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新型コロナウイルス「武漢研究所から流出」説、各国の立場は
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.05.12 10:00 最終更新日:2020.05.12 10:00
中国の武漢で流行が始まった新型コロナウイルスについて、アメリカと中国の間で、「武漢の研究所から流出した」説をめぐって非難の応酬が始まっている。
感染が拡大した当初は、武漢にある市場が発生源だと考えられていた。しかし、トランプ大統領が「武漢の研究所が発生源」との主張を繰り返したことで、疑惑の目が向けられはじめた。
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4月30日、トランプ大統領は会見で「武漢の研究所が発生源だと強く確信させるものを見たのか」と質問され、「その通り」と答えた。5月3日には、FOXニュースに出演し、「何が起きたかを正確に示す、非常に強力な報告書を出す。決定打だ」と、証拠の公開を匂わせている。
武漢の研究所とはどういうことか。これは「中国科学院武漢ウイルス研究所」で、BSL-4という世界最高レベルの病原菌を扱える施設だ。
この研究所で、フランスで博士号を取った女性研究員・石正麗氏が新型コロナウイルスの研究をしていた。それが、なんらかのトラブルで流出したというのがアメリカ側の言いたいことなのだろう。
もちろん中国側は、トランプ大統領の主張を真っ向から否定している。5月4日の『環球時報』では、「我々はアメリカが世界に証拠を提示することを求める。しかし、提示はできないだろう」としている。また、同研究所も流出について否定した。
一見、研究所からの流出をめぐり、アメリカと中国で対立しているようだが、意外にも、流出を否定的に捉える国がほとんどだ。そもそもアメリカでも、意見は割れている。
ポンペオ米国務長官は、トランプ大統領とともに中国批判を続けていたが、5月6日、武漢研究所説について「確信はない」と、ややトーンダウン。とはいえ、「研究所から流出したという証拠が大量にある」と引き続き主張。「どちらの説明も真実でありうる」とハッキリしない。
米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、5月5日の記者会見で、同説について「まだわからない。結論づけるだけの証拠はないが、恐らく意図的に出されたものではないだろう」と慎重な見方を示した。
5月7日の『CNN』によれば、アメリカ同盟国間の情報共有ネットワーク「ファイブ・アイズ」(米、英、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド)は、この説の可能性を「極めて低い」と見ているという。
各国のトップたちも、それぞれの立場を示している。
オーストラリアのモリソン首相は、当初アメリカの主張に従い、ウイルス発生源について中国に調査を求めていた。しかし、5月になると、記者会見でトランプ大統領の主張を否定し、「ウイルスの発生源は武漢市の研究所ではないことを示す情報を入手した」と発言。
「可能性が最も高いシナリオは、武漢の市場に関連したものだが、この問題については完全な調査がおこなわれるべきだ」と語った。
ドイツの週刊誌『シュピーゲル』は、5月8日、ドイツ政府がトランプ大統領の主張を疑問視していると報じた。政府の内部文書で、「トランプ大統領の失政から目をそらすように仕向け、国民の怒りを中国に向けるためのものだ」と分析しているという。
WHO(世界保健機関)は、5月8日、武漢市の市場が新型コロナウイルスの感染拡大に関連しているとの見解を示したうえで、さらに調査する必要があると主張。いまのところ発生源か、感染が拡大した場所なのか、それともたまたま症例が確認されただけなのかはわからないとしている。
トランプ大統領は、新型コロナについて「真珠湾攻撃よりも9.11テロよりも深刻だ。これほどの打撃を受けたことはない。ウイルスの拡大は中国国内で止めることができた。発生源で止めるべきだった」と、繰り返し中国を批判しているが、研究所からの流出を裏付ける証拠は出るのだろうか?