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世界中から集まった蘭の花、奇跡の美しさにうっとり/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」
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開会式テープカット/世界らん展2022
「世界らん展2022 -花と緑の祭典-」が、3月24日から30日までの7日間、東京・文京区の東京ドームシティ プリズムホールで開催されています。40万人を動員する人気イベントとして知られていますが、昨年と今年は感染拡大防止の観点から、規模を縮小させ、時期も例年より1カ月遅らせての開催となりました。
色とりどりの蘭の花で埋め尽くされたウェルカムゲート「オーキッド・ゲート2022」をくぐり抜けると、両側に高さ約4mにもなる大迫力の花の渓谷「スプリング・バレー」が広がります。
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蘭は、自生する地域では木や岩に寄生して根を張って成長する種類も多く、目線より高い位置から滝のようにしだれる蘭たちは、自然に近い姿なのかもしれないと感心しながら撮影しました。
世界らん展と言えば、見逃せないのは「日本大賞」。日本中から蘭を一堂に集めておこなわれる世界最大級のコンテストで、その最高賞が日本大賞です。
花そのものの美しさを競う同賞の審査に、今年は500点の応募がありました。そして、千葉市の山本裕之さんの「新緑の瞬間(しんりょくのとき)」が選ばれました。
会場のいちばん目立つところに輝く山本さんの蘭は、薄いグリーンの花が群生する、さわやかなエビネの大きな鉢。
審査委員長の講評によれば、日本原生の蘭のエビネが、32回めのコンテストにして初めて大賞になり、日本人として「やった」という思いだそうです。色彩の美しさと、花と花との間隔のバランスのよさが高評価でした。
蘭の「そもそも」を調べてみると、日本やアメリカ、オーストラリア、アフリカ地域など世界各国に自生しており、野生種だけでも約1~3万種。
改良された園芸種を含めると、その数はさらに増えて、地球上で確認された植物の1割近くが蘭という説もあります。生息地で「東洋蘭」と「洋蘭」という分け方がされています。東洋蘭は日本や中国を原産地としているもので、それ以外の地域のものが日本では洋蘭と呼ばれています。
過酷な環境でも適応・変化して育ち、繁殖力や生命力が強い花。奥が深いので、好みの品種を選んで育て出したら深みにはまる人も多いようです。
今回の日本大賞の受賞は、長い間、洋蘭のボリュームに勝てなかった日本の蘭を山本さんの育種の努力により実を結んだことが、これまた素晴らしいのだそうです。
花を見たら「きれい!」という感想しか出ないので、会場にいらした山本さんご本人に、花を育てるご苦労なども含めて少し話を伺ってみました。
「いまご覧いただいているのは、今年1回だけの姿です。花としてよいものはたくさんできても、1つの鉢花として、全体にバランスよく咲くものはごくわずかしかありません。
植木鉢という限られた空間で、きれいに揃って、なかまで花が咲くというのは、実は奇跡に近いのです。作ろうとしてもできるものでもありません。
このエビネは、自分で種をまいて20年めになります。1年に1本ずつ新芽がずれて出てきます。寄せ植えではないのですよ(笑)。1つの種から30本近くがバランスよく伸びて、ちょうどよい時期に花が咲きました」
山本さんは、日本蘭が約300種類あるうち、エビネなど3種類の品種改良・開発を45年もなさっていて、過去に100万本以上も作っているそうです。今回は、何十万鉢のなかからコンテスト用に35鉢を選び、40日前から暖房して、さらに8点を選んで、この「新緑の瞬間」が最高賞を受賞。
エビネは本来4月に咲く花なので、「さぁ起きなさい」と暖房を使って早起きさせます。しかし、これまでの2月開催だと同じように暖房してもうまく咲いてはくれない。
世界らん展は32回めの開催ですが、山本さんは10数年出品した後、精神的に疲れてずっとお休み。昨年久しぶりに出品して2等賞を獲得し、今回、晴れて最高賞を獲得したという長い道のりでした。
会場には同じようなご苦労をされながら、奇跡の一鉢にかけている方々が多くいるのでしょう。一鉢一鉢を丹念に見つめながら、「自分のは少し花が多すぎたかなぁ」などとつぶやいている男性もいました。
ふだんは市場に出回らないランや、その他の花や雑貨など、約50店舗が参加する「ボタニカルマーケット」は、買い物好きの私にはお楽しみの場所。今回は、6月から発売されるという、見たこともない青色コチョウランに目を奪われました。
こちらも2005年から研究開発を続けて生まれた奇跡のコチョウランでした。ツユクサを使った遺伝子組み換え植物であるため、国内の生物多様性への影響がないことを証明するため、多くの試験や調査をおこない、2021年にようやく国の承認を取得できたなど、開発に携わった方が熱心に説明してくれました。
見逃せない蘭はまだまだあります。
1999年に中国とベトナムの国境付近で発見され、「20世紀最後の大発見」と言われるパフィオペディラム ハンギアナム。そして、南アフリカのテーブルマウンテンに輝く「赤い宝石」「神々の花」と呼ばれる幻の洋蘭ディサの花畑。ディサの前では「これ、いろいろな色を作るのは大変だったんだ」と隣の人に話しかけている方の声が聞こえました。
世界らん展はそんな奇跡だらけ。やっぱり「きれい!」という言葉しか出てこないのですが、花を作る方々のご苦労に想いを馳せながら、蘭の花見もオススメです。
横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)