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人生の幸福度を上げる「3つの柱」作家・橘玲に聞くAI時代の生き抜き方/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2023.05.21 16:00 最終更新日:2023.05.22 11:34
3年にわたるコロナ禍で、人と会うこともままならず、楽しみが制限されたせいか、メンタルが疲れている人が増えた気がします。目標や希望が持てない若い方は、人生の先輩が書いた幸せへの指南書を参考にされてはいかがでしょうか?
今回ご紹介するのは、『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)の著者、橘玲さんです。この本は、生活習慣からお金まで、コスパ(コストパフォーマンス)・タイパ(タイムパフォーマンス)・リスパ(リスクパフォーマンス)を考えることで、合理的に幸せになる方法を書いたものです。
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100円のコストで120円のリターンが得られればコスパは20%、200円のリターンならコスパは100%――今後の社会で生きるには、こうした考え方が必要なのかもしれません。
橘さんは、静岡県出身。早稲田大学ロシア文学科を卒業し、編集者を経て40歳で独立。デビュー作は、経済小説『マネーロンダリング』で、『言ってはいけない』(新潮新書)では新書大賞を受賞しています。
――この本を書こうと思ったきっかけを教えてください。
「成功法則本はなぜこんなにたくさんあるか、と疑問に思ったことです。成功する決定的な方法があるのなら、みんながそれを実行すればいいのだから、1冊で足りますよね。
その一方で、この本で人生が変わった、という人がたしかにいるのだから、まったく役に立たないともいえない。だとしたら、ある人にとって価値があることでも、他の人にとっては役に立たないのではないか。
成功するタイプを調べれば、頭がよくて外交的で楽天的、新しいことに興味を持つ人になるでしょうが、だからといって内向的な人に「もっと積極的になりなさい」とアドバイスしてもうまくいかないでしょう。自分に合った成功法則でないと意味がないのです。
日本の女性ファッション誌は、最初はスタイルのいい外国人モデルばかりが出ていました。でもそれだと、体型がちがうから同じ服を着てもぜんぜん似合わない。
そこで日本人モデルを使うようになり、さらに身近な読者モデルが流行しました。でも読モでさえ自分に合わないと気づいて、いまは自分に似たSNS発信者を探してフォローしていますよね。
メイクにしても着こなしにしても、それがもっともぴったりくるからです。同じように成功法則も、自分に似た人の経験や経歴を参考にパーソナライズする必要があるのです」
――この本では、人生を8つのパターンに分け、それぞれが欠けている部分を補い、幸せに近づくにはどうすればいいのか書いてあります。『金融資産(お金)』『人的資本(自分らしさ)』『社会資本(人とのつながり)』という3つの『幸福の資本』をいかに増やすかがポイントだそうですね。参考になったので、以下に列記させてください。
【幸福の資本がゼロ】
・貧困(お金、能力、人間関係がなにもない状態)
【幸福の資本が1つ】
・プア充(お金はないが、家族・恋人・友人はいる)
・ソロ充(専門職や充実した趣味に恵まれるが、貯金もなく友人も少ない)
・孤独なお金持ち(働かなくても経済的不安はないが、友人は少ないし、自己実現もできていない)
【幸福の資本が2つ】
・リア充(バリキャリ。友人は多いし、羨ましがられる存在だが、支出も多い)
・ソロリッチ(資産形成に成功したものの、独身で友人も少ない)
・マダム(夫の稼ぎに頼る。友人も多いが、自分の力で成功したわけではない)
【幸福の資本が3つ】
・超充(お金も自己実現も人間関係もバッチリの状態)
「幸福の資本」を増やしていけば、実際に幸せになれるということですが、橘さんご自身の若い頃はどうだったのですか?
「若い頃の話をすると、まったくの落ちこぼれで、大学4年の正月になっても就活もせず、深夜のマクドナルドで掃除のバイトをしていました。当時のマクドナルドは外資系の花形で、激務だけど高収入で知られていました。
ある日、朝の5時くらいだと思いますが、地域全体のマネージャーをしている30歳くらいのエリートが帳簿を見にスポーツカーで乗りつけてきたんです。
テーブルにコーヒーをもっていくと、私の経歴を見て、『君、早稲田なの? 就職決まってないならうちに来る?』と誘われました。びっくりして、『そんなことができるんですか』と訊いたら、『簡単だよ、俺が推薦すればいいだけだから。真面目に就活する学生より、君みたいに世間知らずの方が案外伸びるんだよ』と言われました。
あまりの激務に恐れをなしてその話はお断りしたんですが、すると、『とりあえずスーツ買いなよ。新聞で求人広告を見て、面白そうなところがあったら面接に行って、「一生懸命働きます」と言えばいいんだよ』と教えてもらい、そのとおりやったら、新橋の小さな出版社に入ることができました。
いまは『人的資本が大切だ』などと書いてますが、あのままだと大学を出てもアルバイト生活で、最底辺から抜け出せなかったかもしれません。その後、編集者として働き、物書きになれたのですから、ほんとうに感謝しています。若いときほど、人生はほんのちょっとしたことで変わってしまうんだなと思います」
――いまは昔に比べて、人生の指針がなくて困っている人が多いと思いますが、これについてはどうお考えでしょう?
「人生も投資と同じで『複利』で成長していきます。100投資したら100しか戻ってこないよりも、105になる取引の方がいい。こうした合理的な選択を積み上げていくことで、10年、20年とたつうちに人的資本に大きな差がついてくる。
会社に入って、言われた仕事だけしていて、気づいたら50歳になっていた。でも人生100年時代だから、残りはまだ半世紀もある。そこで『こんなはずじゃなかった』と思っても、取り戻すのはなかなか難しいでしょう。
だからこそ若い人にこの本を読んでほしいのですが、偉そうなことを言っていても、私自身、世の中の仕組みを真剣に考えはじめたのは、独立しようと思った35歳のときです。それまでは、金融市場の仕組みや税金のことなど、なんの興味もなかった。それでも何とかなったのだから、始めるのに遅すぎることはないと思います」
――AI時代が到来すると、さらに生き方に悩む人が増えそうです。
「“ユーディストピア” という造語を考えたのですが、これからの時代はユートピア(理想郷)とディストピア(暗黒世界)が同時にやってくるのだと思います。
一方では、驚異的なテクノロジーがさまざまな問題を解決してくれる。体中をナノロボットが巡回して、そのデータを解析したAIが、何を食べ、いつ運動すればいいか、教えてくれるようになるかもしれない。生きていくのに必要なことはぜんぶ機械がやってくれるので、働く必要もなくなる。
これがユートピアですが、それでも私たちは、ステイタスを求める競争をやめられないでしょう。人生のすべてを承認欲求に費やすことは、ほとんどの人にとって、ディストピアになるのではないでしょうか」
――そういう時代に私たちはどう生きればいいのですか?
「資産が増えるにつれてお金の価値はだんだん減っていって、日本の大学の研究では、金融資産1億円を超えると幸福感は変わらなくなるとされます。逆にお金が増えすぎると、人生の問題も増えていく。
SNS社会では、お金よりもフォロワー数のような “評判の価値” が重視されるようになる。初対面の人と会ったとき、かつてはブランドものの服や時計、高級車や豪邸で相手のステイタスを判断していましたが、いまではフォロワー数100万人超のインフルエンサーがユニクロを着たりしているので、外見では判断できません。
SNSは評判を数字で可視化するという、とてつもないイノベーションで、いまでは個人の価値は、SNSの評判でダイレクトに判断されます。イーロン・マスクは、10兆円を超える個人資産ではなく、1億人のTwitterのフォロワーがいるからこそ、あれほど注目されるわけです。
いまは大きな評判をもつ人に大きなお金が集まってきますが、これは過渡期の現象で、やがて純粋な評判社会に移行していくでしょう。それと同時に、一人ひとりは、よりばらばらになり、人間関係を自由に選択するのが当たり前になっていくではずです。
この変化はすでに始まっていて、最初は会社に入って仕事を覚えるとしても、30代、あるいは40代で独立してフリーエージェントになり、SNSの評判でいろいろな人とつながって、プロジェクト単位で仕事をするようになっている。実際、シリコンバレーでは50代の会社員なんて考えられないですよね」
――勉強になりました。最後に、橘さんご自身の今後のプランを教えてください。
「肩書は作家なのに、実は小説が少ないので、次は国際金融小説を書かねばと思っています。この分野はあまりやる人がいないので、ブルーオーシャンなんですよ。ライバルが少ないニッチを探して、そこに人的資本を一極集中することをいつも考えています(笑)」
■幸せな人生のための3つの柱(最適戦略)
(1)金融資産
経済的に自立できれば、金銭的な不安から解放され、自由な人生を手にすることができる
(2)人的資本
子供の頃のキャラを活かせる天職を見つけることで、本当の自分として自己実現できる
(3)社会資本
身近な人たちとの愛情空間(家族や友人)と、お金を介した人間関係である貨幣空間(習いごとやサービスなど)を分けて考える
1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も
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