芸能・女子アナ
映画監督・崔洋一が追悼「大杉漣さん」過酷な撮影も厭わず…
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2018.02.28 11:00 最終更新日:2018.02.28 11:00
2月21日、大杉漣さん(享年66)がロケ先で倒れ、突然この世を去った。急性心不全だった。
『犬、走る DOG RACE』(1998年)などでメガホンをとった崔洋一監督(68)が振り返る。
「遠藤憲一演じるヤクザに彼がシメられるシーンで、千葉の産業廃棄物処理場の、濁った水たまりの中に押しつけられ、いたぶられるところを撮影した。映像ではわかりにくいけど、極寒だった。ものすごく辛い撮影。上がって1時間以上、彼の体の震えが止まりませんでした。壮絶でしたよ。
彼が倒れるところをロングショットで撮ったんだけど、『無意識のうちに倒れていた』って言ってた。後に『過酷だった』って言ってたけど、撮影中は苦労をいとわない人だったし、こちらも苦労させているっていう気にならない。不思議な人だった」
大杉さんの地元・徳島県でのトークショーに、誘われて一緒に出演した。
「そのときは、彼が高校時代から通ってるラーメン屋に行ったり、地元の友人とドンチャンやったり。仕事で行っているのに、旧友と旅をしている感覚にさせてくれたよ」(崔監督)
大杉さんの父親は中学校の校長を務めていた。18歳で家を出て、アルバイトと芝居に明け暮れていた大杉さんの演劇を、一度だけ観に来たことがある。
終演後、楽屋に来たのは母親だけ。ロビーでタバコを吸っていた父親は「俺にはさっぱりわからんな」とだけつぶやいた。後に大杉さんはスポーツ紙の取材に、「『頑張れ』とも言われなかった。それが親父の愛情だと受け取った」と話している。
昔気質の父親の存在が、バイプレイヤー・大杉さんを育てた。
「人に毒をまき散らすことはしない。気がつくとひょろっといる。主役の俳優が年下でも、きちんと立てる。主役を気持ちよく演じさせる立ち居振舞いが、自然にできる。それでいて、主役を食うところは食いに行く。愛される人だった」(崔監督)
いつも鞄は、進行中の台本が10冊以上入ってパンパンだったという。名バイプレイヤーは、みんなの心の中では主役だった。
(週刊FLASH 2018年3月13日号)