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つくば市議選で無名女性候補が「街宣車も演説もゼロ」で3位当選…“さすが東大卒”の秘策があった

社会・政治 投稿日:2020.11.03 20:00FLASH編集部

つくば市議選で無名女性候補が「街宣車も演説もゼロ」で3位当選…“さすが東大卒”の秘策があった

10月21日、選挙運動も兼ねたゴミ拾いをする川久保さん

 

 さらに川久保さんは、“従来型のドブ板選挙” を否定し、挑戦の基本方針として、以下の3つを示した。

 

(A)仕事と育児を犠牲にしない
(B)他人のお金に頼らない
(C)既存のやり方に囚われない

 

 後援会は組織せず、街頭演説や街宣車でのPR活動は行わない。「政策・方針に共感いただける方々に、個々に応援してもらえればそれでいい」と割り切ったのだ。なぜ、あえて “茨の道” を歩んだのか。

 

「選挙運動のやり方自体を変えたかったんです。『従来型の選挙運動が、本当に投票行動に繋がるのか』とずっと疑問に思っていて、私が全然違うやり方で当選できれば、選挙運動の概念が変わるかもと。

 

 自分自身、街頭演説や街宣車の声はこれまで聞く気になりませんでしたし、票を入れたいと思ったこともなかった。『今までと違ったやり方でどれくらい得票できるか、実験してみよう』という思いもありました」

 

 だが、ウェブサイトやSNSの活用ならば、いまや多くの候補が導入している。
 それらにくわえて川久保さんが重視したのは、なんと街中のゴミ拾いだった。

 

「もともとゴミ拾いのボランティアには、これまで何度も参加していて、ゴミ拾いが好きなんです(笑)。7月に転居してきてから、朝夕の保育所の送り迎えの際には、子供をベビーカーに乗せて、左手にゴミ袋、右手にトングを持ってゴミを拾ってきました。

 

 告示から1週間の選挙運動期間中には、『街頭演説はしない代わりにゴミを拾います』と宣言しました。そして、名前入りの候補者タスキを付けて、市内の公園とペデストリアンデッキ(高架歩道)で、これまでと同じようにゴミ拾いをしました。その方が市民のためにも役に立つと思ったからです。

 

 朝夕は人通りも多いですし、タスキをかけて何も言わず淡々とゴミ拾いをしている候補者なんて、皆さん見たことがないと思いますので、印象的ではあったでしょうね」

 

 そんな川久保さんの選挙運動は、有権者から心配されることも……。

 

「タスキをつけて3日めくらいに、知らない方から『フェイスブックを見ました、川久保さんですか?』と声を掛けられました。そして、『ほかの方は街頭演説をされていますが、大丈夫ですか?』と。それから10月24日の活動最終日に公園でゴミ拾いをしていたら、『あなた、こんなところでゴミ拾いしていて大丈夫? みんな市中を回って頑張っているわよ』と言われました。

 

 こうしたことがあるたびに、『ゴミ拾いが私の選挙運動なんです』とお答えしていましたね(笑)。でも、ほかの候補者と同じような選挙運動をしていたら、有権者の脳内でスルーされていたと思います」

 

“奇策一本” の選挙戦では、苦労もアイデアで乗り越えた。

 

「462カ所の掲示板に選挙ポスターを貼らなくてはならないのですが、つくば市は広くて(笑)。ある方から『派閥に入れば、手分けしてやるから楽になるよ』と提案されました。でも私は、どこの派閥にも入らないと決めていたので、『自分の力で何とかしよう』と。

 

 そこでSNSを使い、公選法の上限内の報酬で協力者の募集をかけました。2人1組で募集して、1枚につき100円程度の報酬で、9組の方にお手伝いをしていただきました。

 

 私は選挙運動においても、告示前の政治活動でも、『辛いことはやらない』と決めて、やりたいことだけやっていました。コロナ禍だったから、SNS中心の “奇策” を採ったというわけではありません」

 

 最後に、想像以上だった得票の勝因を、川久保さん自己分析してもらった。

 

「『つくば市出身の東大法学部卒で弁護士』という肩書が、ある程度、得票に繋がったとは思います。それから、市内で子育て中の方々に的を絞って、『子育て当事者の私が具体的な政策を打ち出す』ということの成果が出たのかなと。

 

 そして意外だったのは、年配の方々。公園でゴミ拾いしていたら、80歳くらいの男性の方から『ユーチューブを観ましたよ』と言われたことがありました。“学園都市つくば” という土地柄、年配でもネットに慣れていらっしゃる方が、つくばには多いのかも。私のやり方は、つくば市だったから通用したのだと、今は思いますね」

 

 川久保さんの市議会議員の任期は、11月30日からスタートする。本当の「つくばチェンジチャレンジ」が始まるのは、これからだ。

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