「私たちは戦後のGHQ(連合国軍総司令部)として都庁に乗り込んでいるわけではありません」
9月1日、小池百合子東京都知事(64)は居並ぶ都庁幹部に呼びかけた。
この日始動した「都政改革本部」は、「情報公開の徹底」や「東京五輪費用の見直し」などについて議論し、方針を策定する小池都政の司令塔だ。
最大の目玉は、外部の専門家集団で構成する「特別顧問」たち。時給は7300円とけっして安くはない。彼らは、都政にどう“メス”を入れるのか。
特別顧問は10人だが、最初に発表された5人の人物像を見てみよう。まず、特別顧問を束ねる「統括」に就任したのは、元運輸官僚で大手経営コンサルタント会社マッキンゼー出身の上山信一・慶應義塾大教授。大阪市の特別顧問として橋下徹・前大阪市長のブレーンも勤めた。
「マッキンゼー時代に培った経営コンサルタントの視点で、大阪の市政を経営に見立てた行政改革を進めました。予算案の費用対効果にうるさく、『民間企業では考えられない』が口癖。当時は職員など担当者を会議で吊るし上げる、さながら『公開処刑』の手法が有名でした。同じやり方で、利権に斬り込んでいくはずです」(政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏)
豊洲市場への移転問題を担うのが、小島敏郎・青山学院大教授だ。小池氏が環境相時代に、環境省地球環境審議官として支え、クールビズや省エネを推進した人物。民進党の阿部知子衆院議員が小島氏の実力を評価する。
「私も助力を仰いでいた信頼できる政策マンです。小島さんのイデオロギーは環境主義。東京を環境都市にするための政策を次々に打ち出すと思います」
小島氏起用の段階で、土壌汚染が問題視される、豊洲市場への移転延期の肚(はら)は決まっていたと言えそうだ。
加毛修弁護士は国立競技場の解体工事をめぐり、公正さに欠けるとして入札のやり直しを求めた、内閣府の政府調達苦情検討委員会の委員長だ。
「『五輪関連の不正は見逃さない』という小池氏の合図だろう。加毛氏は第一東京弁護士会会長も務めた法曹界の重鎮だ」と都内の弁護士は評する。
坂根義範弁護士は、元名古屋地検特捜部検事で小池氏の「軍師」若狭勝衆院議員と同じ弁護士事務所に所属した。「証拠品分析能力が高い」(司法担当記者)と評判で、都の入札プロセスなどを精査する。
公認会計士の須田徹氏は、大手税理士法人トーマツの理事長を務めた。
「実務派の有名な会計士で、会計資料の分析に力を振るうでしょう」(鈴木氏)
小池氏に近い元国会議員は言う。
「2011年度には3926億円にすぎなかった豊洲新市場の総事業費が、今年2月時点で5884億円まで膨れ上がっている。小池氏は都政改革本部で、膨大な事業費が適正に計上されたかどうかを徹底精査するつもりだ」
都政史上初の大顧問団による小池流改革の成否はいかに。
(週刊FLASH 2016年9月20日号)