「今昔庵」が入居していたTMCを運営するのは、東宝の子会社である国際放映株式会社。開店当初は、初代オーナー・A氏の会社と国際放映との間で、賃貸借契約が結ばれていた。
フジテレビがTMCから撤退した翌年の2008年に、オーナーが2代目のB氏に交替。さらに2015年からは、B氏の会社の代表取締役に井上博之氏(52)が就任し、「今昔庵」の3代目オーナーとなった。井上氏は語気を強めてこう語った。
「国際放映は、B氏から私への引継経営をいったん許諾したにもかかわらず、2015年5月下旬、突然賃貸借契約の解除と立ち退きを要求してきた」
2015年に始まった裁判は、一審地裁、二審高裁とも国際放映が勝訴。井上氏が続ける。
「理由は、国際放映が私のことを『全く知らない人物』だから信用できないということだった。2015年2月ごろから、国際放映の担当役員とは何度も会って相談しているのに、急に知らない人物だとは、納得できない。
賃料未払いも理由に挙げられたが、私がオーナーになってから2カ月分の賃料は受領された。そして私は5月上旬に、賃料と共益費等の約63万円を振り込んだ。でもお金は返金されたんだ。以降は請求書が来ないままだ。
A氏が店舗を譲渡する際、『B氏はA氏の姪』と、国際放映に噓をついていたことも裁判で問題になった。じつはこれは、国際放映のX取締役(当時)も知っており、偽装に加担したと聞く。結局、国際放映は私を経営から外したかったのだ」
本誌はA氏を訪ねた。「今昔庵」譲渡の話を切り出すと、「弁護士に聞いてくれ」と一切回答せず。続いてX氏に話を聞いた。
「A氏には会ったことがありますが、B氏が姪でないことは、裁判で初めて知りました。なぜ私の名前が挙がっているのかまったくわからないです」
一方、国際放映は、本誌の取材に次のように回答を寄せた。
「井上氏と面談した事実はありますが、本賃貸契約を存続させるとの判断はできませんでした。返金をしたのは、入金の際の名義が、井上氏の経営する別の会社だったため。契約相手からの入金ではないので、いったん返金しましたが、その後受け取りました。
井上氏が主張するような、当社が『引継経営を承諾した』事実はなく、判決でも先方の主張は認められていません。『今昔庵』の今後の運営は未定ですが、施設をご利用になる皆様に、安全、快適で利便性を重視した空間を提供していきたいと思います」
裁判は最高裁までもつれたが、2018年11月、国際放映が勝訴。2月8日をもって、「今昔庵」はTMCを立ち退いた。強制執行当日、3台の3tトラックがやってきて、ソファや冷蔵庫、流し台までが次々と積み込まれていった。
「裁判は終わっているから、私は『今昔庵』から外れる。それでも声明文を出したのは、福田マスターに店を残してあげたいからだ」(井上氏)
はたして「今昔」物語の行方は−−。
(週刊FLASH 2019年2月26日号)