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大統領はホワイトハウス地下に避難…アメリカ「デモ」の実態は

社会・政治 投稿日:2020.06.03 16:50FLASH編集部

大統領はホワイトハウス地下に避難…アメリカ「デモ」の実態は

デモ隊が集まるホワイトハウス(写真:ロイター/アフロ)

 

 アメリカ全土で、抗議デモが止まらない。事の発端は、黒人男性が白人警官による拘束を受け、首を押さえられて死亡したことだ。

 

 6月2日の火曜日は「ブラックアウト チューズデイ」という動きが起こり、ハリウッドセレブをはじめ、多くの個人、企業がSNSに黒い四角の写真を載せたり、デモのスローガンである#Blacklivesmatter(黒人の命は大事)のコメントを載せたりした。

 

 

 筆者はシリコンバレーに住んでいるが、2日には公園や路上で集会があったほか、昼間には若者が高速道路を歩いてデモし、市庁舎に集合。夜には隣の市からのデモ隊が通過した。フェイスブック本社前やザッカーバーグCEOの自宅前でも集会があり、その車や人が市内に流れ込んできた。

 

 大規模略奪計画がSNSにあがって、周囲は夜間外出禁止令が出た。ザッカーバーグ邸前は通行止めになり、少し離れたところでは発砲事件も起きた。だが、これまでのところ、暴動や暴力は起きていない。

 

SNSに流れた略奪計画

 

 デモ自体は健全な行為で、特にアメリカでは日常的に広くおこなわれている。学校が生徒をデモに参加させることすらある。かつてマーティン・ルーサー・キング牧師が訴えたように「沈黙は罪」であると考え、自分が行動しなくてはと思う人も多い。

 

 警察はデモする人たちの言論の自由と安全を守るために警備する。今回のデモでは、片膝をついてデモ隊と同じ考えを表明する警官も多数見かける。

 

 片膝をつくポーズは、元NFLのコリン・キャパニック選手が、黒人や有色人種への差別がまかり通るのを理由に「国家に敬意は払えない」として国歌斉唱時にとったもの。反人種差別の象徴的ポーズとなっている。

 

 シリコンバレーの警察署は1日、「これまで法にのっとって安全にデモをおこなってきた歴史を誇りに思う。今後もサポートしていく」といった内容の声明を出している。

 

 このように、各地で起きているデモのほとんどは平和的におこなわれているし、遺族もそれを望んでいる。

 

 だが、暴力や略奪が起きているのも事実である。デモの一部が過激化することもあるのだろうが、略奪目的の人が混乱に乗じているのは否定できない。

 

 各地で頻発した暴動の影響で、アマゾンは配達地域を一部に限定、ドラッグストアや小売チェーンの一部が臨時休業に追い込まれた。全米に店舗を展開している「ターゲット」は、その名のとおり略奪のターゲットとなり、100店舗以上が休業となっている。

 

 俳優のロバート・デ・ニーロはツイッターで、ターゲットの前で両手を広げて略奪者から店を守るデモ参加者の映像を掲載し、「たった1人の悪い抗議者の行為が、全体の評判を落としてしまう。少数の悪徳警官のおこないはすべての警官とは違うはずだ」とコメントしている。

 

 トランプ大統領は「デモはテロリストが先導している」とし、軍隊の力で制圧しようとしている。そんな大統領に反発し、ワシントンD.C.では複数箇所で火の手が上がるなど、激しい抗議活動が続いている。

 

 5月29日には、デモ隊がホワイトハウスへ向かい、一時、ホワイトハウスがロックダウン。大統領は安全のため、夜に地下室へ移動した。この地下室はバンカーと呼ばれていて、ゴルフ好きの大統領にとっては皮肉なものとなった。

 

 31日には、大統領が近くの教会で写真を撮るため、軍がデモ隊に催涙弾を放つなど高圧的に群衆を蹴散らした。撮影に使われた教会は暴動を避けるため、あらゆる戸口にベニア板を張りめぐらしており、「祈りに来たわけでもないのに」という反発と、「大統領が自分たちを守ってくれる」という喜びの声がともにあがっている。

 

 大統領は相変わらず強気で、最近では自身を「法と秩序」の大統領だとし、ツイッターでは一言「LAW & ORDER!(法と秩序!)」「SILENT MAJORITY(サイレント・マジョリティー)」とコメントしている。どちらもニクソン大統領が使った言葉で、この表現自体に人種差別の意味はないが、黒人規制を連想する者もいる。

 

 元カリフォルニア知事で俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が、歴史ある時事ニュース雑誌『ザ・アトランティック』にコメントを寄せた。

 

「抗議する人たちはアメリカが嫌いなのではなく、国をよくしたいと思っている。これは自分にとっては政治ではない。自分だったら国をよくするために毎日耳を傾ける。あなたはどうだ?」

 

 共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領もこんなコメントを出している。

 

「どうしたら根付いている人種差別を終わらせられるのか? 唯一の道は、傷ついて悲しんでいる人たちの意見を聞くことだ。いまその声を聞いていない者たちは、どうしたらよりよい場所にできるかがわかっていない。

 

 アメリカは、違う背景を持つ人間をひとつにまとめることに、常に挑戦してきた。歴史上の偉大なるヒーローは、団結させることができる人物なのだ」

 

 どちらも特定の人に向けたメッセージではないが、「いまは耳を傾けるとき」という主張である。だが、国のトップが暴力と差別を誇示している間は、対立は収まりそうにない。(取材・文/白戸京子)

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