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南極でなくした財布、53年ぶりに元の持ち主に返還される
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.02.07 16:00 最終更新日:2022.12.07 18:47
カリフォルニア州に住む気象学者ポール・グリシャムさん(91)のもとに、53年前に南極で紛失した財布が戻ってきた。1月30日のことだ。
財布を開けると、なかには海軍時代のIDカード、運転免許証、源泉徴収票、ビールの配給カード、妻への送金票、そして自家製カクテルのレシピなどが出てきた。
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グリシャムさんは「本当にびっくりしたよ。人と人のつながりが財布を戻してくれたんだ」と感謝しきりだという。いったい、この財布はどのようにして戻ってきたのか。それを説明する前に、まずはグリシャムさんが南極に行った経緯を見てみよう。
アリゾナ州で育ったグリシャムさんは、1948年に海軍に入隊し、気象技術者として空母に乗り込んだ。ベトナム戦争のサイゴン陥落も空母のなかで迎えている。グアム、ハワイ、日本などで勤務したが、1967年10月、南極大陸へ配属となった。
アメリカは、1957年以来、南極大陸での観測や演習「ディープフリーズ作戦」を続けている。グリシャムさんは、地球最南端の港であるマクマード基地で働くことになり、ここで財布をなくすのだが、本人はそのことをすっかり忘れていた。
2014年、老朽化した基地を解体中、ロッカーの後ろで財布が見つかった。なかを見て持ち主の名前はわかったが、1977年に海軍を引退していたグリシャムさんと連絡するすべはなく、財布はそのまま保管されてしまう。
事態が動いたのは、財布の発見者がかつての部下スティーブン・デカトさんに、財布を持ち主に返せないか相談したからだ。デカトさんは、海軍のID番号が書かれたブレスレットを持ち主に返したことで話題を呼んでいた。
実は、このとき役立ったのは、フェイスブックだ。退役軍人会のページを見つけたデカトさんの娘がメッセンジャーで連絡を取り、持ち主を探し当てた。
もしかしたら今回もフェイスブックを使えば、財布を持ち主に戻せるかもしれない――そう考えたデカトさんと娘は、再び退役軍人会と連絡をとった。すると、見事、気象学会にグリシャムさんが在籍していることが判明したというわけ。
53年前に紛失した財布は、SNSのおかげで、元の持ち主のもとに戻ったのだ。
写真:Science Photo Library/アフロ