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「人をサポートする」価値と意味、パキスタンの結婚生活が教えてくれた/女子アナ日下千帆の「美女は友達」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2022.05.19 16:00 最終更新日:2022.05.19 23:47
今回ご紹介する美女は、パキスタン人の旦那さまを含むご家族で、高齢者向けと障害を持つ子供たち向けの2カ所のデイサービス事業所を運営しているナディーム多美子さんです。
東京都北区出身。中学、高校と新体操やダンスで体を動かしてきた多美子さんは、部活でケガをすることが多く、そのたびに整体に通っていました。
整体の先生から、「いい体してるね。この道に進むと稼げるよ」とスカウトされたため、専門学校に進学し、1994年に柔道整復師の資格を取得。卒業後、整骨院や大きな病院の整形外科のリハビリ室などで4年間のインターンを経験しました。
その病院で、多美子さんに運命の出会いが訪れます。1990年代中頃は、海外から日本へ出稼ぎに来る労働者が多く、リハビリ室にも、ときどき外国人患者が来ることがありました。ある日、指を切断した患者さんの通訳として付き添ってきたパキスタン人男性が、後に多美子さんの旦那さまとなるのです。
「ビザが切れるため、パキスタンに帰国した彼から『君の気持ちが変わっていないなら来ないか」と言われ、周囲の反対を押し切って一人でカラチに旅立ちました。
まったく未知の国であったため、出発前に母に遺言を残しました。現地に飛んでも彼が迎えに来てくれるかわからなかったので、賭けでしたね。
というのも、パキスタンで裕福な家の長男として生まれた彼には、最初から許嫁がいたのです。今後に影響を残さないよう、上手に婚約を解消するまで2年半かかりました。それまでは別の場所で生活し、彼の弟がボディーガードを務めてくれていました」
2年半も待った甲斐があり、無事にパキスタンの伝統的な結婚式をあげた2人は、しばらくは両国を行ったり来たりの生活を続けていました。
ところが、貧富の差を当たり前としている国の制度、男尊女卑の風習など、多美子さんが受け入れられない価値観の違いを多く感じたため、2歳になる長男をつれて日本に帰国してしまいます。
「このままでは子供の教育によくないと思ったのですが、イスラム教は離婚が難しく、結婚前の取り決めで親権を取られてしまうことになっていたので、子供が20歳になるまでは離婚しないと決めていました」
2000年に帰国後は、練馬でパキスタンカレー店をオープン。まもなく柔道整復師の資格を持つ経営者に誘われ、再び、整骨院で働き始めました。その後、ケアマネージャーの資格を取得して独立しました。
2015年11月、放課後等デイサービス事業所「ポシャル」を設立。フランス語で「言ったことは叶う」という意味だそうです。施設内には、「グランマ整骨院」を併設しています。
日本とパキスタンで、医療や介護の制度で異なる点はどのようなことでしょう?
「パキスタンでは医療、介護保険は皆無です。しかし、古きよき日本のように家族の絆が強く、高齢者は家族で見守り、サポートしています。私が見てきたなかでは、認知症や寝たきりで介護を受けている方はいませんでした」
母の活躍を見て、23才になった長男がデイサービス事業所「ペヤール」(ウルドゥー語でみんな誰かの愛しい人)をオープンさせ、障害を持つ子供たちのために勉強や体育のサポートを始めました。
「パキスタンでは、障害を持つ子供たちも普通に学校に通い、成長後は結婚もしています。放課後等デイサービスの子供たちも、彼らの魅力を認めてあげることで、将来、それが活きてくると思えるようになりました」
驚くことに、しばらく離れていた旦那さまも、多美子さんの頑張りに感化され、日本で介護の講座を受講し、現在はスタッフとして一緒に働くようになったそうです。母国では働く必要がないほど裕福だった夫が、とうとう多美子さんの手伝いをするようになったのです。
「忙しくても一生懸命に働いて、充実した毎日をおくる私たちが、幸せに見えたみたいです(笑)。労働に対して感謝される喜びに気づいたのではないかと思います」
無謀にも思われた恋の逃避行が、このような素晴らしい結末を迎えるとは、なんというハッピーエンドでしょう。
「パキスタンは貧富の差が激しく、一歩外に出ると、5歳くらいの子供たちが、靴も履かずにお金になりそうなごみを集めています。しかし、彼らの目には力があり、よく笑っています。
識字率は50%以下。それでも生きる活力がみなぎっているのです。パキスタンに滞在した経験から、地位、肩書、年収など関係なく、どんな方もまずは受け入れるようになりました」
サポートを必要とする人たちのための居場所を次々と立ち上げていく多美子さん。今後は、働く女性のための小規模保育園、虐待を受けた子供たちを保護する施設の設立を考えているそうです。多美子さんのますますのご活躍を祈念いたします。
■念じたことを叶えるための3カ条
(1)「明日はもっとよくなる。絶対あきらめない」と毎晩、就寝前に唱えよ
(2)反省しても後悔しない
(3)すべてに感謝を
●日下千帆(くさかちほ)
1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も
( SmartFLASH )