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フィリピンの牢屋から…日本人犯罪集団「オレオレ詐欺」続行中

社会・政治 投稿日:2020.09.11 06:00FLASH編集部

フィリピンの牢屋から…日本人犯罪集団「オレオレ詐欺」続行中

入管内の部屋で、拘束された日本人が詐欺をおこなうために電話をかけている様子

 

「すみません。あなたのお名前、電話番号、ご住所などが書かれたリストを押収しましたので、被害届を出していただくよう、お電話させてもらっているんですけど……」

 

 これは、警察官と偽って電話をかけてカードを盗む、いわゆる「キャッシュカード詐欺盗」の電話を録音したものだ。

 

 

 この音声データは、都内に住む20代の女性・Aさんのもとに、フィリピンから送られてきたものだ。送り主は、現在フィリピンの入国管理局(入管)の収容所に拘束されている、Aさんの交際相手・B氏(20代)だった。

 

 2019年11月、フィリピン・マニラで、日本人のオレオレ詐欺(特殊詐欺)グループが摘発され、36人がフィリピン入管に拘束された。

 

「私の彼も、36人のうちのひとりでした。『転売の仕事でフィリピンに行く』と言われて信用していましたが、こんなことをしていたとは……。

 

 36人のうち18人は、2020年2月に9人ずつ日本に移送され、裁判を受けています。でも、彼を含めた残りの18人は、いまだにフィリピンの入管に取り残されたままなんです。

 

 新型コロナの影響で、3月は飛行機が飛びませんでした。でも、今はもうマニラへの便も飛んでいるし、彼は2回もPCR検査を受け、陰性でした。なぜいつまでも、日本に移送されないのでしょうか」

 

 Aさんのもとには、B氏から入管内の惨状を訴える、さらなる悲痛なSОSが届けられている。

 

「彼のグループとは別の事件で拘束された、暴力団員を自称する『S』という日本人が、入管内の日本人を仕切っています。

 

 Sは、詐欺グループのメンバーに『どうせ悪いことしたんだから、ここでもカネを稼げ』と言って、メンバー18人のうち10人に、オレオレ詐欺やキャッシュカード詐欺盗を手伝わせているんです」

 

2020年2月24日、フィリピンから詐欺グループのメンバーのうち9人が成田空港に移送された(写真・朝日新聞)

 

 信じられないことに、彼らはフィリピンの入管内から国際電話で、オレオレ詐欺の電話をかけさせられているというのだ。このフィリピンからの詐欺電話によって、すでに日本国内で、新たな被害も出ているという。

 

「Sは、詐欺の成績が悪いと火のついたタバコを押しつけるなど、日本人を暴力で支配しています。私の彼は、今はなんとか逃れていますが、再び詐欺に加わるよう、いつ脅されるのか心配です」

 

 入管内で、なぜそうした犯罪行為が堂々とできるのか。

 

「入管内では、携帯電話やパソコンの使用が認められています。看守や所長にお金を渡せば、好き放題できるそうなんです。Sは、そうやって詐欺行為や暴力を見逃してもらっています。

 

 Sに反抗的な態度を取ったせいで、独居房に入れられてしまった日本人もいるそうです」

 

 リーダーのSに逆らうと、トイレやシャワーを使うことができなくなるという。恋人であるB氏を救おうと、Aさんは2020年5月に、警視庁に相談を持ちかけていた。

 

「『彼を早く日本に移送してほしい』と相談に行きました。でも警視庁は、『日本じゃないから、どうすることもできない』と言うだけでした」

 

 日本人が10カ月もの間、フィリピンで拘束され続け、しかもそれにより新たな詐欺被害が出ていることに問題はないのか。刑事事件に詳しい大貫憲介弁護士に聞いた。

 

「国際法上、国家は他国に対し、犯罪者を引き渡す義務はありません。したがって、犯罪人引き渡しなどの国際捜査協力の可否は、引き渡しを求める日本の捜査機関の努力にかかっています。

 

 すでに拘束した日本人の半数を移送させており、フィリピン側に協力姿勢があるのは明らか。今回の場合、詐欺グループを現地で拘束したままにしていることで、日本国内に新たな被害が生じている可能性は高く、日本側の捜査機関の努力不足は大問題です」

 

 本誌が警視庁に質問状を送ったところ「個別捜査に関することですので、お答えを差し控えます」との返答だった。詐欺被害者を増やさないために、警視庁の早急な対処が待たれる。

 


(週刊FLASH 2020年9月22日号)

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