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元厚労省技官が断言「1カ月自粛してもコロナは収束しない」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.05.02 06:00 最終更新日:2020.05.02 06:00

元厚労省技官が断言「1カ月自粛してもコロナは収束しない」

 

 テレビ、新聞にネット……どこも新型コロナウイルス感染症の話題一色。そんな今こそ、正しい知識を持つことが重要だ。元厚労省医系技官で、医師の木村もりよ氏(54)に、「コロナ常識の嘘」と「日本人が今、知るべきこと」を聞いた。

 

「『1カ月、2カ月頑張って自粛すれば収束する』と盛んに言われていますが、それは間違い、嘘です。この闘いが長期化するのは明らか。

 

 

 一般にどんな感染症も、収束への道筋は二つのみで、集団免疫を獲得すること、あるいは有効なワクチンが開発されること以外にありません。1~2カ月という短期間での収束とは、現実逃避にすぎないと思います。

 

“3密” という言葉に固執することにも疑問があります。海外を見ても採用している国はないんです。カリフォルニア州やニューヨーク州では、PCR検査で陽性となった人たちの何十倍の人数が感染しているとわかっています。

 

 日本も市中感染が広まっている可能性はきわめて高く、現状を考えると、3密やクラスター封じ込めは、焼け石に水です」(木村氏、以下同)

 

 感染症に対する政策は、3種類。(1)徹底的に行動制限して封じ込める「抑圧政策」、(2)社会的距離を保ち経済活動も制限する「徹底的自粛政策」、(3)緩やかな自粛で集団免疫獲得を目指す「緩和政策」だ。アメリカはじめ多くの国々は、「徹底的自粛政策」をとっている。

 

「日本は緊急事態宣言で、『緩和政策』から『徹底的自粛政策』に転じたといっていいでしょう。宣言前、政府は何もしていませんでしたが、日本人の行動様式と医療機関の努力によって、図らずも『緩和政策』状態にあったのではないかと、私は思います。

 

『抑圧政策』『徹底的自粛政策』は、厳しくするほど感染を抑えられますが、短期間では効果は一時的。解除すれば、再び感染が広がることは、4月14日にハーバード大の研究者が『サイエンス』誌に発表した論文でも予測されています。

 

『抑圧政策』『徹底的自粛政策』は、ワクチン開発まで継続しなければ意味がないのです。政府は、これを国民に周知できているのでしょうか。

 

 また仮に1~2年後にワクチンが開発されても、そのとき、社会や経済はボロボロになっており、人とふれ合うという、人としての幸福も失われているでしょう。『社会不安や経済悪化にともなう死者は、新型コロナの直接の死者より多い』という指摘もあります」

 

 一方の「緩和政策」にも、当然デメリットはある。

 

「集団免疫を得るには、人口の6~7割程度は、新型コロナに感染しなければいけません。日本は、諸外国に比較して致死率は低いですが、死者は数十万人単位になるという試算もあります。“医療崩壊” の危機は、ひっ迫した問題です」

 

 木村氏は、次のような方向転換の必要性を説く。

 

「全員予防ではなく、重症化しやすい人、基本的には高齢者に政策のターゲットを絞るべきです。若者の行動自粛ではなく、いかに高齢者が人との接触を減らせるかに焦点を当てるべきだと思います。

 

 それ以外の人は、なるべく普通に暮らしながら、集団免疫の獲得を目指す。賛否両論あるとは思いますが、真っ向から否定することではないはずです。

 

 いずれは、ほとんどの人が感染するのですから、陽性患者全員を隔離するのも非現実的。同様に、日々の新規感染者数に過剰反応するのも、意味がないと思います」

 

 日本政府の課題は何か。

 

「とにかく避けなければいけないのは、医療崩壊。政府には、『徹底的自粛政策』で時間を稼ぐ間に、人工呼吸器の数を確保することや、感染者数の少ない地方から呼吸器を扱える医師や看護師を都市部に派遣してもらうなどの医療資源確保と、トリアージ(患者の治療優先順位決定)の基準設置をぜひやってもらいたい。

 

 何十万人の死者が出る事態に、“命の選択” を現場にまかせるのは、あまりに酷です。未知のウイルスへの対策の正解は誰にもわかりません。しかし、危機管理で最も重要なのは、“融通性” があることではないでしょうか。

 

 政府は対策を、ただ先延ばしにしてきましたが、今こそデータから逃げずに、臨機応変に方向転換をすべきときだと思います」

 

きむらもりよ
『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)レギュラー出演ほか、広く活躍する木村氏。米ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院修了。米CDC、厚労省を経て現職

 

写真・八尋研吾

 

(週刊FLASH 2020年5月12・19日号)

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