「ワクチンを接種したら大丈夫というわけではありません。ワクチンの効果が現われるのは、人口の6割が接種してからです。
実際、コロナ感染者が急増しているイスラエルでは人口の約3割近く(2回接種した人を含む)がワクチンを接種しましたが、感染者数の山がやや小さくなった程度で、感染はまだ抑えられていません。
接種した人には効果はありますし、高齢者の方の死亡者数を減らすことはできますが、接種が始まっても、いまの第3波が抑えられるわけではない。予定どおりに接種が進んだとしても、おそらく効果が出るのは半年ぐらい先でしょう。
いまはコロナウイルスと戦うすべがワクチンしかないですし、もちろん効果には期待しています。ただし、まだその効果や安全性は未知数ですから、感染予防対策をしっかりやっていただくことが今大事なことなんです。第4波、第5波は必ず来ます。皆さん一人ひとりの感染予防対策が、その波を止めることにつながります」
■ワクチン接種の環境整備
政府の発表では、2月下旬から医療従事者を優先して接種開始する予定だ。その後は65歳以上の高齢者、高齢者を除く基礎疾患を持つ人や高齢者施設などの従事者と続く。
接種開始まであと1カ月だが、自治体の体制作りの遅れなど準備不足が懸念されている。ファイザー製のワクチンはマイナス70度以下での管理が必要で、解凍すると再凍結できず、2度~8度で最大5日間しか保管できない。
「ワクチンを保管する冷凍庫も必要ですし、接種する場所も必要です。アナフィラキシーショックを起こす可能性があるので、ワクチンの接種後30分は待機する場所も用意しないといけない。
医療現場が非常に逼迫している状況で、ワクチン接種も請け負うことになると、医師たちはもちません。
ワクチンを有効に使うためにも、ワクチンが接種できる環境を整えていただきたい」
二木氏は今後を見通して、こう警鐘を鳴らす。
「ワクチン接種が始まったらコロナウイルスは収まると考えているなら、それは間違いです。
効果は期待できますが、けっして夢の治療薬ではありません。第4波、第5波は必ず来ますし、たとえば、5年後に新しいウイルスが発生して、またパンデミックを起こすような可能性も十分にあります。
政府は、緊急事態宣言を発出したことで、何がよくて何がだめだったのか。病院が再び逼迫しないためにはどのような環境作りが必要なのか。きちんと検証して体制作りをしっかりおこなっていくことが、重要だと思います」
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