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全米初の「スズメバチの巣」根絶作戦…SNSでは防護服に注目集まる

社会・政治 投稿日:2020.10.27 16:20FLASH編集部

全米初の「スズメバチの巣」根絶作戦…SNSでは防護服に注目集まる

スズメバチ根絶作戦で使われた防護服

 

 アメリカ・ワシントン州で、全米で初めて発見されたスズメバチの巣の根絶作戦がおこなわれた。

 

 スズメバチが最初に目撃されたのは昨年12月。同じ頃にカナダでも目撃情報があった。2020年5月に報道されたのだが、その際に「Murder Hornet(殺人バチ)」と呼ばれたことで、全米の注目が一気に集まった。

 

 

 初めて実物を捕らえたのは7月。その後、生きたまま捕獲されたスズメバチに発信器を付ける試みが続けられ、試行錯誤の上、小さな追跡装置をデンタルフロスで結びつけることに成功した。

 

 10月22日午後4時頃、ワシントン州のカナダとの国境に近いブレイン市の私有地の木の幹で巣が発見された。こうして、白い防護服に身を包んだ昆虫学者たちの駆除作戦が始まった。

 

 気象状況から、巣の退治は24日早朝5時半に設定された。巣の周辺を赤い光で照らしだすと、白い防護服が不気味に浮き上がる。赤い光を灯すのは、人間には光が見えて、虫の眼には見えない色だからだそうだ。

 

 高さ20メートルほどある古い木の、地面から3メートルほどの高さに巣が作られていた。木の隙間にスポンジ状のものを入れ、幹をビニールラップでグルグル巻きにし、掃除機のホースを入れる隙間だけを開ける。

 

 当初はあまり蜂が吸い込まれなかったため、後ろから棒でガンガンと木を叩き、ひたすら蜂たちを追い込んだ。

 

 掃除機の後は巣穴に二酸化炭素を吹き込み、薬品を染み込ませたスポンジで蓋をして、さらにラップでくるむ。途中で逃げ出した蜂を捕まえるため、近辺に仕掛けたトラップを回収し終えたのが午前9時。作業は順調に終わった。

 

 幸運なことに、早朝の気温が0度近くまで下がったため、蜂たちの活動は鈍く、人間への被害はなかった。

 

 巣からは合計98匹のスズメバチが捕らえられたが、女王蜂と追跡装置をつけた蜂は見つからなかった。この木は切り倒すことになっており、数週間後に幹の中が再び確認される。

 

 作業を担当したワシントン州農務省は、除去成功後にオンラインで記者会見をしたが、捕獲されたスズメバチを分けて欲しいという問い合わせが殺到したという。農務省では販売はせず、生きたものは農務省で、一部は急速冷凍されて他の施設で研究用に使われる。

 

 今回の捕物劇で、「今年のハロウィンのヒーローコスチュームはこれだ」などという声がSNSで上がり、防護服への注目も集まった。

 

 実は、今回使用された服は特注ではなくアマゾンで購入したもの。防護服として売られているが、まだ誰も刺されていないため、効果のほどはわからないという。

 

 アメリカにとってスズメバチは危険な侵略的外来種で、人への影響はもちろんだが、ミツバチの巣を数時間で絶滅させてしまう点も恐れられている。

 

 アメリカ西海岸以外にも、ミシシッピ川の東側ならどこも生息に適した環境だそうで、スズメバチの巣はまだ他にもあるのではないかと推測されている。

 

 最初の1~2年で排除できなければ全米中に広がってしまう可能性があり、ワシントン州農務省では11月までトラップをかけ続け、捕獲を進めるという。(取材・文/白戸京子)

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