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倒れても補償なし「危ない電柱」はシールで判別【チェック表つき】

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.09.06 11:00 最終更新日:2020.09.06 11:00

倒れても補償なし「危ない電柱」はシールで判別【チェック表つき】

 

「特に今年は猛暑で、海面の温度が上昇し、台風が日本に上陸しやすくなっています。台風被害の対策をしておくべきでしょう」(気象予報士・片山由紀子氏)

 

 いよいよ、今年も台風シーズンが来てしまったーー。

 

“風の恐怖” は、見過ごすことができないものになってきている。近年の台風では、東京都内でも最大瞬間風速40m以上の風が観測されることがある。50m級の風となると、樹木が根こそぎ倒れるレベルだ。

 

 

 千葉市で最大瞬間風速57.5mを記録した2019年の台風15号では、山間部を中心に約2000本の電柱が倒壊。同じく大阪市内で47.4mを記録した2018年の台風21号でも、1700本以上の電柱が倒壊し、大規模停電が起こった。

 

 日本は、全国で3500万本以上の電柱を抱える「電柱大国」だ。約20年にわたり、配電設備設計者として電力会社に勤め、現在は情報サイト『電柱net』を運営する山本剛史氏は、こう語る。

 

「風の影響のみでコンクリートの電柱が倒れることは、まずありません。むしろ、木や看板が風に飛ばされて、電線に引っかかり、バランスを崩して傾く可能性が高いのです。

 

 いまは、電力会社の高圧線・低圧線に加えて、NTTのケーブルテレビ、光ファイバーもあって、電線が増えています。より、飛来物が引っかかりやすい状況にあるんです」

 

 電柱は法律上、毎秒40mの風にも耐えられることを基準に、設置されている。だが、すべての電柱がこの基準をクリアしているわけではない。「強風は吹かない」とされてきた都市部や、民家が多く連なる場所などでは、電柱は毎秒28mの風に耐えられれば法律上、基準を満たしているとされるのだ。

 

「じつは、どちらの電柱を設置するかの判断は、設置企業に委ねられています。そのため同じ地域内で、電力会社設置の40m対応の電柱と、NTTによる28m対応の電柱が混在しているケースもあるんです。

 

 耐久性に劣る28m対応の電柱で、しかも架けられた電線が多い場合は当然、傾く危険が高まります」(山本氏)

 

 しかし、ここで驚くべきことがある。都市部にある風速28m対応の電柱が台風で倒れ、民家などに被害が出たとしても、法律上は設置企業に補償義務はないのだ。

 

「設備巡視で、電柱に問題がないことを確認しております。台風のような大規模災害を起因とする損害の補償には、応じられません。基準を満たしていない電柱の折損による被害が明らかになった場合は、必要に応じて個別に補償対応をさせていただきます」(関西電力送配電株式会社広報担当者)

 

 これはつまり、安全基準を満たしていた電柱の倒壊による損害は補償されないが、万一、その電柱になんらかの「不備」があったと被害者が証明できれば、補償される場合もあるということだ。

 

 だが、電柱が台風で被害を受けたとき、復旧作業のため、設置企業はすぐに該当の電柱を撤去してしまう。そうなったら、倒れた電柱の「不備」を確認する術はない。

 

「ですから、自宅近くの電柱、電線の写真や動画をあらかじめ撮っておくべきです。そうすれば、電柱に不備があったと証明できる。不安なことがあったら、電力会社・NTTなどに、早めに改修の依頼をすることが大事です」(山本氏)

 

ンクリート柱にひび割れが入った状態を山本氏が見つけた。原因は過去の負荷によるものが多い

 

 山本氏はこれまで、関西電力管内の電柱で2000件以上の技術基準違反を指摘し、1500件以上の改修工事を実現させた。

 

「思った以上に、電柱の不備はあります。折損する危険性があるのに、改修費用がかかるため放置されているケースもありました」(山本氏)

 

 実際に、NTT西日本では折損事故の可能性がある電柱が約71万本あり、2017年末までに建て替え予定だったが……。

 

「じつは建て替えのために、NTTの電柱には『赤=異常がある』『緑=バランスが取れていない』のシールが貼ってあるのです。丸囲みの数字は点検した年度です。

 

 ところが、2020年8月でも赤いシールが貼られたままの電柱が放置されているケースがありました。すぐNTTに連絡したところ、建て替えられることになりました」(山本氏)

 

 もちろん「赤シール」で即座に倒壊の危険があるわけではないが、「危ない電柱」かどうかの目安にはなるようだ。シールについて、NTT西日本に確認すると、「色の違いについては弊社の管理区分ですので、お答えを控えさせていただきます」との回答だった。

 

 次のページでは、山本氏の経験から生み出した「危ない電柱」の見極め方を、チェックリスト形式で示した。被災後に泣き寝入りだけはしたくない。

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