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韓国・同性愛者クラブでクラスター発生…プライバシーはどうなる?
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.05.15 11:00 最終更新日:2022.12.07 18:59
新型コロナウイルスの感染が落ち着き、日常を取り戻しつつあった韓国だが、最近新たなクラスターが発見された。発生場所が同性愛者クラブだったため、追跡調査は難航。そのため、強制的な捜査がおこなわれ、監視社会の勢いが強まっている。
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事の発端は、5月7日に発表された、ソウル近郊・龍仁市に住む20代男性の感染だった。男性は発症前にソウル市内の繁華街で、クラブなど5軒のはしごをしていたことがわかっており、龍山区のサイトでその店の実名が公表された。このうちの一部が同性愛者クラブだったことから、騒動が大きくなった。
5月11日の『中央日報』によれば、4月30日から5月5日まで、当該5カ所のクラブを訪れたのは7222人だという。
感染者の徹底した追跡調査がおこなわれる韓国だが、場所の特殊性から、調査は難航。5月11日の記者会見で、ソウル市長は「匿名希望者は住所と電話番号のみ確認して検査する」と発言。同時に、「自主的に検査を受けてもらいたいが、強制的な措置も並行せざるを得ない」とし、「クラブを訪問したにもかかわらず検査を受けなかったことが判明した場合は、200万ウォン(約17万3000円)の罰金を科す」と発表した。
実際に、監視の目は強まっている。5月13日の『朝鮮日報』によれば、当局は、クラブが運営を再開した4月24日から5月6日までの毎日0~5時の間に、30分以上付近にとどまっていた1万905人を携帯基地局の記録から把握したという。また、警察は8559人規模の迅速対応チームを整え、クラブに出入りした人物のうち、クレジットカードや基地局情報で所在が確認できない人について、徹底して追跡する方針を明らかにした。
そもそも韓国では、17歳以上の国民1人1人に「住民登録証」と呼ばれる身分証明書が与えられており、銀行口座やクレジットカード、携帯電話などと紐づけられている。結果、所有者の行動記録や購入履歴を詳細に把握できるシステムができあがっている。
具体的にはどのようなものか。
先の20代男性の感染者の記録は、ここまで公開されている。以下の○○はいずれもクラブの実名だ。
5月2日(土)
00:20~00:23 コンビニ、歩行、マスクの着用、接触者なし
00:24~01:00 ○○、歩行、入室時マスク着用
01:06~01:31 ○○、歩行、入室時マスク着用
02:00~03:10 ○○、歩行、入室時マスク着用
03:11~03:12 コンビニ、歩行、マスク未着用、接触者なし(従業員はマスク着用)
03:20~03:22 ○○、歩行、入室時マスク着用、接触者なし
03:32~03:47 ○○、歩行、入室時マスク着用、帰宅時はタクシー利用
この男性と行動経路が重なる「安養市23番感染者」と「ソウル648番感染者」が、ソウルにある男性同性愛者向けの「ブラック睡眠室」に寄ったことも判明している。韓国では、こうした情報の徹底管理と公開で、感染の抑え込みを図ってきた。しかし、これでは秘密にしたい自らの性的指向を勝手に公開されること(アウティング)になりかねない。監視社会の韓国で、プライバシー保護はどこまで優先されるのか。模索はいまも続いている。