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宮﨑駿『君たちはどう生きるか』アオサギにひかれて躍動感あふれる “新世界” に旅立ちたい/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2023.07.15 16:00 最終更新日:2023.07.16 10:32
宮﨑駿監督の10年ぶりとなる長編映画最新作『君たちはどう生きるか』(製作:スタジオジブリ)が、7月14日、全国441館で公開。私も待ちきれず、初日の初回に出かけました。
今回は作画インから公開までの足掛け7年間、作品に関して表に出た情報はごくわずかで、原作・監督・脚本を宮﨑監督が担うことに加え、公開日、タイトル、アオサギのポスタービジュアルのみ。あらすじやキャストも一切発表されず、宣伝もほぼしないことで、逆に注目が集まっています。
7月10日の「野中くん発 ジブリだより」2023年7月号には、とにかく「まっさらな状態で映画を観て欲しい」という製作サイドの思いがつづられました。
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私が向かったのは、東京・日比谷のTOHOシネマ。スタジオジブリ作品として初めてというクリアな映像と優れた音響効果を楽しめるIMAX上映で鑑賞しました。
『君たちはどう生きるか』は、宮﨑駿監督12本目の劇場用長編映画にして、前作『風立ちぬ』以来の作品です。監督は2013年9月に長編アニメーションからの引退を宣言されていましたが、今回の再登場を待ちわびたファンは多く、館内はほぼ満席。始まる前から、静かな熱気のような空気があたりを覆っていました。
情報をほぼ出さない戦略は徹底しており、映画が公開されても、劇場パンフレットはまだ販売されていません。その旨の案内が張り出されていましたが、「パンフレットはいつ手に入るのか?」とショップで尋ねている人が何人もいました。上映劇場および通信販売にて、後日発売予定だそうです。
本作のタイトル『君たちはどう生きるか』は、『日本少国民文庫』(編纂・山本有三)の最終刊として、昭和を代表する知識人として知られる吉野源三郎が、1937年に発表した児童向け小説の題名と同じです。宮﨑駿監督は子供の頃にこの本を読んで大変感銘を受け、それで今回、自作のタイトルに「借用」しました。
映画の中身は吉野の小説とはまったく別で、宮﨑監督の完全なオリジナルという情報は伝わっています。
しかし、監督がインスパイアされた内容が映画のどこかにあるに違いない! そんな思いで、私はこの歴史的名著を漫画化した『漫画 君たちはどう生きるか』(2017年、漫画・羽賀翔一、マガジンハウス)を読んでから映画を観ました。
ご参考まで、『漫画 君たちはどう生きるか』は、「コペル君」というあだ名をもつ、中学2年生の本田潤一君の成長物語です。父と死別し、母と2人で暮らす彼が、日々の生活で直面するさまざまな問題に対して、感じたこと、発見したこと、悩んだことなどを、コペル君の母親の実弟である「おじさん」に話します。おじさんはコペル君に宛てたノートという体裁で、「ものの見方」を語るメンター。それぞれの場面で、どのように生きていくべきか、人間としてあるべき姿を、コペル君が自分で考えながら進んでいくという話です。
一方、映画は、激化する太平洋戦争のなか、母を亡くした少年「牧眞人」が、父の新たな妻となる母の妹が住む疎開先で、疎外感や鬱屈から離れ、人間の言葉を話すアオサギに導かれ、異世界への冒険を経て成長するファンタジーでした。
確かにふたつの話は同じではありませんが、根底に流れる家族の絆や愛、少年が勇気や決断によって人間として成長していく物語は共通し、それが宮﨑監督のメッセージなのかなぁと感じました。宮﨑監督が感動したほどの一冊も、漫画ならさっと読めます。映画の前に一読してから映画館に行くのもおすすめの鑑賞法です。
さて、映画はどこまでもジブリの美しい世界に引き込まれます。多彩なキャラクターがなんとも魅力的です。
宮﨑駿監督の絵コンテを、躍動感あふれる描写で具現化したのは作画監督の本田雄さんはじめ優れたアニメーターのみなさん。数多くのジブリ作品の美術監督を担当する武重洋二さんたちが作り上げるリアル以上に美しい風景描写。優しい音色のBGMは、『風の谷のナウシカ』から前作の『風立ちぬ』まで、宮﨑監督の長編作品の音楽をすべて担当してきた久石譲さんです。
ストーリーに自然に観客を引き込んでいく安定した声優陣のセリフ回しは、どこかで聞いたことのある声かなと感じてはいましたが、エンドロールのキャストを見て納得! 主人公の「眞人(まひと)」には俳優の山時聡真さん。眞人の父に木村拓哉さん、眞人の新しい母となる夏子に木村佳乃さんといった具合です。
主題歌である米津玄師さんの「地球儀」も宮﨑ワールドです。宮﨑監督がFoorinのパプリカをラジオで耳にしたのをきっかけに白羽の矢を立てました。米津さんは子供の頃から宮﨑映画を観て育ったそうです。
日を追うごとに、映画の内容が明らかになってしまうでしょうから、まずはみなさん、早めに映画館に行ってみてくださいね。
内容はさておき、個人的なモヤモヤがひとつ。今回はいろいろな鳥が登場します。いちばん意外なキャラはあのアオサギ。きっと映画を観て驚くでしょう。加えて、セキセイインコもペリカンも登場します。この鳥たちには何か意味があるのか、誰か教えて! 私の想像力の範囲では答えが出ず……でも、気になって仕方がありません。それも宮﨑映画にはまる理由かなと、モヤモヤが募る週末です。
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)
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