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東京・調布の地盤陥没事故、気になる補償は? あなたの家の地下も「無断」で掘られている
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.10.22 16:26 最終更新日:2020.10.22 16:34
ぽっかりと地面に空いた、幅5m、長さ3m、深さ5mほどの大きな穴。10月18日正午すぎ、東京都調布市東つつじヶ丘2丁目付近で起きた道路陥没事故の現場は、「関越自動車道」と「東名高速道路」を結ぶ、「東京外環自動車道」(外環道)の練馬~世田谷間のルート上にある。多数の住民が暮らす、都内の住宅街での陥没事故に、大きな衝撃を受けた人も多いはずだ。
現場では地下約40mの深さで外環道のトンネル工事が進められており、9月中旬には直径16mの掘削機「シールドマシン」が通過していた。
驚くべきことに、陥没現場の地下で進められていたこの地下工事には、「真上に住む土地所有者の承諾は必要ない」と定められており、地下工事を始める際に、土地所有者に補償する必要はないという。虎ノ門合同法律事務所の武内更一弁護士が解説する。
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「2000年にできた『大深度地下法(大深度地下の公共的使用に関する特別措置法)』により、地下40mより深いところでは、国土交通省の認可さえあれば、原則的には土地所有者に使用料などを支払わずに工事ができます。これは、東京外環道とリニア新幹線を想定してできた特別措置法です。
『権利の制限により具体的な損失が発生したときは、告示の日から1年以内に限り請求できる』と条文にはありますが、これは認可が告示されてから1年ということ。実際に工事が始まってからでは、請求が間に合わないことが多いのです」
9月中旬、現場付近の地下をシールドマシンが通過した際にも、トンネル工事の振動で住宅のタイルの一部がはがれたり、家屋にひび割れができたりするなどの被害が発生し、苦情が多く寄せられていたという。
工事を実施する東日本高速道路(NEXCO東日本)は、工事を一時中断したものの、「工事と陥没との因果関係は不明」という立場を取っている。
「工事が始まってから損害が発生した場合は、工作物責任や一般の不法行為として損害賠償請求はできますが、損害と工事との因果関係をこちらで立証しなくてはならず、非常に厄介です。
そもそも大深度地下法ができたのは、地下40mより深いところで工事をしても地表に影響することはない、という大前提があったから。ところが現実には、地下深くでも工事をすれば振動が起きるし、今回のような陥没事故も起きるわけです。
事業者はシールドマシンの安全性を主張していますが、それも保証されたものではありません。2020年6月にも、神奈川県の新横浜駅付近の市道で、道路陥没事故が起きています。東京外環道は、住宅地の地下を工事するわけで、人命に影響するような、取り返しがつかない事態になりかねません」
大深度地下の作業は地表に影響しない、という制度設計の大前提を、見直す必要がありそうだ。