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かつては“黒子”…なぜ「官房長官」が“次期首相”ポストに?
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.09.25 06:00 最終更新日:2020.09.25 06:00
9月16日、第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉首相(71)。異例な点として、「内閣官房長官が前政権を引き継いだこと」をあげるのは、政治ジャーナリストの角谷浩一氏だ。
「官房長官というポストの重みが変わった、エポックメイキングな政権交代です。かつては、『選挙を仕切る』絶大な権力を持っていた自民党幹事長ポストを経験することこそが、“首相への必須条件” とされていました。官房長官ポストは、その自民党幹事長への登竜門的な存在と見られていたのです。
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しかし今は、自民党幹事長と内閣官房長官とが、同格のポジションになったといえます」
菅首相と同様に、官房長官を経験して首相になった政治家は多い。だが、たとえば竹下登元首相は佐藤栄作元首相のもとで当時47歳で官房長官に就任したが、のちに自民党幹事長も経験した。その竹下内閣での官房長官時代に、新元号「平成」の墨書を掲げた小渕恵三元首相も、自民党幹事長を経た後の首相就任だった。
「そもそも官房長官というのは、戦中までは『内閣書記官長』という名称でした。政治家ではなく、官僚のポストだったんです。戦後、日本国憲法が施行後、1966年に閣僚に格上げされました。
とはいえ、官房長官は本来、黒子であるべき存在です。顕著な例が、田中角栄内閣で官房長官だった二階堂進氏。田中派の大番頭として、『趣味は田中角栄』と公言するほど、首相と官房長官は一蓮托生でした。
中曽根康弘内閣で官房長官だった後藤田正晴氏や、大平正芳内閣での伊東正義氏も、首相退任時に『次の総理をやってくれ』といわれても、断ってきました。あくまで、陰で総理を支える存在だったのです」(角谷氏・以下同)
黒子から、権力が集中する地位へ――。その変化を生んだのは、安倍晋三前首相が推し進めた「官邸強化」だった。
「2014年、安倍政権が『内閣人事局』を設置したことで、官房長官のポストの重みが一気に増したのです。内閣人事局は、官房副長官が仕切ることになってはいますが、実質的には官房長官の支配下にあります。そのため、官房長官に対する官僚たちの態度が変わったわけです。
官房長官時代にその権力を得た菅首相は、権力の仕組み、権力行使のイロハをすべて学ぶことができました。二階堂氏や後藤田氏の時代とは、官房長官のポストの重みが、大きく変わってしまったのです」
その官房長官に、新たに就任したのは加藤勝信元厚労相(64)だ。「正直、厚労相としての評価は高くなかった」(角谷氏)という加藤 “新” 官房長官は、みずからを抜擢してくれた菅首相の跡を継ぐ存在になれるか――。