証人として昨年9月30日に出廷している。
「あの小谷が再び表に出て、裁判の証人として立ったことには驚きます。自分の投機を死んでもものにしようとする気概を感じざるを得ません」(ジャーナリストの森功氏)
裁判資料を閲覧すると、小谷氏はほかにも港区のマンションを親族や関連会社名義で50部屋あまり所有している。ヒカキンが住む部屋は7億5000万円で現金で購入したもの。引退していると思いきや、虎視眈々と投資先を探し、次々と億ションを買い上げていたというわけだ。
ヒカキンは自室の大家が、そんな “闇のバブル紳士” 小谷氏だということを知っているのかーー。ヒカキンの事務所に問い合わせたが「まったく存じ上げません」との回答だった。
一方の小谷氏の会社にもヒカキンに部屋を貸していることを知っているのか問い合わせたが、「取材には一切答えない」との返答のみだった。
新旧バブル長者の数奇な交錯点となった、“赤坂の摩天楼” の一室。経済アナリストの森永卓郎氏はこう分析する。
「同じ “億ション” に吸い寄せられた新旧億万長者の2人でも、ヒカキンさんと小谷氏はまったくタイプが違います。究極の相場師といわれた小谷氏は今もタワマンを買い漁り、そこから収益を得ている。一方、ヒカキンさんはタワマンにYouTuberの “職場” としての利用価値を見いだして借りているだけ。
要するに、カネにカネを稼がせている “旧石器時代” の小谷さんに対して、ヒカキンさんはタワマンを購入することには興味がなく、インフルエンサーとして稼いでいる。時代はとてつもなく変化しているのです」
かつては上野のスーパーで住み込みで働き、いまや “赤坂の摩天楼” にまで上り詰めたヒカキン。同じタワマンのてっぺんから見える景色でも、“闇のバブル紳士” とヒカキンとでは、まったく違うのかもしれない。