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すでに95億回分が予約済み…世界が血眼になる新型コロナ「ワクチン」争奪戦
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.11.19 20:00 最終更新日:2020.11.19 20:00
新型コロナワクチンの供給がいよいよ秒読みとなった。まだ市場には出回っていないが、すでに95億回分のワクチンが世界中の国々によって予約されているそうだ。米デューク大学のグローバルヘルス・イノベーションセンターの調べによると、すでに購入されたワクチンは64億回分、残りは現在交渉中である。
EUやアメリカ、イギリス、日本などの裕福な国が半分を抑えており、カナダは人口の6倍以上、イギリスは4倍以上のワクチンを予約している。日本は、この調査によると100%強である。
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資金に余裕のある国は複数の製薬会社や研究所に投資してポートフォリオを組み、大型購入の契約を結んでいる。一方、インドやブラジルなどは工場設備を提供。設備のない国は治験協力などで、ワクチンを確保している。資金のないアフリカの国々は連合を作って資金調達しているようだ。
米国ファイザーのワクチンは、すでに在庫の8割が富裕国に売れた。内訳はアメリカが6億、イギリスが4000万、EUが3億、日本が1億2000万回分である。
これらの国々の人口は世界の総人口の14%にしかならない。ファイザーは年内に5000万回分の供給が可能で、その半分がアメリカ国内向けと見込まれている。ワクチンは2度接種するため、年内に1250万人のアメリカ人が恩恵にあずかる計算だ。
ワクチンの保存温度はマイナス70度である。運搬に使われる専用容器にはGPS装置がつけられ、温度と場所をモニターする。ドライアイスを補充すれば最長15日まで保存可能で、一度に最大5000回分を運べるという。
ファイザーのワクチンは、トルコ系移民夫婦が創業したドイツのバイオンテック社と共同開発された。スピード開発により夫婦らは国内100位に入る巨額な富を手にしたが、今は最初の製品を市場に出す作業に追われている。
ワクチン開発は世界中で前例のない速さで進んでいる。治験の最終段階にあるワクチンは10以上、その他にも140以上のワクチンが開発中だ。日本と契約しているイギリスのアストラゼネカとオックスフォード大学が開発するワクチンも、高齢者に良好な抗体反応が見られたという。
世界最初のワクチンを謳うロシアの「スプートニクV」は、イスラエルやハンガリーなど30カ国以上から引き合いがあるという。最終治験はベラルーシ、UAE、インド、ベネズエラ、エジプト、ブラジルでもおこなわれている。
海外生産にも熱心で、中国、インド、ブラジル、サウジアラビア、トルコ、そして韓国で大規模生産する計画だ。海外生産だけで、年間5億回分あるという。「スプートニクV」はフリーズドライの状態で運搬でき、冷蔵庫での保存も可能である。設備を持たない国にも運搬しやすく、ブラジルは5000万回分を確保している。
WHOは、世界に公平なワクチン配布をするため、「COVAXファシリティ」を主導しているが、11月11日現在で5億回分のワクチンを確保したところだ。世界186カ国が参加しているが、設備や人材不足など課題は多く、資金も緊急分として4358億円、今後さらに2480億円ほど必要だとしている。ワクチンが貧困国にまで届くのは、まだ時間がかかりそうだ。(取材・文/白戸京子)