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DeNAソシャゲ開発幹部が「ライバル企業をパクれ!」大号令
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.09.15 16:00 最終更新日:2020.09.15 16:00
「2020年6月、会社の共有サーバー上のデータをなにげなく見ていて、本当に驚きました。私が前にいた会社で開発にたずさわったゲーム『X』(仮名)の企画書が、なぜか保存されていたのです」
そう語るのは、IT大手「DeNA」の現役社員・Aさん。スマホ用ソーシャルゲーム(ソシャゲ)の開発者だ。企画書が保存されていたのは、DeNAが開発したゲーム『Y』(仮名)の制作チームの共有フォルダだった。
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「『Y』は『X』の翌年にリリースされ、ルールや登場キャラ、課金システムなどがそっくりでした。『Y』はヒットせず、私も最近まで真似されていたことに気づかなかったのですが……(苦笑)」(Aさん)
『X』はリリース当時、150万ダウンロードされたヒット作。DeNAが運営するプラットフォーム「Mobage(モバゲー)」で公開された。ゲーム会社は、「Mobage」にゲームを提供する際、ゲームに問題がないかDeNAの審査を受ける。その際、アプリやゲームの設計書、売り上げ予測などを提出する。
「共有サーバー上で見つけた企画書は、『X』の審査のためにDeNAに提出したものでした。『Y』の開発メンバーの閲覧履歴もありました」(同前)
こうしたケースは、機密保持契約に反してさえいなければ、法的に問題ないというが……。ITジャーナリスト・井上トシユキ氏は、こう指摘する。
「他社の説明資料をもとに、それと似たゲームを作ったのであれば、倫理的に問題はあると思います。ただ、ソシャゲ業界は “後追い” に寛容なんです。先行した企業も、パクられるのは “お互いさま” と考えてはいます」
業界に、この “寛容さ” が根づいた原因は、DeNAにもあるという。
「2013年、釣りゲームの著作権についてDeNAと争っていたGREEが、最高裁で敗訴しました。先にリリースしたGREEが負けたのです。この判決は、後追いの企業にとって都合がいいものでした」(井上氏)
Aさんが、ある画像を開いてみせた。
「これは2019年7月23日にゲーム事業部の幹部社員が、部員約800人に送ったメールです(上の画像)。ここでは、ネットマーブル社の『七つの大罪〜光と闇の交戦〜』というRPGをデータ解析したこと、そしてその分析をもとに、自社のゲームを開発していこうと呼びかけていて、いわば “パクリ” を奨励しているんです」
「データ解析」とは、どういうことをいうのか。ゲームアプリは映像、音声、テキスト、それらを制御するためのプログラムなどの要素を暗号化し、一体化したものだ。それを解析ツールにかけると暗号が解けて、映像・音声などが、ひとつひとつ元の素材に復元される。これが「データ解析」だ。
DeNAとは別の大手ゲーム会社の現役社員が語る。
「データを解析すると、中の仕組みがどうなっているのか、技術情報も読み取れてしまいます。解析ツールはネットで簡単に入手できますが、ほとんどのゲームが利用規約で禁止しています。DeNAが解析行為をメールで奨励しているとは、驚きですね」
さらに問題のメールには、解析結果がまとめられたレポートにリンクが張られ、社員が誰でも見られるようになっていた。
「メールを見たスタッフから、さすがにまずいという指摘が入り、その後『この案件は取り下げます』というメールが送られてきました。ですが、実際にはその後も、解析は継続されています」(Aさん)
『七つの大罪』は、3DのCGアニメが「スマホゲームのレベルを超えている」といわれる大ヒット作。DeNA社内のグループチャットでも、その技術が話題になっていた。
「今後、DeNAからリリースされるゲームで、『七つの大罪』に似た技術が使われているかもしれません」(同前)
著作権法や不正競争防止法に詳しい小倉秀夫弁護士は、こう話す。
「解析がただちに違法というわけではありません。ただ、アプリを解析する際に、『逆アセンブル』という変換をすれば、法的には複製にあたります。解析結果が社内のゲーム開発者全員が見られる状態にあるならば、複製の目的が私的使用の範囲を超え、著作権の侵害にあたる可能性があります。
違法ではなくても、ヒット作品をデータ解析して開発したゲームと元の作品が、操作性やルール、システムなどで似ていたら、それは偶然の一致ではなく、“パクリ” ではあるでしょうね」
では、DeNAは、こうした “パクリ” 行為をどうとらえているのか。「これは『七つの大罪』の盗用にあたるのではないか」と、同社広報グループに聞いた。
「一般的と思われる競合調査の一環として、ご質問をいただいているゲームタイトルを分析はしていたようです。ただし分析をしても、それを盗用をしてはならないということは理解しておりますので、あくまでも分析にとどまっており、ご指摘のような事実はなかったものと認識しております」
ソシャゲ市場でも中国企業の後塵を拝し、すっかり影が薄くなった日本のゲーム会社たち。「 “パクリ” “パクられ” は、お互いさま」というぬるま湯に浸かっていては、それも当然の結果だろう。業界体質の “アップデート” が必要だ。
(週刊FLASH 2020年9月26日・10月6日号)