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熱気球に乗って高度1000mの大空散歩はいかが?/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2023.01.21 16:00 最終更新日:2023.01.21 16:00
旅行会社エイチ・アイ・エスが、高高度気球に搭乗して「宇宙の入り口」(高度約30kmの成層圏)まで旅するチケットの販売を1月18日から開始したことが話題になっています。
宇宙ベンチャー企業の米Space Perspectiveが運用する高高度気球「Spaceship Neptune」(スペースシップ・ネプチューン)で、2時間かけて上昇し、高度30kmの地点で2時間浮遊。さらに2時間かけて緩やかに降下し、船が待つ海に着水するという6時間の旅。ガスを風船部分に詰め込み浮力を得るガス気球と同じ原理で、水素で上がるそうです。
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料金は1人当たり12万5000ドル(1ドル=129円換算で、約1607万円)プラス手配料金ですが、世界中で1000名以上が申し込んでおり、2024年のフライトはすでに完売。宇宙の入り口から見えるのはどんな景色でしょうか。
「気球に乗って、空を飛んでみたい!」
宇宙とまでは言いませんが、そんな夢を叶えてくれる場所が日本にも複数あります。私も、新年には今までやったことのないことをやってみようと思って、先日、熱気球で大空を自由に飛ぶ「フリーフライト」を体験しました。場所は、栃木県の南端に位置する渡良瀬遊水地です。
昔、カンボジアのアンコール遺跡に行ったとき、気球ツアーに参加したことがあります。気球にロープをつけたまま、地上から20~30メートル上昇する「係留飛行」。まったく初めての経験でしたので、乗るまで不安でしたが、その不安とは裏腹に、空高くから朝日に輝く遺跡を見下ろす気持ちよさは、なんとも言えない感動でした!
ならば、熱気球で大空を自由に飛ぶってどんな感じなのか、ぜひ体験したいと思ったのです。空気を温めることで浮力を得て、風に乗り、風が吹く方向へ移動する熱気球。舵やブレーキがなく、調節できるのは高さだけという、なんとも「風まかせ」な感じにスリルとアドベンチャーっぽい魅力を感じます。
地方で開催されるバルーンフェスティバルに行くと、日本各地にたくさんのバルーンクラブ・チームがあることを知って驚きますが、実は2020年、日本で初めての熱気球観光フライトが日本熱気球事業協会の認可のもとに始まっています。
その観光フライトを最初に始めたのがJBS(ジャパンバルーンサービス)で、日本で1つしかない10人乗りの熱気球に乗せてもらいました。
本州以南最大のヨシの原っぱが広がる渡良瀬遊水地は、1年中熱気球を飛ばすことができ、スカイダイビングなどのスカイスポーツも盛んにおこなわれています。ただ、安全第一ですから、雨や雪はもちろん、風が強かったり、霧などで視界が悪い場合は飛ばしません。
熱気球が飛ぶのは風が穏やかな時間帯。日の出前の凪の時間を狙って、何台もの乗用車が集まってきました。朝5時過ぎ、月が煌々とさえわたり、手袋と帽子がないと厳しい寒さのなか、ついに念願の時が!
同乗された方のなかには、上空から見える景色をぜひ動画に収めたいと言う人や、空の魅力にはまり何度となくフリーフライトに来ている人もいました。みなさん寝不足のはずですが、空を飛べるうれしさからか、テンションが高い!
熱気球体験は、大きな風船の部分、「球皮(エンベロープ)」と呼ばれる袋に、バーナーで加熱した空気を入れるところから見せてくれます。
球皮は驚くほど巨大になっていきます。球皮部分の体積は7000立方メートル前後。膨らました状態で、横幅は約25m、高さはバスケットの下から球皮のてっぺんまで30mにもなります。
軽く丈夫なナイロン製ですが、球皮の重さは250キロ。これに籐で編んだバスケットや空気の温度を調節するバーナー、そのほかの機材と燃料ボンベと乗員を加えて、全体で1.5トン以上の重さを運ぶことができます。その重く大きな機材を準備する人たちの手際のよいこと。熱気球は仲間と力を合わせて初めてできるスカイスポーツですね。
パイロットは佐賀県出身の山下太一朗さん。日本で最も有名な気球のイベント「佐賀インターナショナル・バルーンフェスタ」を子供のころから見て育ち、今では世界選手権の代表選手というすごい人です。
いよいよテイクオフ!
気球は驚くほど静かに上空に上がっていき、乗ってきた車や人、近くの恋人の聖地「ハート池」はみるみる小さくなっていきます。気がつくと、360度の視界には東京の高層ビル群、日光連山の雪景色、そして薄―く富士山も! 最高高度は1000m。ときどきバーナーを吹く「ゴー!」という音以外は、平和な静けさが空を支配しています。
「風に乗っているときは、それに気がつかないものですよね」と山下さんの一言。まるで人生と同じです。
なんとも穏やかな時間で、自分が今どこにいるのかわからなくなる感覚。近くを飛んでいる別の気球を見て、「おー、こんなに高いところにいる!」とびっくりしました。
山下さんはというと、飛行前に天気図や予報を調べ、離陸前にも当日の風向きや強さを丹念に調べ、上空では常に地上と連絡を取り合いながら、熱気球を上下して進んでいきます。
風を読みながら、行きたい方向の風に乗って約1時間のフライト。夢心地の時間でした。
最後は、乗客、スタッフ、熱気球を見学に来ている近所のご家族も全員で球皮の空気を抜き、布団袋ほどの大きさの袋にしまいました。このみんなで力を合わせての体験もまた別の楽しさがありました。
「お客様のなかには、上空で突然プロボーズを始める方もいれば、70歳を過ぎてから、パイロットの資格を取りたいと訓練に来た方もいます。日本でももっとたくさんの方が熱気球に親しんでほしいと願っています」と語るのは、JBS社長の町田耕造さん。
1969年に日本で初めて有人熱気球イカロス5号を飛ばした梅棹エリオ氏の冒険物語を読んで感動し、中大探検部を結成し、自作の熱気球で富士の裾野を飛んで以来、日本の熱気球文化をけん引している方です。
ロマンあふれる熱気球の世界。私もはまってしまいそうです。
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)