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SNSの逆襲にヘッジファンドが大損「一泡吹かせろ!」が大成功

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.01.28 20:00 最終更新日:2021.01.28 20:00

SNSの逆襲にヘッジファンドが大損「一泡吹かせろ!」が大成功

レディットのコミュニティ

 

 いま、ウォールストリートで持ち切りの話題がある。SNSユーザーの集団行動が株価を押し上げ、プロ集団であるヘッジファンドに多額の損害を与える事件が起こったのだ。

 

 舞台となったのは、英語圏でよく使われるSNS「レディット」にある「ウォール・ストリート・ベッツ」というコミュニティ。2012年、株式市場に関する情報交換を目的に作られた。

 

 

 ハイリスク・ハイリターンの短期投資について話したり、それぞれが儲けたり損したりした経験をシェアしたりする場で、金融情報の4chanのような場所となっている。4chanは世界最大の匿名掲示板のことである。

 

 創設者は、コミュニティ内で政治の話や詐欺を禁止するルールを作り、モデレーターも置かれている。一方、メンバーの多くは、アプリで気軽に株取引している若い世代だ。

 

 ここ数週間、コミュニティでは「ゲームストップ」という、かつて流行したビデオゲームの量販店の株を上げる話で盛り上げっていた。

 

 この株はメルビンキャピタルなどヘッジファンドの空売りターゲットとなっており、会社の業績が悪化して株価が下がれば、ヘッジファンド側は多額の利益を得られるはずだった。

 

 アメリカ国内では、「少数の金持ち」対「一般労働者」という対立意識が根強く、またパンデミックで店舗の経営などが厳しくなっているなかで、商売が下火になることで儲けるヘッジファンドへの反感がくすぶっていた。

 

 昨年10月末、掲示板に「株価は上がりメルビンキャピタルは破滅だ」という動画が上げられた。チェルノブイリを舞台にした映画の画面に合わせ、メルビンキャピタルの貪欲さが紹介されている。

 

 ここで知らされたのが、ショートスクイーズという投資法だ。簡単に言えば、大量の「買い」をぶつけて、売る側を締めつける手法のこと。つまり、みんなで一斉に株を買えば、暴落を期待するメルビンキャピタルを締め上げられるというわけだ。

 

 ビデオの最後は爆発シーンになっており、若い視聴者に強いイメージが伝わったのだろう。それから間もなくして、ゲームストップの株価は徐々に上がり始めた。そして、2021年に入り、新たな会社人事が発表されると、株価は大幅に上昇した。

 

 巷では、株を購入できない高校生たちが「ゲームストップ」が「ゲームゴー」になったと話すほどの噂になっていた。

 

 さらに、以前から空売りに対して強い不快感を示し、投資家とバトルを繰り広げてきたテスラCEOのイーロン・マスク氏が、1月26日、自身のツイッターで「Gamestonk!(ゲームストンク!)」とつぶやいた。ゲームストップと韻を踏んだもので、stonkには集中砲火という意味もある。

 

 こうした流れのなかで、ゲームストップの株価は、一時、月始めの8倍以上に上がった。

 

 皮肉なことに、メルビンキャピタルは、損失拡大を抑えるため、ゲームストップの株を大量に買うはめになり、それがさらに株価をつり上げた。結局メルビン・キャピタルは他社から約2850億円の支援を受け、1月27日、空売りポジションをようやく解消できた。予想をはるかに超える大損である。

 

 個人投資家、それも比較的若いアマチュアの動きが、プロの領域を脅かすことになり、前トランプ政権の広報部長で投資家のアンソニー・スカラムーチ氏は、「我々は金融界のフランス革命を目撃した」と語るほどだった。

 

 1年前に80万人だったコミュニティのメンバーは、ここ数カ月で急速に膨れ上がり、株価を上昇させた頃には250万人、騒動後は400万人に達している。

 

 一方、各所から注目されたことで、コミュニティはメンバー以外に非公開となり、チャット機能は差別用語などが氾濫しているとの理由から禁止されることになった。いわば返り血を浴びた格好だ。

 

 ゲームストップのように、株価が急にバブル化する現象はほかにもある。映画館チェーンのAMCや通信機器メーカーのブラックベリー、ノキア、会社更生手続きを申請したレンタカー会社ハーツなどの株価が急上昇したりする。

 

 その陰には個人投資家の動きがあり、今回のように誰か指導者がいれば、多数の人間がそれに倣って同じ行動をとることも増えていくだろう。

 

 コミュニティ創設者は、騒動後、こんなメッセージを公開している。

 

《メルビンキャピタルは情報操作など汚いことをやっておきながら咎められていない。何百万という人間を不幸においやりながらぬくぬくとしている。そんな金持ちの資産を貧乏な人たちに分配できたのは、みんなのおかげだ。愛してる!》

 

(取材・文/白戸京子)

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