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ゴッホの世界への没入体験、ハンモックに揺られながら楽しむ/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2022.07.01 16:00 最終更新日:2022.07.01 16:00

ゴッホの世界への没入体験、ハンモックに揺られながら楽しむ/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

ハンモックに揺られながら観るゴッホ

 

 埼玉県所沢市にある角川武蔵野ミュージアムのグランドギャラリーで、「ファン・ゴッホ ―僕には世界がこう見える―」が開催されています(11月27日まで)。

 

 日本人にもっとも愛されている西洋画家のひとり、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)。彼が見たであろう世界を、デジタルアートとドラマチックな音楽で追体験します。1100平方メートル以上もある巨大空間で開催される、日本初の体験型ゴッホ展です。

 

 

 34台の高輝度プロジェクターを組み合わせて、360度すべての壁面と床面をシームレスにつなぎ合わせ、観客は映像と音楽を全身で浴びる「イマーシブ」体験ができます。

 

「イマーシブ(IMMERSIVE)」とは直訳すれば「没入」。最近、この言葉はゲームやVR、映画、シアターなどでも聞くようになりました。

 

 壁にかかった絵画をただ眺めるのではなく、展覧会場を自由に歩きまわり、立ち止まったり、椅子にかけたり、ひとりひとりが思いのままに時を過ごし、五感でゴッホを感じるというのが、この展覧会の楽しみ方です。 

 

「私は、観客を、ただ見るだけの鑑賞から解き放ちたいと思っています。子供たちが壁や床の絵で遊んだり、カップルが音楽に合わせて抱き合ったり踊ったりしているのを見ることができれば、私にとってこんなに幸せなことはありません」

 

 そう語るのは、ディレクターのジャンフランコ・イアヌッツィ氏です。イマーシブアートインスタレーションを作成する先駆者として、30年間にわたって世界各地で数多くの展覧会を実現しています。

 

 ゴッホと言えば、『ひまわり』はじめ、『黄色い家』『アルルの寝室』『糸杉』『自画像』『星月夜』など、ご存じの作品が多いと思いますが、それらの作品も織り交ぜた映像が全8幕30分間で構成されています。

 

 迫力があり、詩的でもあるこのデジタルアートを見ていると、ゴッホ37年間の波瀾万丈な人生や、繊細かつ情熱的な人となりが伝わってきます。

 

 もちろん、初めてゴッホの作品に触れたとしても、躍動する力強い筆致に注目し、大胆な色彩を再現した映像に、きっと心を揺さぶられることでしょう。

 

 会場の天井から、ハンモックが数カ所ぶら下がっていました。ハンモックに揺られながら眺めるゴッホの世界はどんなでしょう。 

 

「ハンモックを置いたら楽しいのではないか」と、ミュージアムの方の発想で設置したそうですが、大好評。こんなふうに絵を鑑賞できる機会はなかなかないので、ぜひお試しを。

 

「楽しい!」「気持ちいい!」など、さまざまな感想があるそうですが、私はハンモックに身を任せて見るゴッホの世界は、そよ風が吹くなかで絵を見るような気がした反面、ずっと揺れているのが彼の不安な精神状態を表しているようにも感じて、少し切なくなりました。 

 

 さて、第2会場も見逃せません。ここでは年表と手紙をもとに「知っているようで知らないゴッホの生涯」をたどります。

 

 受験も就職もうまくいかず、弟のテオの支援を受けて苦悩の多かった日々、フランス・アルルでのゴーギャンとの共同生活、そして悲劇的な最期。

 

 ゴッホが画家として活動していたのは、亡くなる1890年までのわずか9年間ですが、生前に評価されず、生涯に1枚しか絵が売れなかったと言われています。今となっては不思議としか言いようがありません。

 

 日本との関わりのなかでは、ゴッホが日本の浮世絵に強く影響されたことや、逆に、日本人のゴッホに対する思いを示す通称『芦屋のひまわり』に関する展示がありました。

 

 ゴッホは自らの「希望」であり、南仏アルルの太陽を象徴するという『ひまわり』の絵を7枚描いています。そのうちの1枚は、日本企業の損保ジャパンが1987年にオークションで落札し(当時のレートで58億円)、現在もSOMPO美術館で常設展示しています。

 

 実はもう1枚、1920年に実業家、山本顧彌太氏によって購入されて日本に持ち込まれた『ひまわり』があったことを、この展覧会で初めて知りました。

 

 明治後期、作家の武者小路実篤と志賀直哉が文学同人誌『白樺』の発刊を話し合い、画家の岸田劉生、中川一政、梅原龍三郎らも理念に共鳴して同人との親交を深めていた白樺派は、早くから西洋近代絵画を日本に紹介した功労者です。

 

 そして、彼らはいつか自分たちの美術館を建て、そこにゴッホの作品を飾りたいという希望を持っていました。

 

 そこで、白樺派にパトロンとして資金援助していた山本氏が購入し、同作を芦屋の自宅で預かっていたのです。しかし、第2次世界大戦による空襲で焼失。残念としか言いようがありません。

 

 ただ、日本の美術館には『ひまわり』以外にもゴッホの絵画が何枚も収蔵されています。デジタルアートを見た後は、なぜかゴッホの心情まで深く知った気分になり、それらの作品をまた見に行きたくなりました。

 

横井弘海(よこいひろみ)
 東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)

 

( SmartFLASH )

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