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都内の国宝建築は2つだけ!高島屋も三越も重要文化財!建築めぐりでお金をかけない趣味を/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.25 16:00 最終更新日:2023.09.02 23:10
コロナ禍が明け、街の混み具合も戻ってきました。週末はどこへ行くにも混んでいて、お金もかかります。こんなときには、人混みを避けた無料の “名建築めぐり” はいかがでしょう。今回は、建築史研究家の矢野和代さんに気軽に行けて楽しめる国宝・重要文化財の建物をご紹介いただきました。
矢野さんは東京都杉並区出身。小さい頃から、お洒落をして素敵な建物へ出かけることが大好きでした。産能短大を卒業後は、百貨店でパソコン売り場に配属されます。その後、大手電機メーカーのテクニカルライターとしてマニュアル作成に従事し、52歳で退社。
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好きな建築を学ぶため、武蔵野美術大学で学芸員の資格を取得し、これまで国内外500棟以上の建築を見学しています。
――矢野さんが建築史研究家に転身されたきっかけは?
「若い頃から古い旅館に泊まるのが好きだったのです。27歳のとき、江戸時代の旅籠に惹かれ、島根県松江市の『八雲本陣』に宿泊したのが最初でした。松江藩主が領内を巡視するときに本陣となった建物です。大正天皇、昭和天皇をはじめ、文人も訪れた旧家で、重要文化財です。
私は同じ建築を、日付を変え時間を変え、何度も見て歩きます。初めて行くときは胸の高鳴りを感じますし、事前に調べた資料と現物との確認作業に忙しい。2回め以降にようやく余裕が生まれ、本当に味わうことができるのです。何度も通うと、ガイドさんから『この仕事につきませんか?』とすすめられることもあります」
――特に好きなのはどのような建物ですか?
「特に好きなのは、江戸時代の住宅ですね。奥方が、どこの家からのお輿入れだったか、その上下関係が御殿、居宅には如実に表れるんです。また、女中部屋を観察するのも好きです。江戸時代、明治時代までは封建社会そのものですが、大正時代以降、待遇が悪いと、女中のほうが出て行く。そのため、明るい部屋を用意したり、昔ほどぎゅうぎゅう詰めではなくなったりと変化が見てとれます」
――都内には、国宝の建物が2つしかないそうですね。
「はい、ひとつは港区にある『迎賓館赤坂離宮』です。2009年に国宝になりました。もうひとつが、東村山にある『正福寺地蔵堂』です。室町時代中期の1407年に建てられました。都内にこんな古い時代の建物が残っているなんて、驚きではないですか?」
――こちらの建築の見どころを教えてください。
「ピンと跳ね上がるように作られた軒の反りです。この正福寺地蔵堂は、とても大陸的な禅宗様を代表する建物です。鎌倉にある円覚寺・舎利殿と勘違いされる方も多いですが、なぜか東村山にポツンと建っているんです。実は、東村山駅の東側を走る府中街道が鎌倉街道の上道(かみつみち)だったんです。有事の際、幕府の御家人たちが『いざ鎌倉』と馳せ参じた道です。この付近に、当時の有名な宿場町だった久米川宿があったと推定されています。
正福寺には、北条時宗が鷹狩りのとき病気になり、夢枕に出た地蔵菩薩が丸薬をくれて快癒したという伝説があります。それで開創されたのですが、時の権力者が、重要な道路の、重要な場所に寺を作ったわけです。こういう建築は、なぜそこに建てられたのかを考えると、興味が深くなります」
――矢野さんは、『隠れた名建築ぶらぶら歩き ひとり気ままに見て回る』(光文社知恵の森文庫)などの著書がありますが、建物を見る以外にも楽しみ方があるのでしょうか。
「私は茶室をレンタルして女子会を楽しんだりすることもあります。着物で行くと映える写真が撮れますよ。おしゃべりして疲れたら、誰も見ていないので横にもなれますしね(笑)」
――ほかに、気軽に楽しめるおすすめの重要文化財を教えてください。「たくさんありますが、行きやすいところをご紹介しますね。
●金剛寺不動堂
日野市にあり、高幡不動という駅名にもなっている有名なお寺。1342年建造。土方歳三の菩提寺
●東京駅
現役駅舎で重要文化財に指定されたのは、東京駅と九州の門司港駅の2カ所だけです
●日本橋高島屋・日本橋三越本店
どちらも見学ツアーが開催されています
●日本橋(橋梁)
東京オリンピックの前年(1963年)に橋の上に高速道路がかぶってしまいましたが、2040年には全面撤去の予定です
●旧前田家本邸
イギリスに駐在していた第16代当主、前田利為が、昭和4年に建て、帰国後に住んだ大邸宅
●明治生命館
5層を貫くコリント式大オーダーが、10本並んでいます。なかに入ると、イタリア産大理石をふんだんに使った優美な空間に溜め息をつくことでしょう。
●黄林閣
江戸後期に建てられた旧村野家住宅。昭和5年に、東久留米市から所沢市に移築されました
このあたりが初心者にもおすすめです。建築めぐりは、外観を見に行くだけならお金もかからないし、どこへ行っても、その土地の歴史的な建物や珍しい建築を探すことができますから、誰でも楽しめると思います」
みなさんのご近所にも、素敵な建築がたくさんあるのではないでしょうか。お金をかけずに楽しめる建築めぐりは、今の時代に合った趣味かもしれません。
1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も
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