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この夏の京都キャンペーンは「仏像」空也上人像を見て心やすらか/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2023.05.27 17:08 最終更新日:2023.05.27 17:18
いま、東京駅八重洲中央口を出たコンコースに、毎日人だかりができています。いちばんのお目当ては「手のひら空也上人」。高さ7センチほどの空也上人像のオリジナルアクリルスタンドとキーホルダーが、数量限定で用意されるのです。自由に持ち帰りできますが、毎回10分もたたないうちにさばけてしまいます。
口から仏像を出した独特のスタイルのこの空也上人立像は、歴史の教科書に必ず掲載されるほど有名です。案内には「※転売禁止、出品禁止物」と明記されていますが、メルカリなどにはすでに数多く出品されています。
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会場には、「ご当地空也上人展」と称して、47都道府県バージョンの空也上人が出現したり、空也上人立像の実寸大模型や「顔はめ」パネルもあって楽しめます(6月18日まで)。
実はこれ、京都の観光キャンペーン「そうだ 京都、行こう。」の一環。2023年の夏のテーマは、「六波羅蜜寺」にある「空也上人立像」をフィーチャーした「あなたはどの仏像から入りますか?」で、9月30日まで実施する予定です。
展示されているご当地空也上人は、それぞれのお国言葉で「そうだ 京都、行こう。」と言っています。たとえば、「んだ 京都さ、えぐべ。」(宮城県)、「そーじゃ 京都、行こー。」(大分県)などと、空也上人が諸国をめぐり人々に南無阿弥陀仏を説いたという歴史からインスパイアされたとのこと。
キーホルダーを手に入れ、いろいろ見ていたら、やっぱり本物の空也上人に会いたくなりました。そうだ! 京都に行こう!
この季節の京都は修学旅行シーズンのようで、あちこちに学生服が目立ちます。自分の中・高校生時代の修学旅行を思い出してみると、バスで名刹をめぐり、空也上人立像のある「六波羅蜜寺」も拝観したはずですが、そのときは、友達と一緒におしゃべりしながら京都の町を歩くのが楽しかったなぁという記憶のほうが強く残っています。
久しぶりにこの像と再会しました。空也上人の偉業は相変わらずよく知らなくても、今回は、精神性の高さや人となりが像から迫ってきて、像の前からしばらく動けなくなりました。
寺のご住職にお話を伺うと、空也上人は醍醐天皇の皇子として生まれ、平安時代中期、念仏を唱えながら諸国をまわり、托鉢で得たものは貧しい人や病人に与え続け、また道路・橋・寺院の建設など社会事業にも関わりました。
天暦5年(951年)、京都に伝染病が蔓延したとき、村上天皇から疫病退散の祈願を命じられ、市中をまわって病人に念仏を聞かせました。宗派は持たず、ひたすら念仏を唱えれば必ず極楽往生できると、庶民に説いたといいます。
立像の口から6体、小さな仏像が出ているのは、「南無阿弥陀仏」と唱えた声が、阿弥陀如来の姿になった瞬間を表現しているそう。空也没後、約250年たった鎌倉時代、仏師運慶の四男・康勝の作とされます。
像は命を宿しているようにリアルで、上人への尊敬の念が伝わります。音が形として表されている像は、世界にも他にほぼ例がありません。
口の中に2つ穴があいているそうです。長い年月の間に、修復されながら現代まで守られてきたに違いない人々の信仰心にも心が動かされました。
ご住職が「信仰の入口はなんだと思う?」と問われました。答えられずにいると、「それは仏様や神様を拝もうと思う気持ちでしょう。次に行動として現れるのは、合掌する。次はお経を読む」と仰いました。
その後は、写経、仏像を作る、お堂を建てる、自分が僧侶になるなど段階が限りなく上がるようですが、自然と空也上人の像を拝んでしまう自分を発見して、それは像の素晴らしさなのか、あるいは、私にも少し信仰心があるのか……それはわかりませんが、心が落ちつくよい時間をいただきました。
修学旅行といえば、国宝・三十三間堂も定番ですね。文永3年(1266年)、後嵯峨上皇により再建されたこの寺には、千手観音座像ほか1000余体の国宝の像が納められています。この荘厳な空間は圧巻で、子供のときは自分に似た観音様を探した覚えがあります。
堂内の1000体の観音像の正式名称は、「十一面千手千眼観世音菩薩」といい、困っている人々を救うために、万人を観察し、万象を見透かし、もろ手をさしのべ、万策を講じて人を救ってくださるお慈悲の象徴です。
観音像の掌にはそれぞれ「眼」がついていました! また、観音像の頭頂につけられた十一面は、それぞれ表情が異なることも初めて知りました。ちなみに後ろ正面に位置するのは「暴悪大笑面」。お顔はほぼ見えませんが、なんと大口を開けて笑っているのだそうです。
ご住職の解釈は、こうです。
「苦しいとき、悩んでいるとき、笑って救われることもあれば、怒って救われることもあります。観音様はさまざまなお顔で、いつでもどこでもみなさんに寄り添い、救ってくれるのです」
久方ぶりに見る仏像は、ただただ新鮮で、もっと深く知りたくなりました。東寺にある「帝釈天騎象像」や永観堂禅林寺の「みかえり阿弥陀」など、おすすめはたくさんあります。
どこも緑が目に鮮やかで、爽やかな京都。今はとくにお出かけに最適です。
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)
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