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コロナウイルスはどこに存在するのか?海外では下水に注目集まる
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.05.05 16:00 最終更新日:2020.05.05 16:00
新型コロナウイルスは私たちが生活する環境のどんな場所に潜んでいるのだろうか。
5月3日、国立感染症研究所が、ダイアモンド・プリンセス号船内のウイルスを追跡調査した結果を発表した。
調査は船内の共有部分や客室などを、乗客の退室日から最長で17日、綿棒状のスワブで表面を拭う方法が採用された。601カ所を調べ、58カ所からコロナウイルスを検出したという。
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49の客室では10カ所(ライトのスイッチ、ドアノブ、トイレボタン、便座、トイレの床、椅子の手すり、テレビのリモコン、電話機、机、枕)をチェックした。その結果、ウイルスが最も多く検出された場所は、浴室内のトイレの床で39%、次いで枕が34%、電話機24%、テレビリモコン21%、机が8%だった。
患者の部屋では、症状のあるなしに関わらずウイルスが検出され、患者でない人の部屋からは検出されなかった。
共有部分では廊下天井の排気口1カ所からウイルスが検出されたものの、14カ所の空気採取で検出はなかった。
この調査から、物への接触による伝播の可能性が高いと考えられ、床や電話機、リモコンなどは適切に清掃や消毒されるべきと報告されている。また、空気伝播を示す証拠は得られなかったが、廊下天井の排気口からウイルスが検出されているため、特殊な環境でウイルスが遠くまで浮遊する可能性について、さらなる検討が必要だとしている。
一方、海外では、下水に集まったコロナウイルスの調査が注目を浴びている。人間の糞尿に含まれたウイルスが、下水の中に集積しているそうだ。
パリ周辺で、研究者たちが1カ月以上、下水に含まれるウイルスを観察し、その数の変化が新型コロナのアウトブレイクやその後のゆるやかなカーブと同様の軌跡を描いているのを確認した。病院で観察されるより数日早く、リアルタイムの情報がわかるという(『サイエンス』4月21日)。
アメリカのマサチューセッツ州では、研究者が周辺約100の自治体と共同で下水のウイルスを調査し、このエリアで446人の患者がいないときに、2300人から11万5000人の罹患者がいるだろうと予測していた(abcニュース4月12日)。下水の調査を重ねれば、患者数が予測できる可能性が出てきたのだ。同様の調査はオランダやオーストラリアでもおこなわれている。
こうした下水調査は、2013年にイスラエルでポリオが流行した際に威力を発揮した。現在では住民が服用した医薬品の調査などにも活用されているという。
なお、下水ではなく、飲み水は殺菌されているため安全だとCDC(米疾病予防管理センター)やEPA(米環境保護庁)が太鼓判を押している。もちろん、塩素消毒されているプールやジャクジーも安心である。
少しずつ解明が進んでいるコロナウイルス。その陰に、何百カ所も綿棒でこすって菌を採取したり、下水を顕微鏡で覗き込んだりしている科学者たちの地道な努力が重ねられている。(取材・文/白戸京子)