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いまだ死者ゼロ…ベトナムのコロナ対策に「国民の93%が満足」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.04.27 11:00 最終更新日:2020.04.27 11:00
イギリスの調査会社ユーガブが、2万7000人に対しておこなったアンケートによると、国のコロナ対策に対し、国民が最も満足しているのはベトナムで、実に93%にのぼった。日本は最下位の37%だった(4月20日現在)。
中国と長い国境を接するベトナムだが、実は、現在まで死者が1人も出ていない。いったいどのような対策をとったのだろうか。
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ベトナムは過去にSARSが流行した苦い経験を持ち、今回のコロナウイルスに対して素早い対応を見せた。
まず、武漢で最初の死者が出た段階で国境閉鎖や空港の使用を制限。1月半ばには関係機関や病院へ対応を指示し、早期発見と治療、隔離のための準備を始めている。
フック首相は1月30日に流行宣言を発令。この段階で、国内の患者はわずか6名だった。
2月にはコロナ対策のための委員会が組織され、WHOと国内700の病院をネットワークしたビデオ会議で専門知識の普及を促した。
次いで、啓蒙のためのウェブサイトと携帯電話用のアプリが作成される。公式アプリ「ベトナムの健康」は、大手通信企業「ビッテル」が6日間で完成させたもので、正しい医療情報や自己隔離の方法などを提供し、近くの病院を検索することも可能だ。
ユーザーは自分の体調を送信することで、国民の体調が、リアルタイムでデータベース化されていった。まもなくアプリで、感染者や濃厚接触者の居場所や移動状況もわかるようになる。アプリには、ベトナム国民向けだけでなく、ベトナム入国者向けも開発されている。
SNSに虚偽情報を流した人間には、罰金を支払うルールも策定し、5~6万円程度の罰金刑を課した。
こうした徹底した隔離政策の下、2月末には16名の国内患者全員が回復する。新たな患者が現れた3月には、流行第2波を宣言。3月末にパンデミックを宣言した。
4月からは国境を封鎖、海外からの飛行機は拒否し、“鎖国” 状態となる。モスクなどの宗教施設もロックダウン、集会を禁止し、社会的距離が義務化された。路線バスやタクシーは運休、鉄道の本数は制限された。4月16日から23日までは1人も新規患者が出ていない。
コロナに関する情報を国民に周知させたのが、軍隊や役人が一丸となった広報活動だった。「コロナの流行と闘うのは敵と闘うようなものだ」というスローガンの下、「ウイルスは共通の敵」というメッセージを強くアピール。世界的な手洗いダンス旋風を巻き起こしたのもベトナムだったが、もともとは政府が作成した啓蒙ビデオである。
マスクなどの生産に入るのも早く、いまではサージカルマスクや布マスクを1日に1200万枚以上作れるという。新たな流行に対応できるだけの生産体制を整え、大量の医療用品をカンボジアやラオスに寄付している。このように、早くから、医療用具の生産、空港・国境・学校の閉鎖、大胆なロックダウンを進めたことが功を奏した。一党独裁政権だからできたとの批判もあるが、とにかく政府の動きが早くて確実だったのだ。
今年、ベトナムはASEANの議長国だった。先日、日本、中国、韓国の3カ国と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の首脳をテレビ会議でつなぎ、感染対策で基金を設立することで合意した。コロナ対策に成功したことで、国家間のリーダーとしての地位も確保している。
冒頭に紹介したアンケートでは最下位だった日本だが、「コロナに対する危機意識」の高さではベトナムと並び1位になっている。国家主導ではなく、民間の意識の高さが日本の特徴なのかもしれない。強制力のない行動制限のなかで患者数を抑え続けることができるのかどうか。それは、日本人の意識次第だ。(取材・文/白戸京子)