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銀座の寿司名店がコロナ禍で品川の路地裏へ「“都落ち”なんて言わせねえ!」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.10.29 06:00 最終更新日:2020.10.29 06:00
品川駅から京急で約5分の京急立会川駅から、徒歩3分。年季の入った店構えが並ぶ一角に、工事の音が響く。内装の職人たちに交じって汗を拭うのは、「寿司さいしょ」の店主、税所伸彦さん(52)だ。
「銀座の店を閉めてから、ここの開店まで2週間もない。家賃を二重に払う余裕はないんで、急ピッチでやってます」
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前は居酒屋だった、居抜き物件。資金が乏しく、壁は常連客と一緒に自分で塗った。それでも、カウンターや家族客向けの小上がりは新調した。
「これからは、子供のお客様も来ますから。納豆巻1本、海老1貫でも歓迎です。出前用のバイクも買わないとね」
税所さんは10月14日に、“一等地” 銀座7丁目に構えていた店を閉めた。コースは1万5000円で、ウニの軍艦を熟成肉で巻いた看板メニュー「うにく」が接待族や外国人に人気の高級店だった。
「銀座に丸5年いて、そのあいだは増収増益。今年の夏には一世一代の繁忙期を見込んでいたら、こんなになるとはね……」
東京商工リサーチによると、9月までの寿司店の倒産件数は、前年比1.5倍になる。
「4月からは毎月100万円以上の赤字。これでは続けられないと、物件を探して見つけたのがここです。家賃は前の半分以下だから、なんとかね」
銀座に未練はなかったのか。
「そりゃありますよ。銀座って、6丁目から8丁目だけで200軒以上の寿司屋があって、そこで通用していたんですから。作務衣で街を歩くのも、『銀座のお寿司屋さん』と呼ばれるのも誇らしかった(笑)。
でも、“都落ち” なんて言わせませんよ。ここは、僕が独立してから13年いた街。銀座へと送り出してもらった、堂々と『また、よろしくお願いします』と言える場所なんです」
品書きに納豆巻が加わっても、自慢のコースはやめない。家賃が下がったぶん、3000円安くしたそうだ。
「これなら、銀座のお客さんだってタクシーで来れるでしょ(笑)」
(週刊FLASH 2020年11月10・17日号)