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福島沖地震は「関係なし」東日本大震災“本当の巨大余震”を東大地震研元准教授が警告

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.02.22 16:00 最終更新日:2021.02.22 16:00

福島沖地震は「関係なし」東日本大震災“本当の巨大余震”を東大地震研元准教授が警告

2月13日の地震で、福島県の桑折町では家屋が甚大な被害を受けた

 

 東日本大震災から約10年の時を経て、東北の地を再び大地震が襲った。2月13日23時8分ごろ、マグニチュード(M)7.3、最大震度6強を観測した「福島沖地震」だ。

 

 じつは、この大地震の発生を予測していた専門家がいる。元東京大学地震研究所准教授で、現在は自ら設立した「地震津波防災戦略研究所」の所長として地震の研究を続ける都司嘉宣氏(73)だ。

 

 

 都司氏は2020年3月、「東日本大震災から10年となる2021年までに大きな余震が来る」との指摘を公表していた。そのとおりに今回、地震が起きたというわけだ。10年以内に大きな余震が起きるという予測は、過去の事例をベースにしたものだという。それは、平安時代に続けて起きた大地震だ。

 

「東日本大震災とほとんど同じ地震が、平安時代にも起きているんです。貞観地震(869年7月9日に発生)というもので、津波が襲った場所や揺れの強さなど、いろいろと記録を調べると、東日本大震災とそっくりなのです。

 

 そしてその9年後、878年に関東地方で『相模・武蔵地震』という、大きな地震が再び発生し、甚大な被害が出た記録が残っています。

 

 これらの例から、今回も10年以内に大きな揺れが来るだろうと予測していました。『日本被害地震総覧』(宇佐美龍夫著ほか)には、相模・武蔵地震は推定M7.4と記されています。今回の地震がまさにM7.3ですから、そっくりなんですよ」

 

 東日本大震災では津波の被害も深刻だったが、今回の地震では津波は起こらなかった。

 

「10年前の巨大地震は、沈み込んでいく太平洋プレートと、それに乗っている北米プレートが擦れ合う境界で起きたのですが、今回の地震はそれよりも深い、沈み込んでいる太平洋プレートの内部で起きた地震なんです。

 

 一般的には、“本震” と同じ面で起きた揺れを余震と呼んでいるので、震源が異なる今回の地震は、厳密にいえば東日本大震災の余震ではありません。

 

 津波が起きなかったのも、深い場所で起きた地震だったからです。海水に接していない、沈み込んでいく側のプレートの内部が震源だったため、影響が少なかったんですね。これが東日本大震災と同じプレート境界型だったら、海水が乗っている面が揺れるので、大きな津波が起きたと思います。

 

 今回は、気象庁がいち早く『津波の心配はない』と出しました。通常、M7.3ならば津波を警戒すべきところを、すぐに警報は必要ないと判断したのは、非常に正確だったと思います」

 

 さらに都司氏は、「今回の福島沖地震が東日本大震災の直接的な余震ではない」という点について、こう説明する。

 

「大きな地震のあとに、対になる形で再び大地震が起きる例は過去に何度もありました。1896年6月15日に起きた『明治三陸地震』がいい例です。このときも大きな津波が起きて、2万人以上の方が亡くなったのですが、プレートが沈み込み始める場所が震源で、“逆断層型” の地震でした。

 

 この地震と対になって1933年3月3日に起こったのが、『昭和三陸地震』です。昭和三陸地震は “正断層型” の地震で、明治三陸地震の余震といわれています。

 

 このように “対になる” 大地震は、逆断層型と正断層型が続けて起きるというものです。ところが、東日本大震災も今回の福島沖地震も、どちらもプレートが別のプレートに乗り上げて起きる “逆断層型” の地震でした。つまり、東日本大震災と “対になる” はずの正断層型の大地震は、まだ起きていないんです。

 

 そう考えると、明治三陸地震から37年後に昭和三陸地震が起きているわけですから、東日本大震災から30〜40年間は、“正断層型” の大きな地震が起きる可能性があると考えられます。

 

 最近でも、千島列島で2006年11月に、M7.9の “逆断層型” 地震が発生して、その2カ月後に、M8.2の “正断層型” の地震が起きました。これも、最初の地震が誘発した余震なんです。こういう事例があるということを知っておくべきだと思います」

 

 東日本大震災の “本当の巨大余震” が、これから起きる危険性は十分にあるというわけだ。では、それはどれほどの規模になるのか。都司氏は、こう予測する。

 

「昭和三陸地震はM8.1でしたから、東日本大震災と対になる正断層型の余震が発生したら、同程度の規模になると予測されます。津波の高さは、東日本大震災(30m前後)の半分から3分の1くらいで、震源に近い海岸では10m前後に達するでしょう」

 

 また、東日本大震災の余震とは別に、今回の福島沖地震の余震が起こる可能性も十分にある、と語る。

 

「今回の地震が、隣接したプレートに新たに影響を及ぼす可能性も、否定はできません。大きな地震が起きると、震源のプレート(今回は太平洋プレート)のストレスは解消されるのですが、その両端、北は千島海溝、南は伊豆・小笠原海溝付近のプレートに、まだストレスが残っている可能性があります。今後1カ月程度は、余震が起きる可能性はあります。

 

 具体的な場所をあげると、伊豆・小笠原海溝のプレートは銚子沖付近まで来ていますから、千葉県や茨城県、房総沖で、次に地震が起こる可能性は残っています。北側は、北海道の南方の日高沖、襟裳岬沖、釧路沖は注意が必要でしょうね。

 

 千島海溝の浅い部分で地震が起きると、津波が発生する可能性が高いです。東日本大震災を超えるような大地震は起こらないと思いますが、北海道や千葉、茨城あたりはしばらく警戒が必要でしょう」

 

 地震大国ニッポン、災害は忘れたころにやってくるということを、あらためて肝に銘じるべきだ。以下の関連リンクでは、東日本大震災と福島沖地震の余震で「危険な場所」を、図解する。


写真・朝日新聞

 

(週刊FLASH 2021年3月8日号)

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