大江キャスターは自身のツイッターで、1月いっぱい『WBS』を休むと発表。その理由のひとつに、「キャスターの働き方改革を進める会社の方針」をあげた。
大「6年間『WBS』のキャスターを続けてきたのですが、そのあいだにたまった “疲れ” のようなものを、まわりの方が心配してくれまして。
上司に、『しっかり体力を回復させるために、思い切って1カ月、休んでみてはどうか』と提案してもらったので、有給休暇と冬休みを合わせて、営業日でいうと18日間、休ませていただきました」
佐「私が、朝の番組に出るため夜中の3時に出社すると、大江はまだ会社にいたりするもんね〜」
大「アッコさんが来ると、『こんな時間! 帰らなきゃ!』って思うんです。それで、私が朝9時くらいに出社すると、今度は、まだアッコさんがいるんですよね(笑)」
佐「『さっき帰ったばっかりじゃない、ちゃんと寝てるの?』って、いつも心配してね。朝からの取材も現場から頼まれると、つい頑張っちゃうものだけど、『さすがに疲れがたまっているだろう』と思っていたの。今回きちんと休みが取れて、安心しました」
大「ありがとうございます。テレビ業界でも全体的に働き方改革が進んでいて、スタッフの皆さんは、働きすぎを防ぐため、シフトを組んでしっかり労働時間を管理しています。
でも、キャスターは月曜から金曜まで、同じ時間に画面に登場しますし、日中に取材にも行きます。さらには、土日に別の仕事が入ることも。気がついたら、テレビ局のなかでも、働き方改革が遅れてしまっていたんです」
佐「私も、月曜から金曜までの帯番組を担当しているけど、マーケットがお休みの日は『モーサテ』もお休みになるから。それに比べて『WBS』は、祝日も放送があるからね」
大「それで2月から、私は祝日にお休みをいただくことになったんです。1カ月の休暇中、代わりにキャスターを務めてくれた須黒(清華)アナウンサー、相内(優香)アナウンサーの頼もしい成長ぶりを感じられたので、安心してまかせられます。
やっぱり、組織として “持続可能” であることが重要だと思いますね」
休暇を取れる状態であっても、いざ取ろうとすると、さまざまなハードルがあるのも事実。キャスターという仕事ならば、なおさらだ。今回の休暇宣言に対する、周囲の反応は?
大「今回、お休みを取ろうとしたときには、さまざまなご意見をいただきました。休みを支持してくれる方が圧倒的に多かったので救われましたが、『いろいろな働き方を容認する社会にならないといけない』と痛感しました。
ある働き方をしたい、と思うのには、必ずなんらかの理由があるはずなんです。『それを汲み取ってあげられる社会になるといいな』って、経験して思いましたね。そしてなにより、私たち自身のマインドも変えていかないと。疲れ果てているのに、なぜかそれでもまだ働こうとする、みたいな……」
佐「そうそう。楽しいから働いちゃう(笑)。私たちは、馬車馬のように働くことが、よしとされた世代で、それが苦でもない。
でも、そんな世代が管理職になるんだから、それこそマインドを変えていかないとね。日本のさらに上の世代は、いわば、『モーレツ社員』が当たり前の時代だったでしょ? 上層部こそ、働き方改革の研修をしないと!」
大「『WBS』は、最初に勇気を持って休んだ方がいたおかげで、子供が生まれたら男性も、育児休暇を取ることが当たり前になっています。『ファーストペンギン』になるのはたいへんですが、誰かが経験していれば、『お前も休めよ』と言える職場になると思うんです。
上の意識が変われば、後輩たちの『休みたい』という声に応えられますし、新しいシステムの提言もしやすくなりますからね。そうやって、実際に休みを取った世代が上司になれば、さらに休みやすい環境になります」
佐「そうね。とくに女性の場合、産休や育休に入ると、『仕事という点ではおくれをとる、マイナスになる』と感じる人も多いし。復帰しようと思ったとき、前にやっていたことを途切れさせないようにする努力も、企業には必要なのかなって思う」
大「いま『モーサテ』に、秋元(玲奈)アナウンサーが週に2日、出演していますが、あれも働き方改革の一環なんですよね」
佐「そう。彼女は育休から復帰して、『子供が寝ている時間帯に仕事をする』というワークスタイルに挑戦している。
彼女の仕事中、つまり深夜から早朝は、夫が子供のそばにいて、番組が終わったら家に “とんぼ返り” し、出社する夫とバトンタッチ、子供に朝ごはんを食べさせて保育園へ、というウルトラCの働き方で。たいへんな挑戦だけれど、彼女は本当にとても頑張ってる」
大「『9時から5時じゃなければ働ける』という人は、たくさんいると思うんです。そういう方の労働力が、社会に加われないのは、非常にもったいないこと。まだ眠っている労働力を掘り起こすことが、景気回復にもつながるのでは」
自ら決めた長期休暇について、「意義深かった」と語る大江キャスター。ところで、長い休みは何をして過ごしたのだろうか?
佐「1カ月のお休みなんて、あっという間だったんじゃないの?」
大「そうなんですよ〜。最初に感じたのは、『私は仕事一筋になりすぎていて、生活の中のいろいろなものを捨てすぎていたな』っていうことです。家の中でくつろいで、家事をして、自分の住んでいるところを整えて……みたいな、ごく普通のことが、すっごく幸せでしたね。
平日に、家でご飯を作って、夫と夕食を食べる。結婚して6年になるんですが、初めてだったんです。もう、涙が出そうになるぐらい幸せなひとときで、『おうちごはん』って、こんな感じなんだって(笑)」
佐「歯医者にも行ったんでしょ? あと、人間ドックも」
大「はい。だから、けっこう忙しかったんですよ(笑)。歯医者さんは、ふだん『麻酔を打たれて、その日の夜、ちゃんとしゃべれなかったらどうしよう』って思って、控えていたんです。
そういえば、6年ぶりに平日に牡蠣を食べました。あたったら番組に穴をあけてしまうので、牡蠣は土曜日にしか食べなかったんです。その牡蠣を、平日に食べる背徳感たるや……(笑)。
ほかにも、ご飯をお鍋で炊いてみたり。大豆を夜中にゴリゴリ潰して、お味噌まで作っちゃいました」
佐「お味噌まで作ったの!?」
大「びっくりするくらい簡単で、おすすめですよ。10カ月かけて熟成させるんです。アッコさん、今年のクリスマスごろに出来上がるので、楽しみにしててください!」
佐「たしかに、仕事では秒単位でニュースを追っているので、10カ月待つというのは、真逆の作業よね。それもまた楽しいかも(笑)。休み中は『WBS』を見たりした?」
大「はい、でもリアルタイムで見ると、朝まで眠れなくなるんですよ。裏方の動きもわかるじゃないですか。だから、VTRを流すのが少し遅れただけでも、『頑張れー』って叫んだり。その様子を、横で家族がびっくりしながら見ているという(笑)。
どうしても視聴者目線になりきれなくて、朝の5時くらいまで目がランランとしちゃうんです」
佐「テレビ局で働いていると、番組を娯楽として見られないのよね。ニュースを見ては『この映像、うちでも撮っているかな』とか、バラエティを見ては『構成がうまいな〜』とか。職業病でついつい考えちゃう(笑)。
結局、キャスターとして番組に携わっていると、放送中は全部に目を光らせないと、コメントできないから、すごく疲れるのよね」
大「そうなんですよ。自身の発言の重みがわかるので、VTRの原稿も一言一句、すべて読み込んで、気になるところは議論して……。それを6年続けてきて、神経が擦り減っちゃった部分はありました」
佐「休みが明けてから、仕事の調子はどう?」
大「おかげさまで自然体に戻れたというか、肩の力を抜いて、仕事に臨めるようになりました。一度リセットして、自分の内面に意識を向ける機会ができて、よかったです。それに体が軽くなって、疲れにくくなったような気が。
仕事のパフォーマンスは、絶対によくなっていると思います。ずーっと働いてきてクタクタになってしまっている方は、自分と組織のために、一度、立ち止まってみてもいいかもしれません」
佐「新型コロナウイルスの騒動で、時差通勤やテレワークが、より身近になったのは事実。『このピンチを、働き方改革に生かそう』というのが、せめてもの前向きな考え方かもしれないわね」
大「1年前がそうだったように、来年のいまごろは、働くということへの考え方がガラッと変わっているかもしれません。それが、いい方向であることを願います!」
ささきあきこ
東京都出身 1992年、テレビ東京に入社。2014年から『Newsモーニングサテライト』(月曜〜金曜・午前5時45分〜7時5分)のメインキャスターを担当している
おおえまりこ
福岡県出身 2001年、テレビ東京に入社。『モヤモヤさまぁ〜ず2』などを担当後、2014年より『WBS』(月曜〜金曜・午後11時〜11時58分)のメインキャスターを担当
(週刊FLASH 2020年3月31日・4月7日号)