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【アメリカの殺人鬼に会いに行く(1)】「44口径キラー」デイビッド・バーコウィッツ社会・政治 投稿日:2016.08.21 07:00

【アメリカの殺人鬼に会いに行く(1)】「44口径キラー」デイビッド・バーコウィッツ

写真:Hulton Archive/Getty Images

 

 アメリカ凶悪犯罪の専門家である阿部憲仁氏が、伝説の大量殺人犯に会いに行く連載ルポ!

 


 

【事件概要】

 デイビッド・バーコウィッツ(David Berkowitz、1953年6月1日〜)

 

 1976年から1977年にかけて、ニューヨークで若い女性やカップルら13人を襲撃し、6人を殺害、7名に重軽傷を負わせた。「サムの息子」という名前で警察などに手紙を送りつけ、市民を恐怖のどん底に突き落とした。

 1977年8月10日、ニューヨーク市に隣接するヨンカーズで逮捕される。その後、複数の放火を自供。裁判では精神異常による無罪を主張したが、有罪となり、6名一人一人につき終身刑が下される。

 現在、ニューヨーク州のサリバン刑務所に服役中

 

 

「もう気付いていると思うから、自分から言うけど。ほら、ここに長い傷跡があるだろ。最初に収監された刑務所で、僕を殺して名前を売ろうとした奴にいきなり背後から切り付けられたんだ。正直、誰がやったのか、よく覚えてないんだけど」

 

 その死刑囚は、喉の左側にある20cm以上の傷を指して言った。傷はケロイド状になっており、刃物で深く切りつけられた跡だと、素人でもわかるほどだった。

 

 刑務所で「そいつを殺せば自分の名声が高まる」と思われていた男――それが「44口径キラー」デイビッド・バーコウィッツ(63)だ。

 

 バーコウィッツの典型的な手口は、駐車中の車にいる女性やカップルを44口径の銃で射殺するというもので、6名を銃殺した。さらに、多数の放火もおこなっており、1976年から1977年にかけてニューヨークを恐怖に陥れた。

 

 バーコウィッツは逮捕後、「自分の犯行は隣の家に住んでいる住民(サム)が飼っている黒いレトリバーに乗り移った悪魔に指示された」と自供したことで、「サムの息子」との異名も持つ。

 

 警察に挑戦状を送り付けるなど、劇場型犯罪の要素も強く、さらに悪魔信仰をほのめかしたことで、彼の名前は全米に知れ渡った。

 

 バーコウィッツは、知名度を利用し、事件をテーマに何冊もの本を出版し、多額の印税を得た。批判の声が高まり、アメリカでは、犯罪者がその犯行に基づいて経済的な利益を得てはいけないという「サムの息子法案」が設けられている。

 

 私は、バーコウィッツに会うため、サリバン刑務所に向かった。コロコロした体形で、キリスト教に帰依したせいか、意外にも一般人とほとんど変わらぬ雰囲気だった。温和な笑みを浮かべ、私がこれまで会ったすべての人間の中でも、トップクラスの好印象だった。もし彼がセールスマンだったとしたら、私はきっと彼の商品を買ってしまうだろう。

 

 周りの面会グループがみな自販機から買ったものを楽しそうに食べているので、挨拶もそこそこに「何か食べ物でもどう?」と聞いた。すると、「そうだね(Yeah)」と気持ちよく答える。

 

 私は自販機の使い方がよくわからなかったので、バーコウィッツにヘルプを求めると、「受刑者は規則で自販機に触れないんだ」と言う。やむなく、後ろからアドバイスしてもらいながら、フィッシュサンドを購入し、電子レンジで温めた。

 

 他のグループに食料を買い占められたあとで、他にまともな食べ物がなかったのだが、彼は「僕はフィッシュサンドが好きなんだ。いつもの食事に比べるとはるかにマシだよね」とフォローしてくれた。

 

 今回の面会の大きな目的は、キリスト教の信仰がどこまで本物なのか確認することだった。私は質問を開始した。

 

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