「気がつくと裸で、男性の相手をさせられていて、動画や写真も撮られていました。一気飲みで泥酔させられ、嘔吐して意識がもうろうとして、どういう経緯でそんな状態になったのか記憶がないんです」
衝撃の告白をするのは、関東在住の30代女性A子さんだ。彼女が本誌に明かしたのは、まさに「大衆演劇の闇」だった。ある大衆演劇団に、9年間もの間、残忍な性加害を受けているのだという。
その劇団の名を聞くと、A子さんは「橘菊太郎劇団」と怒りを込めて明かした。彼女は、なぜこんな目に遭わなければならなかったのか――。
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もともと大衆演劇は、全国各地にある演芸場やスーパー銭湯などを活動の舞台にしている劇団だ。各地の劇場を、基本的に月替わりで全国を回る。
その特徴は、役者と観客の距離が近いこと。舞台の前には、観客が座る座布団と長机などが置かれ、役者の息遣いを感じるほどの近さで観劇することができる。
「橘菊太郎劇団は1963年ごろに創立された老舗劇団です。現在、総座長を二代目の菊太郎氏が務め、三代目座長である大五郎氏は九州演劇協会の会長を務めるなど、九州演劇界では名門です」(演劇関係者)
A子さんが、橘菊太郎劇団を最初に観劇したのは9年前のことだった。
「私がスーパー銭湯に行ったとき、たまたまそこで演劇をやっていたのが、橘菊太郎劇団でした。実際に見ると、とてもきれいで驚きました。観劇後にその場で食事をしていたら、役者さんから『お客さんたちを集めて食事会をするので、あなたも来てみないか』と声をかけられたのです」
A子さんはその後も何度か橘劇団を観に行き、その後の食事会にも参加するようになったという。
「食事会は、劇場でおこなわれることもあれば、別の場所を貸し切って30~40人で食事することもありました。何度か行って総座長の橘と親しくなってくると、今度は『二次会に来ないか』と誘われるのです。ところが、そこからすべてが変わってしまいました……」
二次会の場所は、菊太郎らが常連で使う薄暗いスナックだった。二次会に参加したのは、限られた同劇団の “太客” だったという。
「大衆演劇では、客が役者におひねりを渡すことがよくあります。カネ払いのいい客が劇団にはついていて、太客と呼ばれています。
二次会の店では、テキーラや焼酎などの一気飲みばかり。みんなが煽ってくるので、仕方なく飲まされます。私はお酒が弱いほうではないし、お酒を飲んで嘔吐したこともなかったのに、一気飲みばかりとはいえ、不自然なほどに酔ってしまうんです。
気持ち悪くなって嘔吐して……もうそこからの記憶がありません。その後、気がつくと、ホテルのベッドで、私は裸で太客の男たちにまわされていました。
私はどうやってホテルに来たんだろう、なんでこんなことをさせられているんだろうと思いながら、フラフラの頭でされるがままになるしかありませんでした」
酩酊状態で凌辱されたA子さん。だが、事態はこれで終わりではない。翌朝、菊太郎はA子さんにこう言い放ったという。
「『お前は酒癖が悪いな。自分から誘ってきたんだぞ』『それにお前が店で吐いて汚してしまったから、俺が代わりにお金を払っておいた。50万円ぐらいだ。あとで借用書を書いておくからな』『それに動画と写真も撮ってある。これがお前だよ』。橘はそう言って、私の全裸写真を見せました。私はびっくりして言葉を失いました」
その日はそれで解放されたA子さん。本誌が、脅しに使われたという写真を確認したところ、複数の裸の男性がA子さんの体をもてあそぶ様子が写っていた。なかには、まさに挿入されている場面の写真もあり、橘自身が行為に及んでいる様子の写真もあった。
それ以降、A子さんは強制的に呼び出され、太客の相手をさせられるようになっていった。月に一度、多いときには週に2~3日連続で呼ばれることもあった。奴隷のような関係が、9年間も続いているという。
だが、現在に至るまでA子さんは警察に相談に行くことができなかった。その理由を問うと、橘の卑劣さが浮かび上がってきた。
「変なクスリを盛られているようで、『警察に行ったらお前が捕まるよ』と脅されて。怖くて警察にも相談に行けませんでした。
それに、いつの間にか私の免許証をカバンから取り出して、私の実家を把握していたようです。菊太郎は『呼び出しても来なかったら、実家や職場にこのことを言ってもいいんだぞ。借用書もあるし、写真や動画をばらまくぞ』と脅されました。
嘔吐したのも一回だけではありませんから、借用書の合計は1000万円になっているとも言われました。『お前には呼び出しを断ることなんかできないんだよ』と言われ続けたのです。
家族にも言えないし、家族に迷惑はかけられない。こんな状態で職場も続けられず、会社を転々とするようになりました」
■もう一人の被害者
じつは同様の被害者はA子さんだけではなかった。本誌は、関東在住の20代のBさんにも話を聞いている。Bさんの場合も同様で、観劇に行って親しくなった後に、飲み会に誘われ、はめられていった。
「私の場合、関西に呼び出されることもありました。しかも、いつも『自腹で来い』という。それぞれの地方で “太客” がいて、その地方ごとに、私と同様に相手をさせる女性を抱えているようです。私は、女性が足りないときに呼び出されるみたいです。私たちは菊太郎にとっては、“太客” をつなぎとめる物でしかありません」
9年もの間、性奴隷の扱いを受けてきたA子さんらの精神状態を、犯罪心理学者の出口保行氏は次のように話す。
「被害女性は、写真をばら撒くとか、多額の弁償をしなければならないなど、さまざまな手段で脅されたことで、心理的拘禁状態に陥っていると思われます。
そうすると、日常生活は自由に送れているようでも、精神的には拘禁されており、自由意思で判断することができなくなります。『プリゾニゼーション』という言葉があり、刑務所化するという意味です。
被害女性らは、9年間こうした状態にさせられていたということでしょう」
また、社会心理学者の碓井真史氏はこう分析する。
「今回の件で、被害女性に何か非があるかと言えば、まったくありません。
性加害者は、被害女性が警察に駆け込まないように、あの手この手で脅しをかけます。真面目に生活していた被害者は、1回でもこうしたことがあると親や友達には相談できない。すると、次第に周囲から孤立し、マインドコントロールしやすくなる。
『私が我慢すれば、このままの生活が送れるし、仕事もできる。親には心配かけたくない』と思い続け、警察や弁護士にも相談できなくなります。何年も声をあげなかったのは、そうすれば、平穏が保てると思ったからでしょう」
■被害者は少なくとも10人以上
今回、こうした実態が明らかになったのは、女性の就労支援をする内閣府認定のNPO法人に彼女らが駆け込んだことがきっかけだった。NPO法人の理事長がこう話す。
「彼女らが、仕事を探してうちを頼ってきたのが5年前。ところが、頻繁に職を変えるのでどうしたのか聞いてみると、『いつでも急にお休みを取れる職場はないか』というのです。そんな職場はないので、いったいどいうことか聞くと、彼女らがこうした性被害に遭っていることを打ち明けてきたのです。
これは明らかに犯罪です。でも警察に被害届を出すことを当初は拒んでいた。橘に脅され、洗脳されているような状態なのです。
こうした女性が少なくとも10人以上はいることがわかりました。まずは一刻も早くこの状態を抜け出させないといけません。女性たちは一人だと怖いというので、今後は、集団で訴訟を準備します。また、警察へすぐに被害届を出すことにしています。こんな卑劣な行為が、いまだにおこなわれていることに驚愕しています」
刑事告訴について女性らの依頼を受けた弁護士も、こう話す。
「女性らの訴えを聞くと、不同意性交罪や暴行罪、脅迫罪、強要罪などで刑事告訴することができると思います。しかも、被害を受けた女性が何人もいることは確認できています。急いで告訴状を提出したいと思います。橘氏が逮捕される事案だと認識しています」
これらの証言をもとに、強制的な呼び出しや脅迫、性加害などについて橘菊太郎劇団に質問状を送ったところ、「いずれの事実もありません」との回答だった。
警察に被害を届け出る準備をしているいまも、橘から呼び出しを受けているという彼女たち。「大衆演劇」とは名ばかりの鬼畜の所業を、即刻、やめさせなければならない。
( SmartFLASH )