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グワシ!楳図かずおはインスピレーションの宝庫/女子アナ横井弘海の『エンタメ時間』
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2022.02.04 16:00 最終更新日:2022.02.07 14:33
東京・六本木ヒルズ森タワー52階「東京シティビュー」で、「楳図かずお大美術展」が始まりました(3月25日まで)。
漫画家以外にもタレント、歌手、映画監督など、長年にわたり多彩な活躍をされていらっしゃいますが、私にとっての楳図かずおさんは、「グワシ!」の『まことちゃん』を除けば、恐怖マンガの巨匠という存在です。
子供の頃、楳図さんの漫画は、めくるページ、めくるページがとにかく怖く、リアルな絵の描写はもちろん、「ギャア!!」とか「ギエッ」とか「ハハハ」という吹き出しの文字まですべてが恐怖。
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マンガを見た後に寝ていると、クモやヘビがうごめいている絵が頭に浮かび、自分の布団のなかまで入ってくるのではないかと、妙な想像力が働いて、またまた怖くなる。
どうしてそんなに怖いマンガばかり描いているのかと思いながらも、なぜかまた夢中で読んでしまうのが、自分でも不思議でした。
今回、展覧会のサイトに「※本展展示内容の一部に、刺激が強いと感じる可能性のある表現が含まれています。あらかじめご了承ください。」という一文が添えられているのを発見して、「これも怖いのだろうなぁ」と、背筋が寒くなった昔を思い出しながら、会場に向かいました。
展覧会はタイトルに掲げられているように、まさに「大美術展」です。主催者の言葉を借りると、「マンガというジャンルに収まりきらない先見的な世界観や幻視的なビジョンを遺憾なく発揮されてきた楳図かずおの『比類なき芸術性』に焦点を当て、代表作を通じて、気鋭のアーティストとともに『楳図かずおの世界を表現する』」という新しい試みです。
恐れ多くて、楳図さんの芸術を理解したとは言えませんが、展覧会を見て、楳図さんの放つエネルギーにうなりました。
展覧会の最大の目玉は、楳図さんが4年の歳月を費やして制作した『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』の初公開。
名作『わたしは真悟』から40年の時を経た続編で、同時に時空を超えたパラレルビジョン(並行世界)でもあります。
なんと、最後の連載『14歳』が終了してから27年ぶりの新作だそうです。
また、鉛筆で描かれた素描101点と、それらを着彩した連作絵画は、人物が紙から飛び出してきそうな迫力。独特でやっぱり少し怖い描写に感心しながら、一枚一枚細部までじっくり見てしまい、時間がいくらあっても足りないなぁと感じました。
『芸術新潮』2022年2月号によれば、『ZOKU-SHINGO』を描こうと思った理由は2つあったそうです。
まずフランス南西部アングレーム市で毎年開催されるコミックの祭典「アングレーム国際漫画祭」で、2018年、『わたしは真悟』が永遠に残すべき作品に贈られる「遺産賞」を受賞したこと。
この世界的評価を楳図さんは大変喜び、「これをきっかけに、このあと楽しい企画がぞくぞく続く予感がして、とても幸せな気分です」と語ったそうです。
もうひとつは、展覧会をするならば、周りをアッと驚かせたいというアーティスト魂でしょうか。この2つが相まって、楳図さんを新作に駆り立てました。
現在85歳。芸術に年齢を照らして語ることにあまり意味はないかもしれませんが、ただすごい!
若い才能にインスピレーションを与えるエネルギーにも驚きです。今回、楳図作品をテーマに現代アーティストが作ったインスタレーションが3点展示されています。
手塚治虫さんの作品を見て、多くの若者が漫画家に憧れたのは有名な話ですが、楳図ワールドも同じように後進を育てるのですね。
芸術家の方から楳図さんはどんなふうに見えるのか興味が出て、インスタレーションを作成した冨安由真さんにお話を伺いました。
「楳図先生の作品で素晴らしいと思っていることは、影の使い方が独特であることと、構図の面白さです。ひとつの絵のなかに、違う次元が自由に出てくるのです。
『ZOKU-SHINGO』では梯子が象徴的に出てくる場面があります。2つの空間が重なり合い、また次元がゆがんでいるように感じ、そこにインスピレーションを受けました」
『わたしは真悟』では、12歳の悟と真鈴が東京タワーのてっぺんまで登り、奇蹟を起こします。『ZOKU-SHINGO』でも、もちろん東京タワーは大切な場所です。
そして、楳図さんの東京タワーを見ながら、東京シティビューの大きな窓越しに、本物の東京タワーも見える不思議な展覧会。
天才・楳図かずおさんに感服。隣のカフェで「まことちゃんホットチョコレート」を飲みながら、しばし、ぼーっとしてしまいました。
横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)
写真 (c)エキソニモ (c)楳図かずお/小学館
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