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つくば市議選で無名女性候補が「街宣車も演説もゼロ」で3位当選…“さすが東大卒”の秘策があった
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.11.03 20:00 最終更新日:2020.11.06 04:31
「まさか、ここまで得票できるとは思っていませんでした。私には組織票もありませんし、従来型の選挙運動は一切しませんでしたから。まったく票読みができず、ふたを開けてみないと分からない状況でした」
そう語るのは、10月25日に行われた茨城県つくば市の市議会議員選挙で4218票を獲得し、3位で当選した無所属新人の川久保皆実(みなみ)さん(34)。川久保さんは弁護士でもあり、企業の社長も務め、さらに1歳と3歳の子供がいる育児ママでもある。
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同市議選では、定数28人に対して41人が立候補した。トップ当選の得票数は5216票で、最下位当選は1771票だった。無名の新人候補が3位で当選したことに、地元のつくば市民も驚きを隠せない。
「1週間の選挙運動期間中に街頭演説も見なかったし、街宣車だって走ってなかったと思うよ。なぜ、無名の新人が3位? 当選圏外だと思っていたのに、びっくりですよ」(60代自営業男性)
さらに、川久保さんが立候補を決めたのは選挙の約3カ月前、7月のことだった。文字通り「ゼロ」からスタートして、その短期間に一般的な選挙運動もおこなわず……。彼女はいったいなぜ当選できたのか。
川久保さんは、地元つくば市の出身。茨城県立竹園高校から東大法学部へ進み、卒業後は東大法科大学院を修了し、24歳で司法試験を受けるも不合格に終わる。人生初の挫折に思い悩み、ひとりでの放浪旅などを経て、地元のITベンチャー企業で、地域ポータルサイトの企画・営業のアルバイトを始めた。
同社で正社員になり、街おこしのために男性1000人×女性1000人の「街コン」を成功させるなど、着実に成果を上げていった川久保さんは、26歳で同社社長と結婚。そのころ、弁護士への思いが再燃した。
働きながら司法試験に向けて勉強を再開した川久保さんは、27歳の時に2回めのチャレンジで、見事合格。第二東京弁護士会に所属して、東京都内の法律事務所に入所した。
川久保さんの専門分野は労働法で、コロナ禍の影響で急速に普及したテレワークにも造詣が深い。2018年には、業務を “見える化” できるクラウドシステムの開発・提供をおこなう企業を起こして代表取締役に就任。弁護士・社長・母の “3役” をこなしている、スーパーウーマンだ。
そんな川久保さんが、“4役め” となる市議選に出馬を決めたきっかけのひとつが、コロナ禍だった。
「私が弁護士として担当している顧客企業が、新型コロナウイルス対策にウェブ会議を導入してくださったことで、私も完全に在宅で仕事ができるようになりました。
それまで3年間住んでいた東京都千代田区のマンションは家賃が高く、『子育てするなら、故郷のつくば市がいいな』と思っていて。それで2020年6月に、つくば市への移住を決めました」
この時点では、まだ市議選があることすら、知らなかったという。
「7月につくば市に越してきて、市の公立保育所に子供2人を入所させたのですが……。公立保育所の制度が、千代田区に比べてかなり劣っていたので、『このままではいけないな』と思い、変えるにはどうすればいいかと考えました。
24万人いる市民のうち、1人が声をあげても、たぶん変わらない。そう思っていたころ、ちょうど3か月後に選挙があることを知りました。『だったら自分が出よう』と決めたのが、7月15日でした」
つくば市の公立保育所の制度には、何が不足しているのか。
「たとえば千代田区では、使用後の紙おむつは保育所の方で処分してくださるのですが、こちらでは親が持ち帰ります。また、給食については、3歳児から上のクラスは白いご飯を毎日、持参しなければなりません。
要するにつくば市の場合、『親の負担が重いな』と感じたのです。私が市議会議員になって、そうした子育て支援制度を改善していければいいな、と思いました。それで夫に相談したら、『やってみれば』と理解してくれまして。
うちは、家事・育児を夫婦半々でやっています。また、夫婦ともに仕事に自由が利きやすい点も、私の決意を後押ししてくれました」
立候補を決めたところまではいいが、知名度はゼロ。当選する算段はあったのか。
「正直、綿密な計画は何もなく、『走りながら決めよう』と(笑)。そこでまず、公職選挙法違反にならないように注意しながら、政治活動用のウェブサイトを立ち上げました。『市民の力でつくばを変える――つくばチェンジチャレンジ』と題し、私の挑戦にかける想いを、1分ほどの動画にしてアップしました。
それから、政策の大きな柱として、
(1)子育て中の当事者として、子育て支援制度・教育環境を改善
(2)弁護士のスキルを活かして、市民が抱える問題をともに解決
を掲げ、具体的な方法論を発信することにしました。そのために、政治活動用のフェイスブックページと個人のツイッター・インスタグラムも始めたんです」