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平成バラエティの歴史でわかった「勝てる芸人」の秘密

芸能・女子アナ 投稿日:2017.06.23 16:00FLASH編集部

平成バラエティの歴史でわかった「勝てる芸人」の秘密

『メイプル超合金』

 

 テレビが求める「面白い芸人」は時代につれ変わってきた。『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)の著者で社会学者の太田省一氏が分析する。

 現在のお笑い芸人界の勢力図は、昭和が平成に変わる 1980年代の終わりから1990年代の初めごろに出来上がったものだ。ちょうどそのころタモリ、ビートたけし、明石家さんまの3人が「お笑いビッグ3」と呼ばれるようになり、さらに「お笑い第三世代」と称されたとんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンらが人気を集め、それぞれ冠番組を持つまでになった。

 

 そうしたなか、1992年にテレビ史に名を残すことになる2つのバラエティ番組が始まった。ひとつは『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)である。このなかの若手芸人によるダジャレをベースにしたネタがウケて「ボキャブラ」ブームが巻き起こり、爆笑問題、海砂利水魚(現・くりぃむしちゅー)、ネプチューンなどがこの番組から頭角を現わした。

 

 もうひとつは『進め!電波少年』(日本テレビ系)である。「アポなし」など体当たりロケ中心のこの番組のなかで、無名芸人コンビの猿岩石(言うまでもないが、有吉弘行がコンビの一人だった)を起用した1996年放送の企画「ユーラシア大陸横断ヒッチハイク」が大ヒットする。

 

 同じくナインティナインが「オファーシリーズ」などのロケ企画で奮闘する『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)が始まったのも同じ1996年だった。

 

 こうして1990年代には、「ネタ見せ」と「ロケ企画」という、現在に続くバラエティ番組の2つの大きな流れが確立された。それに加え、お笑い以外の分野への芸人の進出という流れが見えたのもこの時期だ。

 

 1990年、島田紳助(引退)が報道番組『サンデープロジェクト』(テレビ朝日系)のMCに就任。その成功をきっかけに、紳助は政治経済を語れる芸人として独自の地位を築いていく。お笑い芸人に「プラスアルファ」が必要な時代が始まったのである。

 

 続く1990年代末から2000年代前半には、人気のネタ見せ番組が次々に登場した。『爆笑オンエアバトル』(NHK)、『エンタの神様』(日本テレビ系)などがスタート。そこからテツandトモ、アンジャッシュ、タカアンドトシなどがブレイクする。また、波田陽区や小梅太夫(現・コウメ太夫)などピン芸人もギャグを武器に人気者になった。

 

 さらに2001年開始の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)は注目度も高く、若手コンビの登竜門になった。ただサンドウィッチマンのようにその後もコンビとして活躍する芸人がいる一方、ザキヤマこと山崎弘也(アンタッチャブル)や山里亮太(南海キャンディーズ)のようにピンで活躍するようになる芸人も少なくなかった。

 

 それは、このころから個々の芸人にキャラの面白さが求められる「キャラ重視」の時代になったからである。

 

 たとえば2003年開始の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)はそれを象徴する番組だ。そこでは、毎回「人見知り芸人」や「運動神経悪い芸人」などの「○○芸人」が登場し、変わった癖や面白エピソードを披露して人気となった。

 

 その結果、2000年代前半以降、多彩なキャラの芸人が居並ぶ「ひな壇」でのフリートークをメインにしたバラエティ番組が増え、全盛を迎えた。

 

 同時に、「ひな壇」の仕切り役として、ツッコミに優れた芸人がMCとして重宝されるようになった。たとえば、ウッチャンこと内村光良、ロンドンブーツ1号2号・田村 淳、千原ジュニア、フットボールアワー・後藤輝基、オードリー・若林正恭、そして「毒舌」で再ブレイクした有吉弘行らがそれにあたるだろう。

 

 彼らに共通するのは、コミュニケーション能力、いわゆる「コミュ力」の高さだ。自分の「コミュ力」不足を気にして神経をすり減らしがちな現代の私たちにとって、鋭いツッコミや、たとえツッコミによって巧みに会話を笑いにつなげていく芸人の技は身近なコミュニケーションのお手本であり、それが人気の一因にもなっている。2017年の新入社員への調査(明治安田生命調べ)で、内村光良が「理想の上司」1位になったことなどが、その証拠だ。

 

 高いコミュ力を生かし2000年代後半から現在にかけては、島田紳助のようにお笑い以外のお堅い分野の番組のMCに進出する芸人が目立つようになった。くりぃむしちゅー・上田晋也、極楽とんぼ・加藤浩次、バナナマン・設楽統らは、情報・報道番組のメインMCを務める。

 

 彼らはツッコミ担当の芸人だが、加えて時事問題などに対応する知識を兼ね備えている。オリエンタルラジオ・中田敦彦やカンニング竹山のように情報番組のコメンテーターを務める芸人が近年増えたのも、同じ流れだろう。

 

 また昨年大ブレイクのメイプル超合金・カズレーザーはクイズ番組での活躍や読書家なことなど知的な面が魅力の一人だ。『火花』で芥川賞を受賞し、『NEWS ZERO』(日本テレビ系)にキャスターとして出演するピース・又吉直樹も同様である。

 

 一方で、「ひな壇」全盛の時代を経て、それぞれのキャラを生かしてロケで面白さを発揮する芸人もいまでは多い。『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京系)のさまぁ~ずは、街歩きバラエティ定番の「ユルい」笑いのパイオニア的存在である。

 

 また『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)のロケ企画で活躍し、とうとう今年ゴールデンタイムに冠ロケ番組を持つようになった出川哲朗は、愛すべき天然キャラとリアクション芸で高い人気を集める。バイきんぐ・小峠英二や千鳥なども個性的なロケの達人だ。

 

 では今後はーーインターネットの存在を無視できない。実際、昨年の渡辺直美やピコ太郎の人気の背景には、SNSやYouTubeの存在があった。テレビとネット両方のコミュニケーション手段を上手に活用する芸人が、大ブレイクする時代が来つつある。

 

(週刊FLASH 2017年6月13日号)

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