♪さて、さて、さては大江戸玉すだれ~という口上は、日本人なら誰でも耳にしたことがあるかと思いますが、今回ご紹介するのは、売れっ子放送作家からプロの玉すだらーに華麗なる転身を遂げた佃川松芭さんです。
松芭さんと最初にお会いしたのは、今から20年ほど前のこととなります。
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当時、私は会社をやめてヒマだったため、日経新聞の求人広告に経済チャンネルのディレクター募集と書かれているのを発見し、その局に番組企画書を送ってみたのです。
結果、毎回20人の女子がお金に関してトークする『お金に恋して』という番組が立ち上がりました。松芭さんは、出演者として雛壇に座り、放送作家ならではの冴えわたるトークで番組を盛り上げてくれていました。
ところで、どうすれば放送作家という職業につけるのか、ご興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
松芭さんは、学生の頃からTBSラジオで電話オペレーターのバイトをしていたのですが、こなしきれないほどの仕事を抱えていた番組の作家さんに頼まれ、リサーチやクイズ番組の問題作りを手伝っていたそうです。
4年生となり、通信会社から秘書としての内定もいただいていたのですが、その頃にはすでに作家としての仕事が忙しく、就職せずにそのまま作家事務所に入ることとなりました。
その後もさらに仕事は増え続け、民放のすべてのチャンネルに出入りするようになります。多いときには6番組も掛け持ちする売れっ子作家に成長しましたが、体力の限界を感じ、まったく異なる分野へのキャリアチェンジを試みたのです。
松芭さんが玉すだれに出会ったのは、ある番組のロケハンでした。取材に来たはずが、玉すだれの仕組みに興味を持ち、そのまま習い始めて今に至るそうです。現在は一般社団法人「大江戸玉すだれ」の副理事長に就任されています。
今日は、玉すだれの稽古場の一つである、江戸川区の新川さくら館にお邪魔しました。
「玉すだれは最もハードルが低い日本の伝統芸能。少し習えば誰でもできるようになりますよ」と言いながら、鳥居やお魚、しだれ柳と、一枚のすだれから器用にさまざまなモチーフを作り出していきます。
「日下さんもどうぞ」とすだれを渡されましたが、実は私は超不器用。松芭さんのように鮮やかにすだれを操るには特訓が必要のようです。撮影用に形を作ってから持たせていただきました。
「これまでにスイスの古城やNYのカーネギー・ホール、ウィーンの国立歌劇場など、海外各地でも玉すだれを演じてきました。小さな芸の大きな軌跡(奇跡)です」
11月29日には、国立演芸場で公演「笑馴染いENERGY」が控えているため、現在は仲間たちと稽古に励んでいらっしゃいます。12月になると、年末の宴会シーズンに入りますが、なにか一芸を身につけたいとお考えの方は、松芭さんの個人レッスンがおすすめです。
ちなみに、会社の忘年会で披露する際は、♪さて、さて、査定達成玉すだれ~と口上もビジネス仕様に変わります。演者も観客も明るい気分にさせてくれる、それが日本の伝統芸能、玉すだれなのです。
●日下千帆(くさかちほ)
1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社し、編成局アナウンス部に在籍。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。2012年より、東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当