「『読売新聞』が11月27日に、『桜を見る会』前夜祭について、東京地検特捜部が捜査を進めていることをスクープした直後のことです。二階幹事長が麻生さんに、『安倍さんのことで、あまり騒がんほうがいいですよ』と言い放ったんです」
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そう明かすのは、ある自民党関係者だ。臨時国会は幕を閉じたが、政権の中枢を担う麻生太郎・副総理兼財務相(80)と、菅義偉首相(72)と二階俊博幹事長(81)とのあいだに、政争の火種が生まれつつある。
発端は、安倍晋三前首相(66)が開いた「桜を見る会」前夜祭の費用負担をめぐり、安倍氏の公設第一秘書らが略式起訴される可能性が高まっていることにある。ある官邸関係者は、「安倍さんが元気になったのはいいが、調子に乗りすぎたんじゃないかな」と、うそぶく。
この言葉どおり、安倍氏に特捜部の捜査の手が伸びたのには、「『菅×二階連合』の仕掛けがあったからだ」などという臆測が、永田町に飛び交った。そんな状況での冒頭の二階氏の発言は、麻生氏への “脅し” に、ほかならなかった。
「麻生さんは黙って聞いていたそうですが、内心、はらわたが煮えくりかえっていたはず。二階さんは、菅総理と二人三脚でやっていくにあたって、なにかと出しゃばる安倍さんの影響力を削ぎたい。
しかも『菅×二階連合』は、麻生さんと福岡県政をめぐって対立する二階派の武田良太を総務相にしたり、財務省に批判的な高橋洋一・嘉悦大教授を内閣参与にしたりと、なにかと麻生さんの神経を逆なですることばかり続けています」(前出・自民党関係者)
「菅×二階連合」が政界を牛耳るなか、麻生氏の存在感は薄くなるばかりで——。
「麻生さんは安倍さんとは、いつもヒソヒソ楽しそうに内緒話をしているのに、衆院本会議場の議席や委員会の大臣席で席が隣り合わせの菅さんとは、会話らしい会話がほとんどないんだよ」(閣僚経験者)
官邸内で孤立を深める麻生氏が頼みにするのは、ともに苦境を支え合った、安倍氏との盟友関係だ。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、こう話す。
「2009年、総選挙で大敗を喫して、麻生氏は民主党に政権を奪われました。失意の麻生氏のもとに、毎日のように通って励ましたのが安倍氏だったんです。それ以来、麻生氏は『オレは安倍に恩返しをするんだ』と言って、第2次政権で安倍氏を支え続けてきたんです」
安倍氏本人への事情聴取が要請され、政治的に追い詰められるなか、麻生氏は安倍氏を見捨てることなく、“連合” を本格化させ始めた。
「12月2日に、麻生派と細田派(安倍氏の所属派閥)の若手議員が集まり、安倍氏と麻生氏を囲む会合を持った。これが、『菅×二階連合』に対する、『安倍×麻生連合』の宣戦布告だと、永田町でささやかれています」(政治部デスク)
しかし、苦境の盟友に見せた男気だけでは、麻生氏は大やけどをするリスクもある。
「二階氏は、『もう安倍さんは終わった人だから、いいじゃないか』とまで、麻生氏に言ったともいいます。いまの麻生氏ひとりで、あの2人の手練手管に立ち向かえるとは思えません……」(同前)
しかし麻生氏には、ある奇策があるという。
「安倍さんが2021年9月の総裁選に出られないなら、麻生さんは今度こそ、岸田(文雄・前政調会長)さんを総裁選で担いで、宏池会(岸田派)と麻生派が合併した “大宏池会” を作る。
乗り越えるべきハードルは多いが、“大宏池会” と安倍さんの細田派が協力すれば、さすがの菅さんと二階さんも、太刀打ちできない」(麻生派所属議員)
麻生氏の “恩返しクーデター” 計画が、静かに進んでいる——。
(週刊FLASH 2020年12月22日号)